21 / 29
21.女王様を愛しています。(side アルフレッド)
しおりを挟む「なぜ、本当のシアラ様では無いと思うのですか?」
シアラ様を抱きかかえ、馬に乗せる。クーズマ達デミオン国の人々が滞在する建物には、心当たりがあった。
「私には、前世の記憶があるの。」
シアラ様はポツリと呟く。
僕は馬を走らせながら反論する。
「それがなぜ、本当のシアラ様ではない理由になるのですか。ただ単純に、シアラ様の前世の記憶かもしれないでしょう。」
「でも、それなら私にシアラだった25年間の記憶があるはずよ。私にはそれがないもの。」
シアラ様は頑なだった。
だが僕にはどうしてもそれを認められない。
「嫌です。だって、もしそうなら本当のシアラ様がどこかに行ってしまったってことじゃないですか。」
「そうね。」
そんなの、絶対に嫌だ。
だって、初めてであったときからずっと、僕はシアラ様のことが好きだった。
「お願いですから、いなくならないでください。」
記憶を無くしてしまうまで、僕はシアラ様を助けられなかった。本当は、もっと前にシアラ様を止められたはずなのに、僕はシアラ様が弱っていく姿をただ見ていることしかできなかった。
「そうね、、、。」
シアラ様はポツリと呟いたきり、黙り込んでしまった。
◇◇◇
「着きました。」
僕は手綱を引き、馬を止めた。
ここは、ルカドル国で最も大きい宿。外国から要人が来る際には、皆ここに泊まっている。
「ありがとう。そしたら、行ってくるわね。」
僕に手をひかれ、馬を降りたシアラ様はにっこりと笑った。
「僕も行きます。」
シアラ様は小さく首を振った。
「私一人で行くわ。アルフレッドはここで待っていて。」
なぜ、貴方はそんなにも一人になろうとするのですか。僕はただ、貴方を守りたいだけなのに。
「貴方を、守ってはいけないのですか?」
自分の声が震えているのが分かる。
シアラ様がいなくなってしまう。
シアラ様は僕の顔を覗き込むと、困った顔をした。
「泣かないでアルフレッド。違うの、私一人の方が、事が上手く運ぶかと思って、、、。」
僕は恐れている。
だって、シアラ様には僕の記憶がない。
20年以上、側にいた僕をシアラ様はあっけなく忘れてしまった。
「これ以上、貴方が遠くにいくのは嫌です。わかってください、、、!」
涙が溢れてくる。情けないことは分かっている。大の大人が好きな人の前で泣くなんて恥ずかしい。
「アルフレッド。私、、、」
シアラ様が何かを言いかけた。
また、本当のシアラじゃないと言われるんだろうか。
僕はもう何も聞きたくなくて、シアラ様を強く抱きしめた。
「貴方を愛しているんです。もう、誰にも渡したくないんです。」
◇◇◇
2
お気に入りに追加
660
あなたにおすすめの小説
いつの間にかの王太子妃候補
しろねこ。
恋愛
婚約者のいる王太子に恋をしてしまった。
遠くから見つめるだけ――それだけで良かったのに。
王太子の従者から渡されたのは、彼とのやり取りを行うための通信石。
「エリック様があなたとの意見交換をしたいそうです。誤解なさらずに、これは成績上位者だけと渡されるものです。ですがこの事は内密に……」
話す内容は他国の情勢や文化についてなど勉強についてだ。
話せるだけで十分幸せだった。
それなのに、いつの間にか王太子妃候補に上がってる。
あれ?
わたくしが王太子妃候補?
婚約者は?
こちらで書かれているキャラは他作品でも出ています(*´ω`*)
アナザーワールド的に見てもらえれば嬉しいです。
短編です、ハピエンです(強調)
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます。
婚約破棄されたら人嫌いで有名な不老公爵に溺愛されました~元婚約者達は家から追放されたようです~
琴葉悠
恋愛
かつて、国を救った英雄の娘エミリアは、婚約者から無表情が不気味だからと婚約破棄されてしまう。
エミリアはそれを父に伝えると英雄だった父バージルは大激怒、婚約者の父でありエミリアの親友の父クリストファーは謝るがバージルの気が収まらない。
結果、バージルは国王にエミリアの婚約者と婚約者を寝取った女の処遇を決定するために国王陛下の元に行き――
その結果、エミリアは王族であり、人嫌いで有名でもう一人の英雄である不老公爵アベルと新しく婚約することになった――
泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される
琴葉悠
恋愛
エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。
そんな彼女に婚約者がいた。
彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。
エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。
冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──
婚約者の妹が悪口を言いふらしていたために周りからは悪女扱いされ、しまいに婚約破棄されてしまいました。が、その先に幸せはありました。
四季
恋愛
王子エーデルハイムと婚約していたアイリス・メイリニアだが、彼の妹ネイルの策により悪女扱いされてしまって……。
婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました
hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。
家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。
ざまぁ要素あり。
【完結】美しい家庭教師を女主人にはしません、私は短剣をその女に向けたわ。
BBやっこ
恋愛
私は結婚している。子供は息子と娘がいる。
夫は、軍の上層部で高級取りだ。こう羅列すると幸せの自慢のようだ。実際、恋愛結婚で情熱的に始まった結婚生活。幸せだった。もう過去形。
家では、子供たちが家庭教師から勉強を習っている。夫はその若い美しい家庭教師に心を奪われている。
私は、もうここでは無価値になっていた。
【短編】妹と間違えられて王子様に懐かれました!!
五月ふう
恋愛
ーー双子の妹と間違えられただけなのに、王子様に懐かれてしまった。
狡猾で嫉妬深い双子の妹に、恋人との将来を奪われ続けてきたリリー。双子の妹がリリーの名前で不倫を繰り返したせいで、リリーの評判は最悪なものだった。
そんなリリーにある日運命の出会いがあった。隣国の騎士ウォリアがリリーに一目惚れしたというのだ。
優しく一途なウォリアの求愛に戸惑つつも心躍るリリー。
しかし・・・
ウォリアが探していたのはリリーではなく、彼女の双子の妹、フローラだったのだ。
※中盤から後半にかけてかなりお気楽な展開に変わります。ご容赦ください。
婚約破棄され聖女も辞めさせられたので、好きにさせていただきます。
松石 愛弓
恋愛
国を守る聖女で王太子殿下の婚約者であるエミル・ファーナは、ある日突然、婚約破棄と国外追放を言い渡される。
全身全霊をかけて国の平和を祈り続けてきましたが、そういうことなら仕方ないですね。休日も無く、責任重すぎて大変でしたし、王太子殿下は思いやりの無い方ですし、王宮には何の未練もございません。これからは自由にさせていただきます♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる