異世界タイムスリップ

緋村燐

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異界を渡るマレビト

アキラ先輩の事情②

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 アキラ先輩と細かく情報を整理して、とにかく明後日の花祭りについて調べようってことになった。
 主にマーガレットさんの行動についてだけど、マーガレットさんがいつもそばで守っているラミラの行動を調べる方が早いかもしれない。

 そんな話をしてこれからの方針を決めたころ、ルミルとクルトがむかえに来てくれた。
 一緒に礼堂を出て、裏手にある聖女や聖職者の宿舎しゅくしゃに案内してくれる。
 この宿舎しゅくしゃには旅の聖女がまれるように常に空き部屋がいくつかあるんだって。

 ルミルは一人前になるための旅は二年前にラミラと一緒にすませたらしい。
 クルトとマーガレットさんと幼なじみ四人で旅行感覚で行ってきたみたい。
 どこそこの街の宿舎しゅくしゃはボロかったとか話を聞かせてくれながらここの宿舎しゅくしゃを案内してくれた。

 案内された部屋はアキラ先輩ととなり同士。
 ちょっとドキドキしちゃったけど、アキラ先輩は今私の護り手なんだから近くで寝泊ねとまりするのは当然かって思い直した。
 反対どなりは別の聖女の部屋らしいし、ちゃんと内鍵うちかぎもあるからホテルみたいなものだと思えばふつうかな?

 その後はちょうど夕食どきだったから、食堂に案内してもらってみんなでおしゃべりしながら夜ご飯をいただいた。

「で、ラナたちはいつまでレイナスの街にいるの?」

 ラミラに聞かれて答えようと思ったけれど、ちょうどポテトサラダみたいなものが口に入っていたから答えられなかった。
 ポテトサラダっぽいって言っても、マヨネーズが使われてるわけじゃないみたいでモソモソしてるから飲みこみづらいんだよね。

「明後日まではいようかと思ってるんだ。花祭りがあるって聞いたから」

 代わりにアキラ先輩が答えてくれた。

「それは良いわね! この街が一番はなやかになる日よ」
「私たちはやることがあるから一緒には見て回れないけれど、ぜひ街の中を見て行って」

 ルミルのうれしそうな言葉の後に、ラミラが落ち着いた声で話す。

「やること? なにをするの?」

 やっとポテトを飲みこめた私は、ここぞとばかりに聞いた。
 早くも花祭りでのラミラの行動がわかるチャンスだ。

「あら? ラナの街では花祭りはないの?」
「え? あ、似たようなものはあるけど、違いがあるのかなって思って」

 そっか、女神さまにかかわることなら同じ世界の街で似たようなお祭りがあってもおかしくないよね。

 あはは、って笑って誤魔化す私にラミラとルミルが説明してくれる。

「花祭りは女神さまからの祝福をみんながもらえる日だから、代わりに女神さまのいとし子である聖女たちは女神さまにありがとうございますっていのりをささげるの」
「特に筆頭聖女のラミラはほとんど神殿から出られないのよね」

 他の聖女は朝と夕方にいのればいいけれど、筆頭聖女は休けいは入れるけどほぼ一日中いのるんだって。

「へぇ……」

 でもそれならいつラミラは街に出たんだろう?

 鏡で見たのは明らかに外。
 神殿から少しはなれたところで見た広場っぽいところだと思う。

 私は相づちを打ちながらまたポテトを口に入れて、内心疑問に思っていた。


 その後はもう寝る時間。
 お風呂に入りたかったけれど、この世界では湯舟ゆぶねにつかる習慣ってないみたい。
 体を洗うのも週に一回とかなんだって。

 日本とは気候きこうがちがうからそういう習慣がないのかもしれないってアキラ先輩は話してたけど……。
 でもこのままで寝るのはさすがにイヤ。
 なんとかお湯を張ったおけ手拭てぬぐいは貸してもらえて、部屋の中で体をいた。

「ううぅ……髪も洗いたい」

 今は大丈夫だけど、明日はかゆくなりそうだからイヤだ。
 しかもそのままで明後日までいなきゃならないとか……。

「明日は水でも良いから絶対髪洗おう!」

 明日はそこまですることがないはずだから、髪を洗うくらいの時間はあるはずだよね!

 そんな決意をしてベッドに入ったら、自分で思っていた以上につかれてたみたい。
 すぐに眠気がおそってきた。

 考えてみれば学校が終わってからアキラ先輩の家に行って、そのままこの異世界に来たんだ。
 こっちに来てからも魔物が出たり回復魔法を使ったり女神のフェリシアさまと話したり……。
 まさにどとうの一日って感じ。

 順応性が高くて戸惑とまどうことは少なかったかもしれないけれど、だからってつかれないわけじゃない。
 私はおそってきた眠気にあらがうことなく目を閉じる。

 意識も夢の中に落ちていく前に、女の子の声が聞こえた気がした。

『……帰りたい』

 って。
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