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第Ⅳ章。「侵略」

12、侵略⑱⑲⑳㉑

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--侵略(018)戦②--
もう、夜がすかりれた。
エンビは、森に隠れて様子をうかがっていた。
村人が数名いて何やら作業をしている。
暗くて様子があまり見えない。
松明たいまつあかりがともる。
大きな木の柱が十字に結ばれているのが照らし出される。
(木の十字架だ)
そのわきに女性の影が見える。
(アイリス…)
(彼女をどうする気だ?)
村人は、闇の娘を木の十字架に押さえつけた。
抵抗しているが男らの力は強い。
手を横の木に伸ばし押さえつける。
そして、右手に持っている鉄のくいを。
一気に「ぐさー」
「ギヤァァァァ---」
悲鳴ひめい木霊こだました。
そして、もう一方の手。
「ギャァァァァァァァァ」
アイリスは、気絶した。
慈悲じひが少しはあったのか両脚りょうあしは、わらなわで結び付けた。
だが、そんなことで許される行為ではない。
様子を見守り同じように体に力を入れていたエンビにアイリスの感情が入ってくる。
(いたい。悲しい。なぜ。なぜなの。こんな非道なこと。
 何がいけなかったの?…)
エンビは自分の両手で手を手で堅くにぎっていた。
その手から血が少しにじんで落ちた。

--侵略(019)戦③--
木の十字架を立てた。
そして、滑車かっしゃを運んでくる。
滑車には、木の十字架を立てれるように四角の木の枠があり、
その下に車輪が両側についていた。
「ゴギ ギギ」
皆で木の十字架を根元から徐々に立て、車の滑車に突き刺して取り付けた。
エンビがふと見ると奥に黒い人影がある。
その人物を雲に隠れていた月明りが雲を払い照らし出す。
(その顔に見覚えがある)
エンビは、その顔を凝視ぎょうしした。
(お父さん。何という非情な振舞ふるまい。あぁぁ)
「それでは、みなのもの出発するぞ」
ロイアナは、村人に号令ごうれいをかけた。
20人あまり、木のたてと鉄の剣を持っている。
光の神が訓練していた光の兵士である。
その前に20名の松明たいまつを持った者がいた。
暗い静かな森の中を松明の明かりと滑車の「ギィギィ」引く音が響ていた。
森は静まり返っている。
まだ、動物らしきものは生息せいそくしていない。
それは、まだ、神に創られていないからだ。
今いる家畜は神が創ったもの。
未来にいる動物は、誰の手で生み出されるのか?
その時は近づいている。

--侵略(020)戦④--
エンビは、こっそり後を追った。
森の外れまで来た。
遠くに明かりが見える。
闇の種族の村である。
森を抜けたところで、
木の十字架の滑車を止めた。
見張りに松明を持つ二人の光の若者を残した。
闇の村からも木の十字架が見えるようにである。
静かに松明を持った残りの光の村人と光の兵士が闇の村に近づいて行った。
(まだ我慢がまんだ。必ずスキが出来るはずだ)
エンビは、森の中で静かに時が来るのを待った。

--侵略(021)殺戮さつりく--
窓から明かりがれる。
何もないように家族で団欒だんらんをしている。
これから恐ろしいことが起こるのに。
光の村人は、一軒一軒、闇の村の家に油をまき火をつけていった。
外側の周りの家100軒あまりに火をつけた。
火は風にあおられ燃え上がった。
闇の村人は騒ぎ出した。
「何か煙たいぞ」
「家の屋根や壁から火の影が見える」
「大変だ。火事だ」
闇の村人は、慌てて家から出てきた。
扉を開けて出たところに光の兵士は立っていた。
「わ。誰だ」
光の兵士は、よしゃなく切り裂いた。
「ズバー」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
女性も子供も区別はなかった。
容赦ようしゃなく叩き切られて殺されていく。
難をのがれた者は、村を駆け回り、殺戮さつりくが起こっていることを伝えて回った。
家に火のついていない待ち伏せのなかったものは、武器代わりに農具のくわをもって広場に集まった。
くわをもつのは、それ以外に武器らしいものがないからである。
アクデシアもさわぎに気がつき家から飛び出てきた。
森の外れに十字架が照らし出されていた。
「あれは、アイリス」
アクデシアは、森をじっと見つめていた。

つづく 次回(侵略022)呪いの呪文
 
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