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異界を渡るマレビト
渡り鏡④
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翌朝、私は雨の中いつもより早めに家を出た。
借りた鏡を早く返した方がいいかなって思って。
学校につくとすぐに部室に向かう。
教室よりも部室にいる時間の方が多いって聞いたからいるかな?ってくらいの気持ちで来てみたんだけれど……。
コンコン
「はい、どうぞ」
本当にいた。
いてくれて助かったけれど、こんなに早い時間にいるとは思ってなくてちょっと驚いちゃった。
「おはようございます! えっと、アキラ先輩。鏡を返し――!」
ドアを開けながら用件を伝えようとしたけど、途中で止まっちゃった。
だって、部室の中にいたアキラ先輩は私が初めて部室に来たときみたいに眼鏡を外していたんだもん。
雨でぬれたのか髪からしずくがポタポタ落ちている。
しかも乾かしてるのかブレザーを脱いでいていつもよりうす着で、スラッとしているけど女の子とは違う体つきがよく分かった。
まさに水もしたたるいい男って感じ。
「おはようラナさん。ちょっとは元気出たみたいだね」
前髪をかき上げてほほ笑んでくれるアキラ先輩がちょっと色っぽく見えて、カァッと顔が熱くなっちゃったよ。
でもそんな私の様子に気づかないのか、アキラ先輩は私に座ってとうながした。
「……それで? どうだった?」
「あ、はい。……お母さんの病気はやっぱり聞き間違いとかじゃなかったです」
相談したからには結果も知らせないと気になるよね、と思ってドキドキ鳴る心臓を落ち着かせて簡単にだけど話す。
アキラ先輩は話しているとちゅうで眼鏡をかけてくれたから、早かった鼓動も何とか落ち着いてきた。
「言われた通りお母さんにこの鏡をさわってもらいましたけど……なにかご利益でもあるんですか?」
「ん? いや、ご利益とかそういうものじゃないかな」
話し終えて鏡の入った巾着袋を返す。
さわるとなにかいいことがあるのかな?って思ってたけれど、違うみたい。
じゃあ本当にこれ、なんなんだろう?
「これは“渡り鏡”って言って、ちょっと特別な鏡なんだ」
説明しながら巾着袋から鏡を取り出したアキラ先輩。
鏡面をジッと見て、真剣な顔をする。
何となく静かにしてなきゃない空気を感じてだまって見ていたんだけど……。
「数多のときを映す渡り鏡よ。かの者に救いを」
なんだか難しい言葉を使ってるなって思ったら、つぎの瞬間鏡がひとりでに光り出した。
え? まぶしっ。
光を反射したわけじゃない。
なのに強い光を放った鏡は、スゥーっとその光を消していく。
なに? 何が起こったの?
さすがにわけがわからなくてポカンとしていると、アキラ先輩は眼鏡の奥の目をうれしそうに細めて私に笑顔を向けた。
「良かった。ラナさん、君のお母さんの病気、なくせるよ」
「………………は?」
今起きたことも、アキラ先輩の言葉も、まったく意味がわからない。
いくら順応性が高い私でも、なんの説明もなければ混乱するよ!?
驚きすぎて、ニコニコしているアキラ先輩にちゃんと話を聞くまでに時間がかかった。
借りた鏡を早く返した方がいいかなって思って。
学校につくとすぐに部室に向かう。
教室よりも部室にいる時間の方が多いって聞いたからいるかな?ってくらいの気持ちで来てみたんだけれど……。
コンコン
「はい、どうぞ」
本当にいた。
いてくれて助かったけれど、こんなに早い時間にいるとは思ってなくてちょっと驚いちゃった。
「おはようございます! えっと、アキラ先輩。鏡を返し――!」
ドアを開けながら用件を伝えようとしたけど、途中で止まっちゃった。
だって、部室の中にいたアキラ先輩は私が初めて部室に来たときみたいに眼鏡を外していたんだもん。
雨でぬれたのか髪からしずくがポタポタ落ちている。
しかも乾かしてるのかブレザーを脱いでいていつもよりうす着で、スラッとしているけど女の子とは違う体つきがよく分かった。
まさに水もしたたるいい男って感じ。
「おはようラナさん。ちょっとは元気出たみたいだね」
前髪をかき上げてほほ笑んでくれるアキラ先輩がちょっと色っぽく見えて、カァッと顔が熱くなっちゃったよ。
でもそんな私の様子に気づかないのか、アキラ先輩は私に座ってとうながした。
「……それで? どうだった?」
「あ、はい。……お母さんの病気はやっぱり聞き間違いとかじゃなかったです」
相談したからには結果も知らせないと気になるよね、と思ってドキドキ鳴る心臓を落ち着かせて簡単にだけど話す。
アキラ先輩は話しているとちゅうで眼鏡をかけてくれたから、早かった鼓動も何とか落ち着いてきた。
「言われた通りお母さんにこの鏡をさわってもらいましたけど……なにかご利益でもあるんですか?」
「ん? いや、ご利益とかそういうものじゃないかな」
話し終えて鏡の入った巾着袋を返す。
さわるとなにかいいことがあるのかな?って思ってたけれど、違うみたい。
じゃあ本当にこれ、なんなんだろう?
「これは“渡り鏡”って言って、ちょっと特別な鏡なんだ」
説明しながら巾着袋から鏡を取り出したアキラ先輩。
鏡面をジッと見て、真剣な顔をする。
何となく静かにしてなきゃない空気を感じてだまって見ていたんだけど……。
「数多のときを映す渡り鏡よ。かの者に救いを」
なんだか難しい言葉を使ってるなって思ったら、つぎの瞬間鏡がひとりでに光り出した。
え? まぶしっ。
光を反射したわけじゃない。
なのに強い光を放った鏡は、スゥーっとその光を消していく。
なに? 何が起こったの?
さすがにわけがわからなくてポカンとしていると、アキラ先輩は眼鏡の奥の目をうれしそうに細めて私に笑顔を向けた。
「良かった。ラナさん、君のお母さんの病気、なくせるよ」
「………………は?」
今起きたことも、アキラ先輩の言葉も、まったく意味がわからない。
いくら順応性が高い私でも、なんの説明もなければ混乱するよ!?
驚きすぎて、ニコニコしているアキラ先輩にちゃんと話を聞くまでに時間がかかった。
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