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エルフのお婿さん

おっさんの新しい暮らしが始まりました

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「よしっ、着いたぞ! ここが今日から私たちの愛玩動物ペットとなったキサマの暮らす場所────人小屋ひとごやだ!」

 レムの里長権限により、良夫が『種付け用の家畜』から『種付け用の愛玩動物ペット』へとクラスアップ転職した数時間後。

 良夫は、昨日種付け牧場から自分を拉致したJDエルフのリアによって、犬小屋的なニュアンスの新たな住処すみかへと案内されていた。

 前回は縄でグルグル巻きにされた上、肩に担ぎ上げられてゆさゆさと乱暴に搬送されたのだが、今回はちゃんと自分の足で歩いての移動である。
 

 ……ただ、良夫の新なよそおいとして追加されたつる製の首輪(レムの魔術によって作り出された、良夫の太い首にもぴったりフィットするもの)に繋がったリードを、先を歩くリアがかなり強引に引っ張ってきた為、なかばお縄についた罪人のようではあったが。


「ごほっ、ごほっ……あ、案内して頂き、ありがとうございます。お勤めご苦労様です」

 それでも、息苦しさから解放された良夫は文句など言わず、リアに対して感謝を告げた。
 すると、

「うむっ! キサマも愛玩動物ペットになった以上は家族も同然…………とまではいかないが、まあ、あまり乱暴に扱うなとレム様から言われているからなっ!」

 リアからは、そんな言葉が返ってきた。

 ……乱暴に扱うなと言われていてこれだったなら、もしレムが何も注意してくれていなかったら、良夫は今頃地に足をつけたまま絞首刑に処されていたかもしれない。

 良夫は胸の内で、レムに対して深く感謝の念を捧げた。

「では、私は用があるから(新作オナロの改造)これで帰る! キサマの面倒を見る者はすでに小屋の中に居るから、後のことはそいつに聞くように!」

 そう言い残し、リアは良夫のリードを放り出すと、なにやらウキウキとした足取りで去って行った。

「…………」

 ぽつんと、その場にひとり取り残される良夫。

 思えば、この世界に来て早々JCエルフに捕まって以来、一人になるのは初めてのことである。

「……ジャックは、どうしているのでしょうね」

 良夫の脳裏に、今も種付け牧場に繋がれているであろう友人の姿がよぎった。
 
 離ればなれになってしまった今となっては、もはや『エルフとのセックスを代わってあげる』という約束を果たすことも出来ないだろう。

 そのことに対して、申し訳ないような、もったいなかったような気持ちを抱きながらも、良夫はこれから暮らすことになる人小屋に向き直った。

 大まかな外観は種付け牧場と大差ないが、複数の家畜を収容できるあちらの建物に比べると、かなり小さな造りになっている。

 それでも、良夫ひとりが暮らすには十分な広さがあるだろう。

「……失礼します」

 自分の家らしいので別に断りを入れる必要はないのだろうが、良夫は一応軽くノックをしてから声をかけると、小屋の扉に手を当てた。

 そのまま力を入れて押すと、扉はゆっくりと内側に向かって開いていく。


 そこには────










「────ヨシオさんっ!」










 ガシッ! ……ムニュリッ




「ひ、ひぃぃいいいいいいいいっ!?」

 扉が開くなり、突然中から飛び出してきた裸のイケメンマッチョ────ジャックに抱きつかれ、良夫は魂切たまぎるような悲鳴を上げた。

 ジャックの柔らかな息子が、良夫の腹部にムニュリと押しつけられているからだ。

「よかったっ……! ヨシオさん、無事でよかった……っ!」

「ひいっ!? ひぃぃいいいいいいいいいいっ!?」

 良夫がジャックの抱擁から逃れようと身をよじればよじるほど、ジャックの息子がグニャグニャと形を変えながら良夫の腹部に擦りつけられる。

 これほどの恐怖を、不安を、不快感を、かつて良夫が味わったことなどあったであろうか。


 ……いや、ない(反語)。


 前世も含めて、良夫がここまでの恐慌きょうこう状態に陥ったのは、生まれて初めてのことであった。
  
「ヨシオさん……っ、ヨシオさん……っ!」

「ひぃぃいいいいいいいいいいいっ!? ひぃぃいいいいいいいいいいいいっ!?」

 感動の再会を果たして男泣きするジャックとは対照的に、良夫はまるで追い詰められた草食動物のような悲鳴を上げながら、腹部に擦りつけられる生暖かい感触から逃れようと、必死にジャックの体を押し返すのだった。










 …………もちろん、良夫の筋力ではジャックにあらがえるはずもなく、その後も十分ほど地獄を味わうことになったのだが。
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