異世界タイムスリップ

緋村燐

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異界を渡るマレビト

アキラ先輩の事情⑦

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「でもこの世界に来てから、ラナさんたまに俺から目をそらすだろ? きらわれたんじゃないかって……やっぱり異世界なんて連れて来たからおこってるのかなって……」
「え!? きらってなんかいませんよ!?」

 目をそらしちゃうのはカッコ良すぎるアキラ先輩の顔を直視できないからだ。
 それがまさか、きらってるからだって思われてたなんて……。

「じゃあどうして? 俺、地味に傷ついてたんだけど」
「え!? そ、それは……」

 傷つけるつもりなんてなかったからビックリする。
 でも、カッコイイ顔に緊張きんちょうしてたからだなんて言うのはずかしいし……。

「話せないってことはやっぱり良くは思ってないってことだよね……」

 シュンと落ちこむ様子に私は「あーもう!」ってちょっと投げやりになった。

「アキラ先輩がカッコイイから悪いんですよ!?」

 このまま誤解されるのだけはいやだ。
 照れるとかはずかしいとか、言ってられないよね?

「……は? カッコイイ?」

 予想外の言葉だったのかおどろくアキラ先輩に、私はおさえていたフタを開くみたいに続ける。

「いつもはボサボサ頭で似合わないメガネかけて地味でオタクっぽいのに、素顔はすっごいイケメンなんだもん! それがこっちに来て服装変えたらメガネはないし髪型かみがたもスッキリしてるし!」
「……」
「イケメンな顔ずっと見てる状態ですよ!? 何度息が止まると思ったか! カッコ良すぎてもはや凶器きょうきです!」
凶器きょうき……」

 ポカンと、あっけにとられたみたいな顔をするアキラ先輩。
 さすがに凶器きょうきは言い過ぎだったかなって思って、私は冷静さを取りもどした。

「……すみません」
「あ、いや……まさかそんな風に思われてたなんて思ってなくて」

 口を手でおおいながら私から目をそらすアキラ先輩。
 夜で暗いけど、神殿の方では夜通し明かりがついてる場所があるからこの辺りも少し明るい。
 だからアキラ先輩の耳が赤いのはしっかり見えた。

 アキラ先輩、照れてるの?

「アキラ先輩、自分がイケメンだって自覚ありますか?」

 つねづね不思議に思っていたことを聞いてみた。
 いつもは地味な見た目だけど、今まで素顔を誰にも見られたことがないなんてことはないはずだ。
 だから、カッコイイって言われるのだって初めてじゃないはずなのに……。

 なんか、すっごい照れてない?

「へ!? じ、自覚?……いや、言われたことがないわけじゃないよ? 小学生のころは結構言われてたし」
「じゃあどうして……」

 どうしてそんなに照れてるんだろう?

「母さんが亡くなってるからさ、小さいころから身だしなみとか姉さんが気をつかってくれてたんだ。でも姉さんも寝たきり状態だろ? 身だしなみとかはどうでもいいかなって思ってたし……」
「……」
「だから自覚がないってわけじゃないんだけど……カッコイイなんて言われるのも久しぶりで……ちょっと照れる」
「アキラ先輩……」

 さすがにあきれた。
 たしかに身だしなみとかどうでも良いって思ってたならあの地味なカッコウもわかるけど……。
 でもさ、せめてピョンピョンはねる髪だけでもなおしたらいいのに。

 まあ、あの髪も別にきらいじゃないんだけどさ、私は。

 なんて思いながらあらためて見た照れ顔のアキラ先輩。
 照れてるアキラ先輩は、カッコイイっていうよりちょっとかわいい。

 知りたいと思っていたアキラ先輩のことを少し知った。
 それにこんなかわいいアキラ先輩を見れてちょっと得した気分になる。

 お母さんの病気のこととか、アキラ先輩のお姉さんのこととか。
 まだ解決していないことはあるけれど、今はちょっとうれしいなって思った。
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