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第3章。「チベット」

6、チベット⑪

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--チベット⑪--

「祐也。起きて、朝食よ」
エディケは、朝ご飯の準備ができたので裕也を起こしに来た。
「はい。
 今、着替えて行きます」
裕也は、すでに起きていた。着替えてキッチンに向かう。
食卓には、パンケーキとカップに牛の乳が入ったのものが乗っている。
「祐也。急いで。
 集会に間に合わなくなる。
 おめかしもしたいし。
 記念する日になるわよ」
エディケは、裕也をかす。
「9時に出発よ」
エディケは、念を押す。
「分かりました」
祐也は、すでに出発の準備ができた。
急いで口に食べ物を入れる。
そこに、戸がノックされた。
「エディケさん。裕也さん」
ガイドが、昨日の約束で来たのである。
裕也は、すっかり忘れていた。
エディケは、応対に出た。
「裕也さは、昨日、少し体をこわしまして、今日は一日休むそうです。
 そう、学者にそうお伝えください」
ガイドは、「お大事になさってください」と一言いい。
何も疑わずに帰った。

エディケは、おめかしを終えた。
「アギ、あなたも行くのよ。
 祐也、行くわよ」
「準備は出来ています」
裕也は、玄関げんかんに向かった。
「出発」
裕也は、意気込んだ。
祐也は、外に出るものと思っていたが、
エディケは、娘と手をつなぎ地下への階段を降り始めた。
裕也も急いで後を追う。

エディケは、地下にある扉の前のキャンドルをとり扉を開け中に入った。
祐也もそれに続いた。
「あ、次元が変わった」
  
(これは、アメリカに在った井戸やソースへの入り口と同じだ)
祐也は、思った。
エディケは、30分くらい地下道を歩いた。
足元は、石畳いしだたみで古くからあるようにも思えた。
かわいていて清掃されている。
地下道の先が明るく見えてきた。
  

明るい日差しの入るドームに出た。
5本の石の柱に支えられている。
真ん中には、厚手の絨毯じゅうたんが敷いてあり、
数人の僧が瞑想めいそうしている。
ドームの上に青い空が見える。  

3人は、ドームの中に入る。
「おはようございます」
エディケは、元気よく挨拶する。
僧侶は、つぶていた目を開け、「おはようございます」と言った。
  

「瞑想のじゃましたね」
裕也は、ばつが悪そうに言う。
「挨拶の方が大切です。『祈りの間』じゃないしいいのよ」
エディケは、率直に言う。

そこにいる僧侶たちは、瞑想しながら入口を警備しているのかもしれない。

「私も、そう思います」
裕也も挨拶あいさつの方が大切だと思う。
  

階段を上がる。
幾つかの部屋が見える。祈りと法説ほうせつの部屋である。声が聞こえる。

「アジェスタさんは、どこですか?」
裕也は、もうそろそろ手紙の主に会えるかとエディケに尋(たず)ねてみる。
  
右端の部屋の前に人影が見える。
「あちらに見える方です」
エディケは、大役が果たせたと嬉しそうに言う。
「祐也、こっちです。
 よく来てくれました」
アジェスタは、裕也をハグした。  

「私は、夢で主は、争わない。と聞きました。
 その真意を確かめに来たのです」
裕也は、自分がここに来た目的を述べた。
  
「それを知るのは難しい。
 祐也、どうぞお入りください。
 エディケ。案内、ご苦労様でした」
エディケとアギは、祐也と分かれて、祈りの部屋に入って行った。
  
 
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