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13.騎士は女王の側にいます

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アルフレッドのことを教えてほしい。
私の言葉はアルフレッドを酷く動揺させた。

「僕のこと、ですか?」

アルフレッドが焦りが私にも伝わる。

(なんか、変なことを言ったかな?)

黒髪黒目の美青年。
シアラの兄の友人で幼馴染。
5年前からシアラに仕える騎士。
そして料理が凄く上手。

私が知っているアルフレッドの情報はこれくらい。

(自分の騎士だもん。知りたいと思うのは、当然だよね。)

「従者について、きちんと知っておくのは大事でしょう?」 

と、格好をつけて答えた。
アルフレッドはぽりぽりと頬をかいた。

「なるほど。
 なんだか少し、嬉しくなってしまいました。」

「なぜ?」

アルフレッドはにっこりと笑う。

「記憶を無くしたとはいえ、シアラ様が僕に興味を持つなんてほとんどないことでしたので。」

アルフレッドの言葉にまた少し胸が傷んだ。

「そう。」

アルフレッドは椅子を持ってきて、私の正面に座った。

「どこから、お話しましょうか?」

正面からアルフレッドが私の顔を見つめる。彼の長いまつげがよく見えた。

「最初から。出会ったところから教えてほしい。」

まだまだ私はアルフレッドについて何も知らない。

「僕は、シアラ様とシアラ様の兄のソクラに拾われた孤児でした。」

ぽつりとアルフレッドは呟いた。
 
「拾われた?」

「はい。僕は5歳のとき親に川に捨てられました。ルカドル国は昔から貧富の差が激しい国です。恐らく親は貧乏で、口減らしのために僕を捨てたんだと思います。

川で溺れ、死にかけていた僕を偶然川の麓で遊んでいたソクラ様とシアラ様が見つけてくれました。」

私はゴクリと唾を飲みのんだ。想像していた10倍深刻な話が始まったからだ。

「どこの誰とも分からない捨て子を拾ってくるなんて、と城の中は大騒ぎになったと言います。

ですが、ソクラ様とシアラ様が僕のことを必死で守ろうとしてくれた。そのおかげで僕は幸運にも、ルカドル城で育つことになりました。」

私は大きく息を吸った。

「すごい、出会いね。」

アルフレッドはにっこりと笑う。

「僕の人生最大の幸運です。

ソクラ様は僕と本当の友人のように仲良くしてくれました。昔からよく三人で遊んでいたんです。

昔のシアラ様は泣き虫で、よく転ぶのでいつも目が離せませんでした。今もそれは変わりませんが。」

そう言ってアルフレッドは一度言葉を区切った。
 
「17歳になった僕は正式に、ソクラ様の騎士となりました。

ですが、その3年後ルカドル国で起こった大災害の時にソクラ様は命を落とされたのです。」

シアラの人生を変えた大災害。
父親やソクラが生きていたのなら、シアラが苦しむことは無かったに違いない。

「僕は、ソクラ様を守れなかった。

 だからこそ、シアラ様。僕は貴方を絶対に守ると決めたのです。」

アルフレッドからは、悲壮な覚悟を感じた。

(私は、シアラじゃない。)

アルフレッドは真っ直ぐに私を見つめていたけれど、きっと見ているのは私じゃない。

私はぎゅっと両手を握った。

「ごめんね、アルフレッド。」

「なぜ、謝るのですか。
 シアラ様を守ることは僕の生きがいであり、希望なんですよ。」

「ごめんね。」

私はもう一度、そう言った。

(アルフレッドのためにも、本物のシアラがこの世界に戻ってこられますように。)

心からそう思う。

(前の世界の私は死んでしまったから、私に戻る場所はないけど、それでもまあいいや。)




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