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異界を渡るマレビト
一件落着
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「へぇー! 聖女かあ。ラナちゃん回復魔法とか使ったんだ?」
「はい。今思うと本当に不思議な力でしたねー」
お母さんを助けるために異世界へ行って、帰って来た日から数日後。
私は神秘学研究部の部室でスバル先輩に話を聞かせていた。
異世界に行く前に思った通り、スバル先輩はアキラ先輩が異世界に行けることを知ってたみたい。
スバル先輩は行ったことはないけれど、アキラ先輩のお父さんとお姉さんが例のトビラをくぐるところを見たことがあるらしい。
「で? ハルカさんは見つかったのか?」
私の話を一通り聞いたスバル先輩は、次にアキラ先輩へ問いかける。
ハルカさんっていうのはアキラ先輩のお姉さんの名前みたい。
ハルカさんのことも知っているスバル先輩は、アキラ先輩の家の事情も知ってるみたいだった。
「見たのはラナさんだけどね。……でも話を聞いた感じだとまちがいないみたいだ」
「じゃあ連れては来れなかったんだな……」
「まあ、今回はばあちゃんたちの言う通り姉さんの魂の欠片が異世界をさ迷ってるってことがハッキリしたんだ。それだけでも収穫ありだよ」
あとは地道に助ける手段を探すよ、と言ったアキラ先輩は少し申し訳なさそうに私を見る。
「ただ、そのためにはまたラナさんにいっしょに異世界に行ってもらわなきゃならないけど……」
「いいですよ。そのときはお付き合いします」
不安そうなアキラ先輩に私は迷いなくうなずく。
「え? いいの? 危険なことだってあったのに……」
すんなりOKするとは思わなかったのかな。
思った以上にアキラ先輩はおどろいてた。
「そうですけど、ちゃんと助けてもらいましたし。それに本当にお母さんの病気治りましたし!」
そう、お母さんの病気は早くもキレイサッパリなくなったんだ。
帰って来てから二日後に治療の説明を受けるために行った病院。
説明の前にって改めて撮ったレントゲンには、あったはずの腫瘍が映ってなかったんだって。
正確には名残みたいに小さく映ってはいたけれど、完全に消える一歩手前みたいな状態。
お医者さんもすごくおどろいてたけど、こういう説明のつかないことは稀にあるっていってたんだって。
話を聞いて、私は泣きながら喜んだ。
きっと、マーガレットさんを助けることができたからだ。
がんばってよかったって思うと同時に、アキラ先輩に感謝した。
お母さんを助けてくれて……私を助けてくれた。
だから今度は私がアキラ先輩を助ける番だ。
「まだお礼言ってなかったですね」
私はアキラ先輩に向き直ってちゃんとお礼を口にする。
「お母さんを助ける手伝いをしてくれてありがとうございます。魔物に襲われそうになったとき、かばってくれてありがとうございます」
「ラナさん……」
「だから今度は私が助ける番です。また異世界に行くことがあったら、ちゃんと連れて行って下さいね」
「……うん、ありがとう」
逆にお礼を返して来たアキラ先輩は、眩しいものでも見るように私を見て笑顔を見せた。
分厚いメガネをしていてもわかるようなキレイな笑顔に、私の心臓がドキッと大きくはねる。
それを誤魔化すように私は視線を泳がせた。
「あ、でも! さすがに連続ではちょっとなので、もう少し休んでからにしたいかなーって……」
あはは、って笑いながら言うと、ちょうど廊下の方からバタバタとさわがしい足音が聞こえてきた。
バァン!
大きな音を立ててドアが開いて、現れたのは私の友だちのカンナだ。
カンナは涙目で何か大きな包みを抱えてる。
「ラナ、助けて!」
友だちからのとつぜんのお願いに、私はちょっとだけいやな予感がする。
次に異世界に行くのは、もうちょっと後……だよね?
END
「はい。今思うと本当に不思議な力でしたねー」
お母さんを助けるために異世界へ行って、帰って来た日から数日後。
私は神秘学研究部の部室でスバル先輩に話を聞かせていた。
異世界に行く前に思った通り、スバル先輩はアキラ先輩が異世界に行けることを知ってたみたい。
スバル先輩は行ったことはないけれど、アキラ先輩のお父さんとお姉さんが例のトビラをくぐるところを見たことがあるらしい。
「で? ハルカさんは見つかったのか?」
私の話を一通り聞いたスバル先輩は、次にアキラ先輩へ問いかける。
ハルカさんっていうのはアキラ先輩のお姉さんの名前みたい。
ハルカさんのことも知っているスバル先輩は、アキラ先輩の家の事情も知ってるみたいだった。
「見たのはラナさんだけどね。……でも話を聞いた感じだとまちがいないみたいだ」
「じゃあ連れては来れなかったんだな……」
「まあ、今回はばあちゃんたちの言う通り姉さんの魂の欠片が異世界をさ迷ってるってことがハッキリしたんだ。それだけでも収穫ありだよ」
あとは地道に助ける手段を探すよ、と言ったアキラ先輩は少し申し訳なさそうに私を見る。
「ただ、そのためにはまたラナさんにいっしょに異世界に行ってもらわなきゃならないけど……」
「いいですよ。そのときはお付き合いします」
不安そうなアキラ先輩に私は迷いなくうなずく。
「え? いいの? 危険なことだってあったのに……」
すんなりOKするとは思わなかったのかな。
思った以上にアキラ先輩はおどろいてた。
「そうですけど、ちゃんと助けてもらいましたし。それに本当にお母さんの病気治りましたし!」
そう、お母さんの病気は早くもキレイサッパリなくなったんだ。
帰って来てから二日後に治療の説明を受けるために行った病院。
説明の前にって改めて撮ったレントゲンには、あったはずの腫瘍が映ってなかったんだって。
正確には名残みたいに小さく映ってはいたけれど、完全に消える一歩手前みたいな状態。
お医者さんもすごくおどろいてたけど、こういう説明のつかないことは稀にあるっていってたんだって。
話を聞いて、私は泣きながら喜んだ。
きっと、マーガレットさんを助けることができたからだ。
がんばってよかったって思うと同時に、アキラ先輩に感謝した。
お母さんを助けてくれて……私を助けてくれた。
だから今度は私がアキラ先輩を助ける番だ。
「まだお礼言ってなかったですね」
私はアキラ先輩に向き直ってちゃんとお礼を口にする。
「お母さんを助ける手伝いをしてくれてありがとうございます。魔物に襲われそうになったとき、かばってくれてありがとうございます」
「ラナさん……」
「だから今度は私が助ける番です。また異世界に行くことがあったら、ちゃんと連れて行って下さいね」
「……うん、ありがとう」
逆にお礼を返して来たアキラ先輩は、眩しいものでも見るように私を見て笑顔を見せた。
分厚いメガネをしていてもわかるようなキレイな笑顔に、私の心臓がドキッと大きくはねる。
それを誤魔化すように私は視線を泳がせた。
「あ、でも! さすがに連続ではちょっとなので、もう少し休んでからにしたいかなーって……」
あはは、って笑いながら言うと、ちょうど廊下の方からバタバタとさわがしい足音が聞こえてきた。
バァン!
大きな音を立ててドアが開いて、現れたのは私の友だちのカンナだ。
カンナは涙目で何か大きな包みを抱えてる。
「ラナ、助けて!」
友だちからのとつぜんのお願いに、私はちょっとだけいやな予感がする。
次に異世界に行くのは、もうちょっと後……だよね?
END
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