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異界を渡るマレビト
異世界①
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はじめは真っ白でなにも見えないと思った。
でもすぐに白いモヤが晴れていくみたいに消えていく。
広がった光景はレンガで出来た建物が多くて、整えられた道もアスファルトじゃなくて石が敷かれてる。
行き交う人たちの服装もシンプルなのが多くて、女の人はスカートばっかり。
昔のヨーロッパってこんな感じだったよね?
ここがお母さんの前世の世界……本当に来ちゃったんだ。
不思議な現象。
でも夢じゃない。
私、本当にタイムスリップしちゃったんだ!
……でも、なんかちょっとおかしくない?
なんていうか……髪色がカラフル。
黒が少ないのはヨーロッパならまあ分かるとして。
でも赤とか青とか、緑とか紫とか。
とにかく髪色のバリエーションが豊富!
まさかみんな染めてるわけじゃないだろうし……。
なんで?って思っていると、ちょっと強めに手を引かれた。
「ラナさん、こっち」
「え? あ、はい」
とりあえず引かれるままついて行く。
道のはしにあった木箱に隠れるように移動したアキラ先輩は、私の手をはなして巾着袋の中から渡り鏡を取り出した。
「とりあえず服装を変えるよ。制服じゃあ目立つからね」
「あ、そうですね。でもどうやって調達するんですか?」
確かにセーラー服と学ランじゃあ変に目立っちゃうよね。
でも服を買うとしてもお金なんて持ってきてないし、あってもこの国で使えるとは思えない。
どうするんだろうと思っていたら、アキラ先輩はちょっと得意げに渡り鏡を持ち上げる。
「この鏡を使うんだ。鏡に願えばこの世界に合わせた服装に変えてくれるんだ」
「へぇ……便利なんですね?」
感心しながら、世界って言葉の違いがちょっと気になった。
国とか時代って言わないの?って。
でも服装が変わるって不思議現象が気になってその疑問は後回しにしちゃった。
「っていうか、アキラ先輩慣れてますね? 何度もタイムスリップしてるんですか?」
やるべきことは分かってるって感じで戸惑ってる様子がないから何回か体験してるんだと思った。
でも。
「いいや、俺ははじめてだよ。……ただ、父さんに話を聞いてただけだ」
「アキラ先輩のお父さん? お父さんも、えっと……マレビトなんですか?」
「ああ、俺と父さんとばあちゃんがマレビト。父さんは渡り鏡の前の持ち主だったんだ」
今は事情があって引退しちゃったけど、と話してくれたアキラ先輩はどことなく悲しそうだった。
だからそれ以上つっこんで聞けなくて黙ってしまう。
「とにかく服装変えるよ?」
「あ、はい。お願いします」
改めて言われてついビシッと“きをつけ”の体勢をしちゃった。
「かたくなりすぎ」って笑ったアキラ先輩は、真剣な顔になって鏡を見る。
「渡り鏡よ。世界を渡りしマレビトたちにふさわしき装いを」
アキラ先輩の言葉に応えるように淡く光った鏡。
その光は私とアキラ先輩に移って、制服が同じように淡く光り出した。
光りながら形が変わっていく。
袖が薄手の白い長そでシャツになって、上下分かれてる制服がつながって同じく白いノースリーブのアイラインワンピースみたいになる。
鳥居をくぐる前に履いてあったくつはブーツみたいな形になって、他にも何か装飾品みたいなものが加わった。
中でも金色の鳥をかたどったペンダントが目立つ。
「ほ、本当に変わった……」
驚きと感動でドキドキしてくる。
「すごいですね! アキラせんぱ――」
でも、感動を伝えようと目を向けたアキラ先輩の姿を見てドキドキしていた心臓が一瞬止まった。
アキラ先輩は青い長そで長ズボンを着ていて、簡易的な動物の皮の鎧みたいなのをつけている。
腰には剣をさしていて、よくゲームとかで見る兵士みたいな格好をしていた。
でもまあそれはいいんだ。
問題は……。
でもすぐに白いモヤが晴れていくみたいに消えていく。
広がった光景はレンガで出来た建物が多くて、整えられた道もアスファルトじゃなくて石が敷かれてる。
行き交う人たちの服装もシンプルなのが多くて、女の人はスカートばっかり。
昔のヨーロッパってこんな感じだったよね?
ここがお母さんの前世の世界……本当に来ちゃったんだ。
不思議な現象。
でも夢じゃない。
私、本当にタイムスリップしちゃったんだ!
……でも、なんかちょっとおかしくない?
なんていうか……髪色がカラフル。
黒が少ないのはヨーロッパならまあ分かるとして。
でも赤とか青とか、緑とか紫とか。
とにかく髪色のバリエーションが豊富!
まさかみんな染めてるわけじゃないだろうし……。
なんで?って思っていると、ちょっと強めに手を引かれた。
「ラナさん、こっち」
「え? あ、はい」
とりあえず引かれるままついて行く。
道のはしにあった木箱に隠れるように移動したアキラ先輩は、私の手をはなして巾着袋の中から渡り鏡を取り出した。
「とりあえず服装を変えるよ。制服じゃあ目立つからね」
「あ、そうですね。でもどうやって調達するんですか?」
確かにセーラー服と学ランじゃあ変に目立っちゃうよね。
でも服を買うとしてもお金なんて持ってきてないし、あってもこの国で使えるとは思えない。
どうするんだろうと思っていたら、アキラ先輩はちょっと得意げに渡り鏡を持ち上げる。
「この鏡を使うんだ。鏡に願えばこの世界に合わせた服装に変えてくれるんだ」
「へぇ……便利なんですね?」
感心しながら、世界って言葉の違いがちょっと気になった。
国とか時代って言わないの?って。
でも服装が変わるって不思議現象が気になってその疑問は後回しにしちゃった。
「っていうか、アキラ先輩慣れてますね? 何度もタイムスリップしてるんですか?」
やるべきことは分かってるって感じで戸惑ってる様子がないから何回か体験してるんだと思った。
でも。
「いいや、俺ははじめてだよ。……ただ、父さんに話を聞いてただけだ」
「アキラ先輩のお父さん? お父さんも、えっと……マレビトなんですか?」
「ああ、俺と父さんとばあちゃんがマレビト。父さんは渡り鏡の前の持ち主だったんだ」
今は事情があって引退しちゃったけど、と話してくれたアキラ先輩はどことなく悲しそうだった。
だからそれ以上つっこんで聞けなくて黙ってしまう。
「とにかく服装変えるよ?」
「あ、はい。お願いします」
改めて言われてついビシッと“きをつけ”の体勢をしちゃった。
「かたくなりすぎ」って笑ったアキラ先輩は、真剣な顔になって鏡を見る。
「渡り鏡よ。世界を渡りしマレビトたちにふさわしき装いを」
アキラ先輩の言葉に応えるように淡く光った鏡。
その光は私とアキラ先輩に移って、制服が同じように淡く光り出した。
光りながら形が変わっていく。
袖が薄手の白い長そでシャツになって、上下分かれてる制服がつながって同じく白いノースリーブのアイラインワンピースみたいになる。
鳥居をくぐる前に履いてあったくつはブーツみたいな形になって、他にも何か装飾品みたいなものが加わった。
中でも金色の鳥をかたどったペンダントが目立つ。
「ほ、本当に変わった……」
驚きと感動でドキドキしてくる。
「すごいですね! アキラせんぱ――」
でも、感動を伝えようと目を向けたアキラ先輩の姿を見てドキドキしていた心臓が一瞬止まった。
アキラ先輩は青い長そで長ズボンを着ていて、簡易的な動物の皮の鎧みたいなのをつけている。
腰には剣をさしていて、よくゲームとかで見る兵士みたいな格好をしていた。
でもまあそれはいいんだ。
問題は……。
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