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11.皇太子は結婚をお望みです
しおりを挟むアルフレッドにつれられて、城の正門に行く。そこには城の入り口に大柄な男性が顔を真っ赤にして立っていた。
「あの方がデミオン国王です。」
と、アルフレッドが耳元で囁く。
「俺の父さんだ。」
と、呑気に言うクーズマ。
(貴方のせいでこうなってるんでしょうが!!)
私はぎゅっと拳を握りしめる。
「お久しぶりです。デミオン国王様。」
慎重に頭を下げるも、デミオン国王は私を一方的に怒鳴りつけてきた。
「息子をたぶらかすのはやめてもらおうか!シアラ女王!!どういうつもりでこんなことをするんだ?!」
大勢の兵を連れたデミオン国王の顔は、クーズマによく似ている。
(何だこのジジイは。)
思わずイラッとする。
「お言葉ですが、クーズマ様は私の結婚式を祝うために来てくださっただけです。クーズマ様をたぶらかすつもりは全くありません。」
「よくもまあ減らず口を!!」
デミオン国王から飛んでくるつばを必死で避ける。
(怒るなら貴方の息子に怒ってください!)
「父さん。シアラを虐めるのはやめてくれないか。彼女は何も知らないんだ。」
クーズマがデミオン国王に軽い口調で声をかける。
「そんなわけあるか!!お前たちは結婚の約束をしているのだろう?!」
と、デミオン国王が叫ぶ。
(は?誰と誰が結婚の約束?)
わけが分からなくて、デミオン国王とクーズマを交互にみる。
「まだだよ!!俺はこれから、シアラにプロポーズしようと思ってたんだから、邪魔しないでくれ!!」
クーズマの声は、城に響き渡った。
「・・・え?」
「・・・は?」
私とデミオン国王は、同じタイミングで呟いた。
「ちょっと待て。クーズマ。お前、、、シアラ女王の二人目の旦那になると言って、国を出ていったよな?」
デミオン国王は頭に手を当てため息混じりに言った。
「ああ。シアラは来週結婚するらしいからな。順番的に、俺が二番目になるのはしょうがない。」
なぜデミオン国王があれほど怒っていたのか納得が言った。もうすでに結婚式をあげる予定の他国の女王と、自分の息子が結婚するというから怒ったのだ。
女王の一妻多夫制が認められているのだろうが、皇太子が女王の夫の一人になるなんて、あり得ない。
(阿呆が、、、。)
「冗談はよしてください!私はクーズマ様と結婚するつもりはありません!」
私は強くデミオン国王に訴えた。
デミオン国王は疲れた顔でよろよろと後ろに下がる。
「なんでだよ?!」
と、クーズマは反論する。
「な!逆になんで結婚できると思ってたんですか!」
クーズマが目を瞬いた。
「俺と結婚したら、ルカドル国の借金を返せるし、国を復興させれるかもしれないぞ?」
平然とクーズマが言う。
(ゔっ。)
私は胸を押えた。クーズマが持つ圧倒的な財力が魅力的じゃ無いと言えば嘘になる。
「で、ですが、、、クーズマ様には婚約者がいらっしゃるんでしょう?」
「シアラと結婚するために、婚約破棄してきた。」
クーズマはにっこりと笑う。
頭がクラリとした。だがそれはデミオン国王も同様だったようだ。
「シアラ女王。いきなり怒鳴りつけてすまなかった。一度、この城を退出させてもらう。」
デミオン国王は私に小さく頭を下げた。
訳もなく怒鳴られたばかりだが、同情してしまう。
(大変な息子を、お持ちになられましたね。)
「ほんとだよ。さっさと帰れ!」
というクーズマの首元を、デミオン国王が掴み上げた。
「お前もだ!!クーズマ!!
話はしっかり聞かせてもらうぞ!!」
そうしてデミオン国の人々は嵐のように帰っていったのだった。
「ねぇ、アルフレッド。どういうこと?」
「僕にもさっぱり分かりません。」
そう呟くアルフレッドの横顔は寂しそうだった。
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