18 / 45
第一章
約束
しおりを挟む
誰かの話し声がして、ゆっくりと周囲が明るくなってくる。
うーん。なんで人の話し声がするんだろう。
それにしてもこの布団いつもより柔らかい気がする。ほわほわだ。気持ちいい。家のベッドもこのぐらい柔らかいのにしたいなぁ。ヴィル様が買ってくれたのも柔らかいけど、これは別格だよ。
ん? 柔らかいベッド?
僕どこに寝てるの? って思ったら、急激に頭がさえてきて、パッと目を開いた。
「なにこれ」
驚きすぎて、声が出ちゃった。
天井から垂れている薄い布で覆われていて、どう考えても高貴な方が使うようなベッド。
僕が起き上がるのと同時に布が開けられて、そこから顔を出したのは、会いたくてたまらなかったヴィル様。
驚きと同時に、騎士服を着てるヴィル様に胸がきゅんとする。いつもと違って堅い感じがして男前度合いが二割増し。うう、かっこよすぎるよ。
ヴィル様のかっこよさに密かに悶えてると、
「エル」
心配そうな表情と声色。
僕の頬をそっと触って、こつんと額を合わせられる。そうなるともう顔が赤くなるのは条件反射みたいなもの。
それにしても、僕はどこにいるんだろう。
「ヴィル様、僕は…」
「倒れたの覚えてない? 契約が終わって帰ろうとしたときに倒れたって」
「倒れた…?」
「そう。大急ぎで駆け付けたんだ。大丈夫だとは分かってながらも、心配で堪らなかった」
ヴィル様はぎゅーって僕を抱きしめてくれる。僕はいつもとは違った雰囲気のヴィル様の方が心配になって、抱きしめ返して、背中をポンポンと撫でてみた。
肩越しにヴィル様の溜息が聞こえて、肩の力が抜けたみたいだった。
なんだか小さい子にしているみたいで失礼かなって思ったけど、慰める方法なんてこれしか思いつかなかったよ…。
「もう…大丈夫みたいです。心配かけてすみません」
体の怠さは治まってる。頭は少し重いけど。もしかして治癒師さんが治してくれたのかな。
ヴィル様は僕から離れて、よかった、と顔を綻ばせた。その笑顔が本当に穏やかで、本当に優しくて、きゅんとなる。
ああ、もう好き。好き好き。好きすぎて胸が熱くなって、何か込み上げてくる。
「ヴィルさまぁ…」
なんだかボロボロ涙がこぼれて止まってくれない。すっごく情緒不安定だよ。自分に何が起こったかわからないぐらい。
ヴィル様が何度も涙をぬぐってくれるけど、追い付かなくて、困り顔になってる。
こんな顔させたくないのに、重荷になりたくないのに、好きっていう感情が溢れてきて、ヴィル様にしがみ付いてしまった。
「…すきです……ヴィルさま、すき……」
今度はヴィル様が抱きしめ返してくれて、目元に口づけてくれる。ヴィル様の体温が心地よくて、温かくて。
重い奴だって思われてないかな。大丈夫かな。ヴィル様の顔を見るのが怖い。
俯いてたら、くいって顎を持ち上げられて、細められた瞼から覗く紫の瞳と視線が絡まる。溜息が出そうなほど透き通ってて綺麗な瞳。引き寄せられるようにして唇が重なって、僕は目を瞑った。
蕩けるようなキス。
このキスされると僕はヴィル様を求めて熱に浮かされてしまうんだ。この後に待ってる快楽に体の奥が疼いて仕方なくなる。もう何もかもヴィル様の虜だよ。
「エル、愛してる」
押し倒されて、熱のこもった目で見降ろされると、もう逆らえない。その上、反応し始めてしまってる僕の大事な所に脚をグイグイ押し付けてくる凶悪なヴィル様。
「…ぁっ、や…」
「もう、欲しくなった?」
そんなこと耳元で言わないでっ。
腰がゾクゾクして、勝手に体が跳ねてしまう。
もう僕がいやらしい体になってること、ヴィル様に知られてしまってるんだ。
ここがどこなのか、あれからどのぐらい経ってるのか、疑問に思ってたことが全部どうでもよくなって、身も心もヴィル様で埋め尽くされる。
ヴィル様は僕の一張羅を脱がすと、騎士服を豪快に脱いで放り投げる。露わになったバランスよく筋肉のついたしなやかな体に目が釘付けになる。
いつももっと暗いところでしてるから、こんな明るいところで見ると僕には刺激が強すぎるよ。
――って言うことは僕の貧相な体も良く見えるってことだよね…。
隠そうとするけど、ヴィル様ににっこり微笑まれて、無理でした。
「恥ずかしい?」
「は、はい…。明るくて、よく見えるから……」
「うん。エルの肌も良く見えるよ。うっすら赤くなってるのもちゃんと見えてる」
「もうっ、ヴィルさ……あっ…」
するって胸からお腹にかけて撫でられるだけで、変な声が出てしまう。僕も興奮してるのかな。
考えるのを遮るみたいに、ヴィル様が圧し掛かって来て、また深く口づけられる。
同時に胸まで触られ始めると、もう降参。ただの飾りだったのに、今となっては無情な裏切者だよ。
声も出せない上、ヴィル様の腕を掴んで抵抗しても、胸板を叩いても、まるっきり無意味。
焼き切れそうなぐらい気持ちよくて、頭の中が真っ白になる。後は翻弄されるだけ。
明るくてよく見えるなんて、言わなければよかった。
一人でしてるところ見せてなんて無理難題を突き付けられ、たっぷり解された所に自分の指を入れさせられ、繋がってるところをわざわざ見せられ、本当になんというか……ヴィル様が悪魔に見えたよ。
頭のねじが一本外れたのかと思うぐらいおかしくなってて、すごく興奮してたのも事実で、思い出すと顔を覆ってしまいたくなる。
「エルが可愛くてちょっと暴走しちゃった。起きたばっかりだったのに優しくできなくてごめんね」
ううー。許してしまう自分が憎い。
「体は? 大丈夫?」
「…ダイジョウブデス」
むしろ喉と腰以外、回復してるように感じるんだけど、なんでだろう。確かに行為で疲れてるんだけど、頭が重さもなくなってすっきりしてる。
「今夜はここに泊まればいいからね。朝までゆっくり一緒にいれるよ」
「泊まる? あ、…」
布を退けて外を見るともう真っ暗。ヴィル様と一緒にいれるならいいか、なんて安易すぎる僕。店もしっかり戸締りしてきてるし、問題ないね。
「ここって、どこなんですか?」
「ここは俺の部屋だから気にしなくて大丈夫」
「ヴィル様の!?」
「うん」
「うわー、ここヴィル様の部屋……」
やっぱり高貴な方…。
このベッドも、部屋に置かれてる家具から調度品までどれも格調高いものばかり。趣味は団長さんのお屋敷とよく似てる。
それにしても、ヴィル様のベッド。
うっ、ヴィル様いつもここに寝てるってことだよね…。堪能しておこう。はぁ、僕って変態だ。
ヴィル様の匂いがするクッションをギューッと顔を埋めて抱っこしてると、ヴィル様は忍び笑い。
「エール。本物はこっちだよ?」
って両手を広げられたら、向かうしかないよね。クッションを置いて、ヴィル様の胸に飛び込む。やっぱり本物の香りがいい。
「エル。あのね、」
あのね、で止まってしまったヴィル様の次の言葉を求めて僕は見上げたら、ヴィル様は今までにないぐらい真剣な表情で僕の事を見つめてくる。
その真剣さに僕はヴィル様から身体を離して、しっかりとアメジストの瞳を見つめ返した。
「前言ってた、伴侶の事、覚えてる?」
「は、はい」
「エルに本気で考えて欲しいんだ」
それって。
「今はちょっと立て込んでて、すぐにとは言えないんだけど、絶対に迎えに行くから待っていて欲しい」
「ヴィル様……僕……僕なんかで…」
「エル。『なんか』なんて言わないって前も言ったよ。エルがいいんだから。――エルは? 伴侶に俺は嫌?」
「そんな! 僕……」
ぶわって涙があふれてくる。
いいの? 本当に僕なんかで…。
「ヴィルさまがすき、ヴィルさまとずっといっしょにいたいよ…」
「エルヴィン…愛してる。ずっと一緒にいよう」
僕は壊れたように何度も頷くと、ヴィル様が僕の手を取って、ゆっくりと中指に何かを嵌めてくれる。
「…これ…」
いつの間に僕の指の太さ測ったんだろうって思うぐらいに、ぴったりな指輪。
二つの紫色の石とそれに挟まれるようにして灰色の石が埋め込まれている。ヴィル様と僕の瞳の色だ。
これって、前一人で買おうとしてたから?
「受け取って欲しい。少し寂しい思いをさせるけど、これを俺だと思って、待っていてくれるかな」
ヴィル様はゆっくりと僕に言い聞かせるように話してくれる。物柔らかい、いつものお茶目さを全く感じさせない口調で。
それから、もう一つの色が反対になった指輪を僕の掌に乗せて、蕩けるように微笑んだ。
僕はもうずっと放心状態で、つけてくれる?、と促されるまま、ヴィル様の指に同じように嵌めた。
その途端にギュって抱き寄せられて、額にキスが降ってくる。
「エル、愛してる」
「……ヴィルさまっ、……ぼくも……っ…」
大泣きしてる僕を膝に抱えて、泣き止むまで何度もキスして、頭を撫でてくれた。ヴィル様の目が優しくて、手が温かくて、なかなか涙か止まらなかった。
これでもか、ってくらい顔中にキスしてくるから、最終的には笑ってしまったけど。
翌朝、ヴィル様が家まで送ってくれた。
家に帰ると現実に戻ったって感じだ。
昨日の事が夢だったんじゃないかって思うけど、指輪が光るたびに、本当なんだなって。
思い出すたびに胸がギューギュー締め付けられて、ヴィル様に会いたくなる。
ヴィル様は少し忙しいみたいで、その間は会えないんだ。いつまでって決まっているわけじゃないらしくて、ちょっと不安。けど、信じて待つって決めたんだからね。
会えないからって一人でしたりしてないよ…。してないから……。
うーん。なんで人の話し声がするんだろう。
それにしてもこの布団いつもより柔らかい気がする。ほわほわだ。気持ちいい。家のベッドもこのぐらい柔らかいのにしたいなぁ。ヴィル様が買ってくれたのも柔らかいけど、これは別格だよ。
ん? 柔らかいベッド?
僕どこに寝てるの? って思ったら、急激に頭がさえてきて、パッと目を開いた。
「なにこれ」
驚きすぎて、声が出ちゃった。
天井から垂れている薄い布で覆われていて、どう考えても高貴な方が使うようなベッド。
僕が起き上がるのと同時に布が開けられて、そこから顔を出したのは、会いたくてたまらなかったヴィル様。
驚きと同時に、騎士服を着てるヴィル様に胸がきゅんとする。いつもと違って堅い感じがして男前度合いが二割増し。うう、かっこよすぎるよ。
ヴィル様のかっこよさに密かに悶えてると、
「エル」
心配そうな表情と声色。
僕の頬をそっと触って、こつんと額を合わせられる。そうなるともう顔が赤くなるのは条件反射みたいなもの。
それにしても、僕はどこにいるんだろう。
「ヴィル様、僕は…」
「倒れたの覚えてない? 契約が終わって帰ろうとしたときに倒れたって」
「倒れた…?」
「そう。大急ぎで駆け付けたんだ。大丈夫だとは分かってながらも、心配で堪らなかった」
ヴィル様はぎゅーって僕を抱きしめてくれる。僕はいつもとは違った雰囲気のヴィル様の方が心配になって、抱きしめ返して、背中をポンポンと撫でてみた。
肩越しにヴィル様の溜息が聞こえて、肩の力が抜けたみたいだった。
なんだか小さい子にしているみたいで失礼かなって思ったけど、慰める方法なんてこれしか思いつかなかったよ…。
「もう…大丈夫みたいです。心配かけてすみません」
体の怠さは治まってる。頭は少し重いけど。もしかして治癒師さんが治してくれたのかな。
ヴィル様は僕から離れて、よかった、と顔を綻ばせた。その笑顔が本当に穏やかで、本当に優しくて、きゅんとなる。
ああ、もう好き。好き好き。好きすぎて胸が熱くなって、何か込み上げてくる。
「ヴィルさまぁ…」
なんだかボロボロ涙がこぼれて止まってくれない。すっごく情緒不安定だよ。自分に何が起こったかわからないぐらい。
ヴィル様が何度も涙をぬぐってくれるけど、追い付かなくて、困り顔になってる。
こんな顔させたくないのに、重荷になりたくないのに、好きっていう感情が溢れてきて、ヴィル様にしがみ付いてしまった。
「…すきです……ヴィルさま、すき……」
今度はヴィル様が抱きしめ返してくれて、目元に口づけてくれる。ヴィル様の体温が心地よくて、温かくて。
重い奴だって思われてないかな。大丈夫かな。ヴィル様の顔を見るのが怖い。
俯いてたら、くいって顎を持ち上げられて、細められた瞼から覗く紫の瞳と視線が絡まる。溜息が出そうなほど透き通ってて綺麗な瞳。引き寄せられるようにして唇が重なって、僕は目を瞑った。
蕩けるようなキス。
このキスされると僕はヴィル様を求めて熱に浮かされてしまうんだ。この後に待ってる快楽に体の奥が疼いて仕方なくなる。もう何もかもヴィル様の虜だよ。
「エル、愛してる」
押し倒されて、熱のこもった目で見降ろされると、もう逆らえない。その上、反応し始めてしまってる僕の大事な所に脚をグイグイ押し付けてくる凶悪なヴィル様。
「…ぁっ、や…」
「もう、欲しくなった?」
そんなこと耳元で言わないでっ。
腰がゾクゾクして、勝手に体が跳ねてしまう。
もう僕がいやらしい体になってること、ヴィル様に知られてしまってるんだ。
ここがどこなのか、あれからどのぐらい経ってるのか、疑問に思ってたことが全部どうでもよくなって、身も心もヴィル様で埋め尽くされる。
ヴィル様は僕の一張羅を脱がすと、騎士服を豪快に脱いで放り投げる。露わになったバランスよく筋肉のついたしなやかな体に目が釘付けになる。
いつももっと暗いところでしてるから、こんな明るいところで見ると僕には刺激が強すぎるよ。
――って言うことは僕の貧相な体も良く見えるってことだよね…。
隠そうとするけど、ヴィル様ににっこり微笑まれて、無理でした。
「恥ずかしい?」
「は、はい…。明るくて、よく見えるから……」
「うん。エルの肌も良く見えるよ。うっすら赤くなってるのもちゃんと見えてる」
「もうっ、ヴィルさ……あっ…」
するって胸からお腹にかけて撫でられるだけで、変な声が出てしまう。僕も興奮してるのかな。
考えるのを遮るみたいに、ヴィル様が圧し掛かって来て、また深く口づけられる。
同時に胸まで触られ始めると、もう降参。ただの飾りだったのに、今となっては無情な裏切者だよ。
声も出せない上、ヴィル様の腕を掴んで抵抗しても、胸板を叩いても、まるっきり無意味。
焼き切れそうなぐらい気持ちよくて、頭の中が真っ白になる。後は翻弄されるだけ。
明るくてよく見えるなんて、言わなければよかった。
一人でしてるところ見せてなんて無理難題を突き付けられ、たっぷり解された所に自分の指を入れさせられ、繋がってるところをわざわざ見せられ、本当になんというか……ヴィル様が悪魔に見えたよ。
頭のねじが一本外れたのかと思うぐらいおかしくなってて、すごく興奮してたのも事実で、思い出すと顔を覆ってしまいたくなる。
「エルが可愛くてちょっと暴走しちゃった。起きたばっかりだったのに優しくできなくてごめんね」
ううー。許してしまう自分が憎い。
「体は? 大丈夫?」
「…ダイジョウブデス」
むしろ喉と腰以外、回復してるように感じるんだけど、なんでだろう。確かに行為で疲れてるんだけど、頭が重さもなくなってすっきりしてる。
「今夜はここに泊まればいいからね。朝までゆっくり一緒にいれるよ」
「泊まる? あ、…」
布を退けて外を見るともう真っ暗。ヴィル様と一緒にいれるならいいか、なんて安易すぎる僕。店もしっかり戸締りしてきてるし、問題ないね。
「ここって、どこなんですか?」
「ここは俺の部屋だから気にしなくて大丈夫」
「ヴィル様の!?」
「うん」
「うわー、ここヴィル様の部屋……」
やっぱり高貴な方…。
このベッドも、部屋に置かれてる家具から調度品までどれも格調高いものばかり。趣味は団長さんのお屋敷とよく似てる。
それにしても、ヴィル様のベッド。
うっ、ヴィル様いつもここに寝てるってことだよね…。堪能しておこう。はぁ、僕って変態だ。
ヴィル様の匂いがするクッションをギューッと顔を埋めて抱っこしてると、ヴィル様は忍び笑い。
「エール。本物はこっちだよ?」
って両手を広げられたら、向かうしかないよね。クッションを置いて、ヴィル様の胸に飛び込む。やっぱり本物の香りがいい。
「エル。あのね、」
あのね、で止まってしまったヴィル様の次の言葉を求めて僕は見上げたら、ヴィル様は今までにないぐらい真剣な表情で僕の事を見つめてくる。
その真剣さに僕はヴィル様から身体を離して、しっかりとアメジストの瞳を見つめ返した。
「前言ってた、伴侶の事、覚えてる?」
「は、はい」
「エルに本気で考えて欲しいんだ」
それって。
「今はちょっと立て込んでて、すぐにとは言えないんだけど、絶対に迎えに行くから待っていて欲しい」
「ヴィル様……僕……僕なんかで…」
「エル。『なんか』なんて言わないって前も言ったよ。エルがいいんだから。――エルは? 伴侶に俺は嫌?」
「そんな! 僕……」
ぶわって涙があふれてくる。
いいの? 本当に僕なんかで…。
「ヴィルさまがすき、ヴィルさまとずっといっしょにいたいよ…」
「エルヴィン…愛してる。ずっと一緒にいよう」
僕は壊れたように何度も頷くと、ヴィル様が僕の手を取って、ゆっくりと中指に何かを嵌めてくれる。
「…これ…」
いつの間に僕の指の太さ測ったんだろうって思うぐらいに、ぴったりな指輪。
二つの紫色の石とそれに挟まれるようにして灰色の石が埋め込まれている。ヴィル様と僕の瞳の色だ。
これって、前一人で買おうとしてたから?
「受け取って欲しい。少し寂しい思いをさせるけど、これを俺だと思って、待っていてくれるかな」
ヴィル様はゆっくりと僕に言い聞かせるように話してくれる。物柔らかい、いつものお茶目さを全く感じさせない口調で。
それから、もう一つの色が反対になった指輪を僕の掌に乗せて、蕩けるように微笑んだ。
僕はもうずっと放心状態で、つけてくれる?、と促されるまま、ヴィル様の指に同じように嵌めた。
その途端にギュって抱き寄せられて、額にキスが降ってくる。
「エル、愛してる」
「……ヴィルさまっ、……ぼくも……っ…」
大泣きしてる僕を膝に抱えて、泣き止むまで何度もキスして、頭を撫でてくれた。ヴィル様の目が優しくて、手が温かくて、なかなか涙か止まらなかった。
これでもか、ってくらい顔中にキスしてくるから、最終的には笑ってしまったけど。
翌朝、ヴィル様が家まで送ってくれた。
家に帰ると現実に戻ったって感じだ。
昨日の事が夢だったんじゃないかって思うけど、指輪が光るたびに、本当なんだなって。
思い出すたびに胸がギューギュー締め付けられて、ヴィル様に会いたくなる。
ヴィル様は少し忙しいみたいで、その間は会えないんだ。いつまでって決まっているわけじゃないらしくて、ちょっと不安。けど、信じて待つって決めたんだからね。
会えないからって一人でしたりしてないよ…。してないから……。
2
お気に入りに追加
792
あなたにおすすめの小説
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです
矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。
それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。
本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。
しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。
『シャロンと申します、お姉様』
彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。
家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。
自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。
『……今更見つかるなんて……』
ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。
これ以上、傷つくのは嫌だから……。
けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。
――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。
◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです(_ _)
※感想欄のネタバレ配慮はありません。
※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっておりますm(_ _;)m
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
今更愛を告げられましても契約結婚は終わりでしょう?
SKYTRICK
BL
冷酷無慈悲な戦争狂α×虐げられてきたΩ令息
ユリアン・マルトリッツ(18)は男爵の父に命じられ、国で最も恐れられる冷酷無慈悲な軍人、ロドリック・エデル公爵(27)と結婚することになる。若く偉大な軍人のロドリック公爵にこれまで貴族たちが結婚を申し入れなかったのは、彼に関する噂にあった。ロドリックの顔は醜悪で性癖も異常、逆らえばすぐに殺されてしまう…。
そんなロドリックが結婚を申し入れたのがユリアン・マルトリッツだった。
しかしユリアンもまた、魔性の遊び人として名高い。
それは弟のアルノーの影響で、よなよな男達を誑かす弟の汚名を着せられた兄のユリアンは、父の命令により着の身着のままで公爵邸にやってくる。
そこでロドリックに突きつけられたのは、《契約結婚》の条件だった。
一、契約期間は二年。
二、互いの生活には干渉しない——……
『俺たちの間に愛は必要ない』
ロドリックの冷たい言葉にも、ユリアンは歓喜せざるを得なかった。
なぜなら結婚の条件は、ユリアンの夢を叶えるものだったからだ。
☆感想、ブクマなどとても励みになります!
妄想女医・藍原香織の診察室
Piggy
恋愛
ちょっと天然な女医、藍原香織は、仕事中もエッチな妄想が止まらない変わった女の子。今日も香織は、うずまく妄想を振り払いながら、病んでる男子に救いの手を差し伸べる。
すべてのムッツリスケベに捧ぐ、エロ×女医×ギャグの化学反応!
本編完結。ただいま番外編を不定期更新中。気になるあの人のその後や、もし○○が××だったら…など、いろんな趣向でやってます。
※エグ・グロはありません。
※エロをベースに、ときどきシリアス入ります。エロ+ギャグ・ほのぼの(?)ベースです。
※「ムーンライトノベルズ」にも掲載開始しました。アルファポリスでの更新が常に最新です。
僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜
柿 心刃
恋愛
僕の幼馴染で姉的な存在である西田香奈は、眉目秀麗・品行方正・成績優秀と三拍子揃った女の子だ。彼女は、この辺りじゃ有名な女子校に通っている。僕とは何の接点もないように思える香奈姉ちゃんが、ある日、急に僕に急接近してきた。
僕の名は、周防楓。
女子校とは反対側にある男子校に通う、ごく普通の男子だ。
【R18】らぶえっち短編集
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)
R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。
※R18に※
※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。
※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。
※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。
※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる