49 / 50
◆菫《すみれ》の少年◆
2 ※
しおりを挟む
「お帰りなさい、ローザさま!」
女子寮に着くなりすごい勢いでリリィが突進してきた。思わず目をつぶってしまったけれど、さすが運動部の代表というべきか、直前で勢いを殺してくれたのか、衝突することはなく抱き締められる。
男の人たちとはまったく違う、柔らかな感触だ。猫と犬ぐらい異なっている。
「……って、リリィっ苦しいですわ!」
「だって、久し振りすぎるんですよ」
ぎゅーっと強く抱き締めながら文句を言ってくる。
「婚約披露パーティに来たでしょう?」
「そこから丸三日も会ってませんもん」
と、ふくれる。雪の精霊のごとき美少女はどんな顔をしても愛らしいのだと、ローザはつくづく思い知った。
耳元で、くんくん嗅ぐ音がした。
「や、……ちょっとリリィ」
「ん?」
「あなた犬ですの?」
「ローザさまの番犬希望ですね。体調は悪くないですか?」
ちょっと眠いというか、気怠い。熱っぽい感じもするし、朝よりもマシになってきたとはいえぼんやりして思考がまとまらないので、風邪をひきかけているのかもしれない。
そう言うと、リリィはにっこり笑って、ローザの顔を覗き込んできた。
「お風呂に入りましょうか、ローザさま」
「……こんな午前中からですの?」
太陽はまだまだ高い。
「外出したら綺麗にしないと」
って、実家から帰ってきただけなのに!?
◆ ◆ ◆
「あまい匂いと、薬草の……匂い……。ローザさま、心当たりは?」
バスタブに流しっぱなしの温かな湯があふれて、洗い場へと流れてローザの尻を濡らしている。
柔らかな唇。
温かな舌がローザの舌に絡み、歯列の裏をさぐってくる。唾液が絡まって濡れたはずかしい音をたてる。
大好きな女の子とするキスはとても気持ち良い。お風呂場の洗い場に座り込みながら、ローザは首をかしげた。
「ん……、心……当たり……?」
「そうですね。まずは婚約式の後の話から――。三人は優しくローザさまを抱きましたか? そろそろこちらも慣らされているんですよね?」
首筋を舐めるリリィの指が後庭の蕾をなぞり、ローザの全身が跳ねた。
「あっ、やっ」
そこはまだまだ途中なのに。
「それからは、毎日ひとりずつと過ごす慣習でしたよね。……寝室から出る暇も無かったのでは?」
「そ、そんなことはありませんわ。昼間は乗馬したり、町に買い物に行ったり……」
リリィのキスがどんどん下へと降りてくる。
座り込んだまま足を開かされ、リリィの鼻がローザの足の付け根へと近づく。
「ふぅん“昼間は”ですね。ちゃんとこっちも嗅がせてくださいね。ローザさまの肌からいつもと違う匂いがするんですよ――」
ローザのスリットを嗅ぎながら、舌で唇を湿らせてリリィは笑った。しかし目は怒っている。
「ほら、――――媚薬の匂いが」
女子寮に着くなりすごい勢いでリリィが突進してきた。思わず目をつぶってしまったけれど、さすが運動部の代表というべきか、直前で勢いを殺してくれたのか、衝突することはなく抱き締められる。
男の人たちとはまったく違う、柔らかな感触だ。猫と犬ぐらい異なっている。
「……って、リリィっ苦しいですわ!」
「だって、久し振りすぎるんですよ」
ぎゅーっと強く抱き締めながら文句を言ってくる。
「婚約披露パーティに来たでしょう?」
「そこから丸三日も会ってませんもん」
と、ふくれる。雪の精霊のごとき美少女はどんな顔をしても愛らしいのだと、ローザはつくづく思い知った。
耳元で、くんくん嗅ぐ音がした。
「や、……ちょっとリリィ」
「ん?」
「あなた犬ですの?」
「ローザさまの番犬希望ですね。体調は悪くないですか?」
ちょっと眠いというか、気怠い。熱っぽい感じもするし、朝よりもマシになってきたとはいえぼんやりして思考がまとまらないので、風邪をひきかけているのかもしれない。
そう言うと、リリィはにっこり笑って、ローザの顔を覗き込んできた。
「お風呂に入りましょうか、ローザさま」
「……こんな午前中からですの?」
太陽はまだまだ高い。
「外出したら綺麗にしないと」
って、実家から帰ってきただけなのに!?
◆ ◆ ◆
「あまい匂いと、薬草の……匂い……。ローザさま、心当たりは?」
バスタブに流しっぱなしの温かな湯があふれて、洗い場へと流れてローザの尻を濡らしている。
柔らかな唇。
温かな舌がローザの舌に絡み、歯列の裏をさぐってくる。唾液が絡まって濡れたはずかしい音をたてる。
大好きな女の子とするキスはとても気持ち良い。お風呂場の洗い場に座り込みながら、ローザは首をかしげた。
「ん……、心……当たり……?」
「そうですね。まずは婚約式の後の話から――。三人は優しくローザさまを抱きましたか? そろそろこちらも慣らされているんですよね?」
首筋を舐めるリリィの指が後庭の蕾をなぞり、ローザの全身が跳ねた。
「あっ、やっ」
そこはまだまだ途中なのに。
「それからは、毎日ひとりずつと過ごす慣習でしたよね。……寝室から出る暇も無かったのでは?」
「そ、そんなことはありませんわ。昼間は乗馬したり、町に買い物に行ったり……」
リリィのキスがどんどん下へと降りてくる。
座り込んだまま足を開かされ、リリィの鼻がローザの足の付け根へと近づく。
「ふぅん“昼間は”ですね。ちゃんとこっちも嗅がせてくださいね。ローザさまの肌からいつもと違う匂いがするんですよ――」
ローザのスリットを嗅ぎながら、舌で唇を湿らせてリリィは笑った。しかし目は怒っている。
「ほら、――――媚薬の匂いが」
0
お気に入りに追加
335
あなたにおすすめの小説
赤ずきんと女王の森
月極まろん
ファンタジー
魔物があふれる『女王の森』
おばあさまを訪ねて来た赤ずきんは、逃げてばかりの黒狼に出会います。彼から聞いたのは魔女殺しの金狼の話。女王を目指す赤ずきんは、その黄金の狼がいるという花畑へと向かうのです……。
※残酷な描写があります。御注意ください。
※短期集中掲載で、完結します。
※友人たちとオリジナル同人誌に書いた作品を、書き直しのうえ掲載したものです。
【R18】ひとりで異世界は寂しかったのでペット(男)を飼い始めました
桜 ちひろ
恋愛
最近流行りの異世界転生。まさか自分がそうなるなんて…
小説やアニメで見ていた転生後はある小説の世界に飛び込んで主人公を凌駕するほどのチート級の力があったり、特殊能力が!と思っていたが、小説やアニメでもみたことがない世界。そして仮に覚えていないだけでそういう世界だったとしても「モブ中のモブ」で間違いないだろう。
この世界ではさほど珍しくない「治癒魔法」が使えるだけで、特別な魔法や魔力はなかった。
そして小さな治療院で働く普通の女性だ。
ただ普通ではなかったのは「性欲」
前世もなかなか強すぎる性欲のせいで苦労したのに転生してまで同じことに悩まされることになるとは…
その強すぎる性欲のせいでこちらの世界でも25歳という年齢にもかかわらず独身。彼氏なし。
こちらの世界では16歳〜20歳で結婚するのが普通なので婚活はかなり難航している。
もう諦めてペットに癒されながら独身でいることを決意した私はペットショップで小動物を飼うはずが、自分より大きな動物…「人間のオス」を飼うことになってしまった。
特に躾はせずに番犬代わりになればいいと思っていたが、この「人間のオス」が私の全てを満たしてくれる最高のペットだったのだ。
【R18】悪役令嬢は王子に愛を乞われる
夕日(夕日凪)
恋愛
※連載中の『悪役令嬢は南国で自給自足したい』のIF話になります。
リーベッヘ王国の王太子フィリップ・ブラバンドは、我儘三昧な婚約者ビアンカ・シュラット侯爵家令嬢との婚約破棄を考えていた。しかし近頃、婚約者の様子がなんだかおかしい。急に可愛くなってしまった婚約者に王子は恋をしてしまって…。だけどある日彼女からお願いされたのは婚約破棄!?『悪役令嬢』ってなんなんだ?
※このお話単体で読めるようになっています。
※男性視点からのスタートとなります。
※王子が婚約者に困惑しつつも溺愛に突き進むお話となっております。
明日の夜、婚約者に捨てられるから
能登原あめ
恋愛
* R18甘めのエロ、タグの確認をお願いします。
物語の世界に転生した私は、明日の夜に行われる舞踏会で捨てられる――。
婚約者のジュリアンはヒロインに正式に告白する前に、私、イヴェットに婚約解消してほしいと告げるのだ。
二人が結ばれるとわかっていたのに、いつの間にか好きになってしまった。
邪魔するつもりはないけれど、彼らが幸せな様子を見るのはつらいので、国を出ようと計画を立てたところ――?
* 頭を空っぽにして息抜きにお読みください。
* 成人年齢18歳の世界のため飲酒シーンがありますが、現実ではお酒は20歳になってから親しんで下さい(念のため)
* 8話程度+おまけ未定。Rシーンには※マークつけます。
* コメント欄にネタバレ配慮しておりませんのでお気をつけください。
* 表紙はCanvaさまで作成した画像を使用しております。
【R18】異世界で公爵家の教育係となりました〜え?教育って性教育の方ですか?〜
星型のスイカ
恋愛
特に人に誇れる才能もないけど、道を踏み外した経験もない。
平凡が一番よねって思って生きてきた、冬馬ゆき、二十二歳。
会社帰りに突然異世界転移してしまい、しかもそこは平民が性に奔放すぎるとんでも異世界だった。
助けてもらった老紳士の紹介で逃げるように公爵家の教育係の面接に向かうと、そこにはとんでもない美形兄弟がいた。
私って運が良いなぁなんて喜んでいたら、え?教育係といっても、そっちの教育ですか?
思ってた仕事じゃなかった!
絶対に無理です、だって私……処女なのに!
問題児とされる公爵家の兄弟四人に、あれよあれよと性教育をすること(されること)になるお話です。
※魔法のあるふんわり異世界です。
※性癖色々です。細かいことは気にしない、何でもアリな人向けです。
※男性キャラの主人公以外との性行為描写があります。
※主人公だいぶ天然な子です。
※更新不定期です。
【R18】幼馴染な陛下と、甘々な毎日になりました💕
月極まろん
恋愛
幼なじみの陛下に、気持ちだけでも伝えたくて。いい思い出にしたくて告白したのに、執務室のソファに座らせられて、なぜかこんなえっちな日々になりました。
わたくし、悪役令嬢なんですが? モテるのは破滅フラグだから勘弁して
ブラックウォーター
恋愛
気がついたら乙女ゲームの悪役令嬢、イレーヌに転生していた。
シナリオ通りなら、自分は追放か投獄か、娼婦として売られるか。
とにかく、周りと関わるのを避けて大人しくしていよう。
と思ったのに、そのストイックさが清楚、慎ましやか、気品と勘違いされてモテフラグが立ちまくる。
しかも、天然ビッチなイレーヌが戯れやその場しのぎで披露した性技が、むしろ男たちを虜にしてしまう。
極めつけに、実はバイだった主人公の令嬢からも求愛されて。
それだけならまだしも、前世で歴女だった記憶を活用して、成り行きでいろいろ大活躍。
本人の意思に関係なく周りからの期待は高まるばかりで、全然心が休まらない。
だから!わたくしは破滅フラグを避けたいだけですの!
性的な描写はありますが、本番行為はしばらく、というかだいぶ先までありませんのであしからず。
性表現が増えそうで、R18ではと言うご指摘を複数ちょうだいしたので、一応R18とさせていただきます。
まだまだ本番行為はなく、主人公は乙女のままですが、ご理解のほどを。
完結です。
読んでいただいた皆様がたには心よりお礼申し上げます。
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 4巻発売中☆ コミカライズ連載中、2024/08/23よりコミックシーモアにて先行販売開始】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロが苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる