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異界を渡るマレビト
渡り鏡①
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二週間もたてば中学校生活にも慣れてきた。
授業は苦手な数学には苦戦してるけど、他はまずまず。
部活動は今のところ地元の伝説とかの資料を読んだりしてる。
知らなかったお話もあって結構楽しいんだ。
ゴールデンウィークにはその伝説の場所を巡ってみたりするんだって。
今から楽しみ!
いまだにアキラ先輩が眼鏡を取った顔を見ると息が苦しくなるくらいドキドキしちゃうけど、それ以外で困ってることもないかな?
部活がない日は、カンナの吹奏楽も部活がなければ一緒に遊んだり勉強したり。
それ以外は普通に家で休んだり。
そんな普通の中学生活。
それが続くと思ってた……。
***
四月も中ごろのある夜。
深夜に目が覚めちゃってのどがカラカラだったから、麦茶でも飲もうかなって二階の部屋から下りて来たんだ。
そしたらリビングにまだ電気がついてて、お父さんとお母さんの話し声がした。
何を夜ふかししてるんだろう? お父さんだって明日仕事なのに。
早く寝なくていいのかな?って思いながらダイニングの方に行こうとしたんだけど……。
「ウソだろ!?」
お父さんの大きな声に何事!?ってビックリしちゃった。
そのままつい聞き耳を立ててしまう。
「……本当よ。少なくともガンなのは確かみたい」
え? ガン?
ガンって、もしかして病気ってこと?
お母さんが最近体調悪いからって病院行ってたのは知ってるけど、まさかそんな大病だったなんて……。
お母さん、大したことないって言ってたのに。
で、でも!
ガンだからって昔みたいに死んじゃうとは限らないもんね!
早期発見できれば治る病気だったはず。
でも、そんな私の希望はすぐに聞こえてきた声に否定された。
「余命三年って言われたの」
『っ!』
私とお父さんの息をのむ音が重なる。
そんな……余命宣告までされてるの?
「とりあえず治療法とかの説明をしたいから、旦那さんと一緒に来院して欲しいって。……三日後休める?」
「あ、ああ。何とか取ってくるよ」
その後もお父さんとお母さんは何か話してたみたいだったけど、気持ちの整理がつかなかった私はゆっくり自分の部屋に戻った。
余命三年……私が高校生になるかどうかって頃にお母さん死んじゃうの?
怒ると怖いし、うるさいことばっかり言われてうんざりすることも多いけど……。
でもそれはずっといる存在だからそう思うこともあるってだけ。
幼稚園の頃から遠足には愛情たっぷりなキャラ弁を作ってくれたり、どんなことでも頑張れたときにはめいいっぱいほめてくれるお母さん。
そのお母さんがいなくなっちゃうの?
死んじゃうの?
「っ! やだよぉ……」
部屋に戻ってベッドに入ったら、色々とこみ上げてきて涙があふれた。
頭の中ではぐるぐるとお母さんとの思い出がかけめぐって、このまま夜通し泣いちゃうんじゃないかって思った。
でも、逆に泣き疲れて眠っちゃったみたい。
「――ナ! 朝よ! 起きなさい!」
お母さんに布団を引っぺがされて寝ちゃったんだって気づいた。
「お母さん?」
「おはよう。もう、いつもはこの時間には起きてくるのに……夜ふかしでもしてたの?」
「うん……ごめん。あと、おはよう」
いつも通りのお母さんの様子に、昨日聞いたことは夢だったのかなって一瞬思っちゃう。
本当かどうか聞きたかったけれど、聞いても教えてくれるかどうか……。
「ラナ? 目はれてない? 虫にさされちゃった?」
「え? あ、なんでもないよ! 冷やせば大丈夫!」
あわてた私はすぐにベッドから出て「着替えるから」ってお母さんを部屋から出した。
着替えて、一階に下りてお父さんにも「おはよう」ってあいさつする。
「ああ……おはよう、ラナ」
そのお父さんのいつものさわやかな笑顔がかげってるように見えた。
カレンダーには三日後の日にちに“母・病院”って書いてあって……。
やっぱり昨夜のことは夢じゃないんだなって思った。
授業は苦手な数学には苦戦してるけど、他はまずまず。
部活動は今のところ地元の伝説とかの資料を読んだりしてる。
知らなかったお話もあって結構楽しいんだ。
ゴールデンウィークにはその伝説の場所を巡ってみたりするんだって。
今から楽しみ!
いまだにアキラ先輩が眼鏡を取った顔を見ると息が苦しくなるくらいドキドキしちゃうけど、それ以外で困ってることもないかな?
部活がない日は、カンナの吹奏楽も部活がなければ一緒に遊んだり勉強したり。
それ以外は普通に家で休んだり。
そんな普通の中学生活。
それが続くと思ってた……。
***
四月も中ごろのある夜。
深夜に目が覚めちゃってのどがカラカラだったから、麦茶でも飲もうかなって二階の部屋から下りて来たんだ。
そしたらリビングにまだ電気がついてて、お父さんとお母さんの話し声がした。
何を夜ふかししてるんだろう? お父さんだって明日仕事なのに。
早く寝なくていいのかな?って思いながらダイニングの方に行こうとしたんだけど……。
「ウソだろ!?」
お父さんの大きな声に何事!?ってビックリしちゃった。
そのままつい聞き耳を立ててしまう。
「……本当よ。少なくともガンなのは確かみたい」
え? ガン?
ガンって、もしかして病気ってこと?
お母さんが最近体調悪いからって病院行ってたのは知ってるけど、まさかそんな大病だったなんて……。
お母さん、大したことないって言ってたのに。
で、でも!
ガンだからって昔みたいに死んじゃうとは限らないもんね!
早期発見できれば治る病気だったはず。
でも、そんな私の希望はすぐに聞こえてきた声に否定された。
「余命三年って言われたの」
『っ!』
私とお父さんの息をのむ音が重なる。
そんな……余命宣告までされてるの?
「とりあえず治療法とかの説明をしたいから、旦那さんと一緒に来院して欲しいって。……三日後休める?」
「あ、ああ。何とか取ってくるよ」
その後もお父さんとお母さんは何か話してたみたいだったけど、気持ちの整理がつかなかった私はゆっくり自分の部屋に戻った。
余命三年……私が高校生になるかどうかって頃にお母さん死んじゃうの?
怒ると怖いし、うるさいことばっかり言われてうんざりすることも多いけど……。
でもそれはずっといる存在だからそう思うこともあるってだけ。
幼稚園の頃から遠足には愛情たっぷりなキャラ弁を作ってくれたり、どんなことでも頑張れたときにはめいいっぱいほめてくれるお母さん。
そのお母さんがいなくなっちゃうの?
死んじゃうの?
「っ! やだよぉ……」
部屋に戻ってベッドに入ったら、色々とこみ上げてきて涙があふれた。
頭の中ではぐるぐるとお母さんとの思い出がかけめぐって、このまま夜通し泣いちゃうんじゃないかって思った。
でも、逆に泣き疲れて眠っちゃったみたい。
「――ナ! 朝よ! 起きなさい!」
お母さんに布団を引っぺがされて寝ちゃったんだって気づいた。
「お母さん?」
「おはよう。もう、いつもはこの時間には起きてくるのに……夜ふかしでもしてたの?」
「うん……ごめん。あと、おはよう」
いつも通りのお母さんの様子に、昨日聞いたことは夢だったのかなって一瞬思っちゃう。
本当かどうか聞きたかったけれど、聞いても教えてくれるかどうか……。
「ラナ? 目はれてない? 虫にさされちゃった?」
「え? あ、なんでもないよ! 冷やせば大丈夫!」
あわてた私はすぐにベッドから出て「着替えるから」ってお母さんを部屋から出した。
着替えて、一階に下りてお父さんにも「おはよう」ってあいさつする。
「ああ……おはよう、ラナ」
そのお父さんのいつものさわやかな笑顔がかげってるように見えた。
カレンダーには三日後の日にちに“母・病院”って書いてあって……。
やっぱり昨夜のことは夢じゃないんだなって思った。
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