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エルフのお婿さん

エルフのお婿さん

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 ────かつて、少子高齢化の波が押し寄せ、エルフの里が緩やかな滅亡の危機に晒されていたことがあったのじゃ。

 新しい子供が生まれるのは、運がよくても百年に一度か二度……ワシは別に、そのことをそれほど悲観してはおらなんだが、当時里長じゃったレムはたいそう悩んでおってのぅ。

 眉間のシワは、日々深くなるばかりじゃった……

 ……えっ、レムがその原因の大半はワシだと言っておったじゃと?

 なにぃ……母親に向かってその態度、いっぺんどっちが上か、はっきりさせんといかんようじゃのぅ……っ

 よしっ、ちょっとレムの家に行って、着替えを全部盗んでくるのじゃ!

 ん? 話の続きをしてから行けじゃと?

 生意気なちびっ子どもめ、ワシは用事が出来たから忙し……あっ、これ、パンツを引っ張るでない!

 それはワシの一張羅なんじゃっ!

 ……まったく、少子化が解決したといっても、いいことばかりじゃないのぅ。
 
 せっかく里長をレムに押しつけて自由になったと思っとったのに、子供が増えすぎたせいでワシまで子守にかり出されることになるとは……

 ……えぇい、分かった分かった! ちゃんと続きを話してやるわい!

 どこまで話したんじゃったか……まあ、肝心なところさえ話しとけばいいかの。

 そんなある日、当時若芽組じゃった小娘どもが、森でみょうちくりんな人間を拾ってきたんじゃ。

 そう、おまえらもよく知っとる・・・・・・、あのヨシオじゃ。

 ほんと、変なヤツでのぅ。

 今でこそ人間とエルフはそれなりに仲良くやっとるが、当時はまだ険悪での、人間はワシらのことを淫魔じゃ、悪魔じゃというて恐れておった。

 だというのに、ヨシオはワシらの事を恐れるどころか、まるで女神であるかのように崇め、褒め称え……そして、心から愛したのじゃ。

 人間の事を家畜同然にしか考えておらんかったワシらでも、さすがにそこまで尽くされると悪い気はせんでの。

 それに、ほれ、あいつのチンポと性欲、凄いじゃろ?

 あいつとセックスしたエルフの中には、「もうオナロには戻れないっ!」という者も数多くおってな。

 そういったシモの事情もあって、ワシらはしだいにヨシオの事を大切に思うようになり、愛おしく思うようになっていったのじゃ。

 そしてそれと同時に、人間に対する認識も、少しずつ変わっていったんじゃよ。

 ワシらはもう、ヨシオの事を家畜や愛玩動物ペットとして見ることが出来なくなっておった。

 すると不思議なもので、他の人間も家畜のようには思えなくなっていったんじゃ。

 あれは……なんなんじゃろうなぁ。

 ワシら自身も未だによう分かっておらんのじゃが、とにかく、いつの間にか人間に対する認識が変わっておったんじゃ。

 まあ、ヨシオの精液の受精率が半端ないから、他の人間を捕まえてくる必要がなくなった、というのもあるとは思うんじゃがの。

 で、その当時ヨシオと一緒に捕らえておったジャックっちゅう人間を、し、しんぜん大使? とかいうのに任命しての、人間の国に送り出したんじゃよ。

 いつからかそのジャックと仲良くなっておった、ミミっちゅう若木組のエルフと一緒にの。

 ジャックはエルフの里では料理人的な扱いだったんじゃが、人間の世界では英雄だとか呼ばれておってな、その英雄がエルフを妻にして凱旋したっちゅうんで、人間どもは大喜びしたそうじゃ。

 そして、そのジャックとミミの働きにより、人間とエルフはゆっくりとじゃが交易を始めた、というわけじゃな。

 今ワシらが気兼ねなく人間の世界に遊びに行けるのは、そのジャックとミミのおかげなんじゃぞ?
 
 まあ、二人ともある程度国交のメドがたったら、すぐこっちに戻ってきたんじゃがな。

 なんでも、ジャックがどうしてもヨシオの側に戻りたいと言って聞かなかったんだそうじゃ。

 ……あいつら、そういう関係だったんかの。

 今度ヨシオに根掘り葉掘り聞いて……

 …………ん、何じゃ?

 なんでヨシオはまだ生きているのか、じゃと?


 ……………………


 ……………しらん。


 それに関しては、本当に分からん。

 一度ヨシオに直接聞いてみたんじゃがなぁ、異世界がどうの、魂と肉体がどうのと、よく分からんこと言っとったから諦めた。

 なんで、ワシらはとりあえずヨシオの事を、この世界始まって以来の『男のエルフ』だと思うことにしたんじゃよ。

 中には「いや、森の妖怪に違いないっ!」って声高に叫ぶヤツもおったんじゃが、まあ、なんか最近白髪とかもちょこちょこ生えてきたようじゃし、別に不老不死ってわけでもなさそうだからエルフでいいじゃん、っちゅうことになってな。

 まあ、ワシらは老けんから、その辺はちょいと違うんじゃが……細かいことはどうでもいいんじゃ。

 で、ヨシオが同族の男だとなると、せっかくだし人間みたく結婚とか結婚式とかしてみない? って誰かが言いだしての。

 ワシらお祭り騒ぎが大好きじゃから、それがいい、それがいいって満場一致で決定したはいいんじゃが……

 ……だれが結婚するか、という段で困ってしまってのぅ。

 だってあれじゃろ? 結婚して夫婦になったら、一緒の家に一緒に暮らして、そいつとしかセックスしなくなるんじゃろ?

 ワシらそういう窮屈なの嫌いじゃし、ヨシオとセックス出来なくなるのも嫌じゃし、さてどうしたもんかと頭を抱えておったら、そこにジルが…………

 ……ん? ……ああ、そうじゃよ? 現里長であるネムの補佐として活躍しとる、あのジルじゃ。

 あいつ、まだ若木組のくせに優秀じゃよなぁ。

 その当時なんてまだ若芽組で、たぶん100歳になるかならずか、っちゅう年齢だったんじゃぞ?
 
 ジャックとミミの間に出来た娘なんじゃが、そのせいかヨシオ第一主義っちゅうか、ヨシオ大好き過ぎっちゅうか……

 ともかく、ヨシオの為なら大樹組のワシらにも意見するような娘っ子じゃった。

 ……まあ、それは今も変わらんのじゃがな。

 それで、そのジルがこう言ったんじゃ。

『ヨシオ様を、みんなのお婿さんにしましょう』とな。

 ワシらはポカンとなったんじゃが、ジルの説明によると、何でも人間の中には複数の嫁を娶る男がいるそうなんじゃ。

 それなら逆に、ワシらが全員でヨシオのことを婿にしてもいいんじゃないか、ちゅうことだったんじゃよ。

 もちろん全員、その意見に大賛成でな。
 
 それ以来、10年周期で『結婚祭り』が開催されることになったんじゃが、その内容はお主らも知っておる通りじゃ。

 うむ。

 あれはよい。

 実に楽しい。

 リンゴ飴、かき氷、わた飴、まと当て、魚すくい……美味いものや楽しいものがいっぱいじゃ。

 知っとるか、お主ら?

 あの食いもんとか、遊びとか、実はほとんどヨシオが考えたもんなんじゃぞ?

 あのぶきっちょ極まりない男が、ワシらを楽しませようと、一生懸命考えてくれたんじゃ。

 うむうむ、愛を感じるのぅ……

 ……そ、し、てっ!

 何を隠そう、実はこのワシこそが、第一回結婚祭りにおいて行われた『かき氷早食い選手権』の初代チャンピオンなのじゃぁぁっ!!

 ふふんっ!

 よいっ、よいぞっ!

 その調子でもっとワシを崇め、褒め称えるがいいのじゃ!

 ん、あれ、どこに行くのじゃ? ワシの武勇伝はこれからがいいところ……

 ……ああ、ヨシオが歩いとるのを見つけたのか。

 人気者じゃのう、ヨシオは。
 
 まあ、相変わらず誰にでも優しいから、それも当然かの。

 おーおー、ちびっ子どもに群がられて嬉しそうに。

 ……………………

 ………………

 …………ふむ。
 
 なんだかちょっと、ムラムラしてきたの。

 あやつの丸い顔を見ると毎回こうなってしまうのは、もはや条件反射かのぅ。

 …………

 ……ワシも歳じゃし、死ぬ前にもう一人くらい、ヨシオの子供を産んでやるのもいいかもの。

 よしっ、そうと決まれば突撃あるのみじゃっ!

 おーいっ! ヨシオーっ! 今日はワシと、子作りセックスするのじゃ~~~~~っ!!









 
 
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