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第九話:求婚の拒絶
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「いいえ。セラ様でなくてはならないのです。貴方は幸運にも、ロマリア王子の妃として選ばれたのですから。」
カイルはそう言って、セラを見つめた。エドワーズはカイルの隣で黙っているだけだ。まるで、自分の仕事は終わった、と言わんばかり。セラはカイルから求婚を受けているような錯覚を覚えた。
「私の魔力を必要としているだけでしょう。」
セラは無表情のまま言い返す。頭の悪い王子様に、絶対に結婚するつもりはないと気づいてもらわなくては。
「セラ様の魔力は、ロマリア国の永久の繁栄のために、聖女デュナウ様から授けられたものです。セラ様は王子エドワーズの妃となる運命なのですよ。」
穏やかな表情を浮かべたまま、カイルは伝える。セラは小さく顔をしかめた。
(”運命”なんて言葉……大嫌い。)
もしも定められた運命の元で生まれてきたというならば、セラは絶対に神様を許さないだろう。セラほど残酷な運命を背負って生まれてきたものはいない。
「さあ、エドワーズ様。もう一度、求婚の言葉をおっしゃってください。」
カイルに目配せをされて、エドワーズが立ち上がる。いつの間にかエドワーズの手には、バラの花束が握られている。きっとカイルが魔法で出現させたに違いない。
(王子様はカイルの操り人形みたいだわ。)
「セラ・スチュワート。」
さっきより少し恭しくエドワーズがセラの名前を呼んだ。それから赤らんだ顔でセラの顔を見つめる。
「僕の妃になってくれないか?」
セラはエドワーズを見つめて立ち上がった。心の中は冷え切っている。
「お断りいたします。」
「え……?」
エドワーズが戸惑った声をあげたが、セラは気にしない。
「私の答えは何があっても変わりません。ロマリア王子の妃になるつもりはありませんわ。お引き取りください。」
セラはドアまで歩いていき、扉を開けて退出を促した。
「なぜだ……?!僕はロマリア国の王子だぞ!」
エドワーズの言葉にセラは軽蔑した視線を向ける。
「だから何だというのですか?」
「は……。」
「私は王子の妻となることに、まったく価値を感じていませんから。」
ロマリア王家への無礼となったってかまわない。今はこのポンコツ王子に腹を立たせることが優先だ。これだけ馬鹿にしたのなら、王子は諦めて違う女性を捜すだろう。
「王子である僕を侮辱するのか?!」
エドワーズは声を荒げて、セラに詰め寄った。
「正直な気持ちを言っただけです。王子様。」
そう言うとセラは小さく笑って、魔法を唱えた。神殿に帰って、フルーツを食べたおかげで、魔力が少し戻っている。あまり沢山の魔力は使えないが、ポンコツ王子をからかうくらいの魔力は残っている。
「ううわああああっ!何をするっ!」
無様にエドワーズが空中に浮いた。浮かされたエドワーズは足をばたつかせている。
「おやめください、セラ様。エドワーズ様は、ロマリア国の大切な第一王子様なのですから。」
カイルは怯えるエドワーズを呆れた目で見つめる。それから魔法を唱え、セラの浮遊魔法を妨害した。妨害魔法でセラの魔法が弱まる。
「あ……!」
「うわわあああっ!」
セラの魔力が弱まったせいで、エドワーズが地面に落とされた。浮かせた高さは、セラの身長より少し高いくらいだから重大な怪我ではないだろう。だが、受け身を取れず思い切りしりもちをついたエドワーズ。彼は痛みで涙目になっていた。
「痛いぞ!おいっカイル、何をするっ!」
どうやらエドワーズは、カイルのせいで地面に叩きつけられたとわかっているようだ。カイルから雑な扱いを受けるのが初めてではないのだろう。
「大げさに痛がるふりをするのはやめてください、エドワーズ様。」
カイルは腰を抑えるエドワーズを横目でちらりと見ただけで、すぐにセラに向き直った。
「求婚を受け入れてくださいませんか?」
カイルは無表情でセラに尋ねた。セラは一歩後ずさる。魔力が少なくなっているとはいえ、セラの魔法がカイルに破られてしまったのだ。
「何を言われようとも、私は王子と結婚するつもりはありません。」
セラは素早く魔法を唱えて、エドワーズの傷を治療した。ちょっと脅そうとしただけで、傷つけようと思ったわけではない。実際にエドワーズを落っことしたのは、カイルの魔法のせいだけど。
「ん?」
突如痛みがなくなったエドワーズはきょとんとした顔をした。
「セラ様はお優しい方ですね。ですが、そんな貴方だからこそ、エドワーズ様の求婚を断ることができないのですよ。」
ユリウスは低い声でセラを脅した。
(どういうこと…‥‥?)
カイルはそう言って、セラを見つめた。エドワーズはカイルの隣で黙っているだけだ。まるで、自分の仕事は終わった、と言わんばかり。セラはカイルから求婚を受けているような錯覚を覚えた。
「私の魔力を必要としているだけでしょう。」
セラは無表情のまま言い返す。頭の悪い王子様に、絶対に結婚するつもりはないと気づいてもらわなくては。
「セラ様の魔力は、ロマリア国の永久の繁栄のために、聖女デュナウ様から授けられたものです。セラ様は王子エドワーズの妃となる運命なのですよ。」
穏やかな表情を浮かべたまま、カイルは伝える。セラは小さく顔をしかめた。
(”運命”なんて言葉……大嫌い。)
もしも定められた運命の元で生まれてきたというならば、セラは絶対に神様を許さないだろう。セラほど残酷な運命を背負って生まれてきたものはいない。
「さあ、エドワーズ様。もう一度、求婚の言葉をおっしゃってください。」
カイルに目配せをされて、エドワーズが立ち上がる。いつの間にかエドワーズの手には、バラの花束が握られている。きっとカイルが魔法で出現させたに違いない。
(王子様はカイルの操り人形みたいだわ。)
「セラ・スチュワート。」
さっきより少し恭しくエドワーズがセラの名前を呼んだ。それから赤らんだ顔でセラの顔を見つめる。
「僕の妃になってくれないか?」
セラはエドワーズを見つめて立ち上がった。心の中は冷え切っている。
「お断りいたします。」
「え……?」
エドワーズが戸惑った声をあげたが、セラは気にしない。
「私の答えは何があっても変わりません。ロマリア王子の妃になるつもりはありませんわ。お引き取りください。」
セラはドアまで歩いていき、扉を開けて退出を促した。
「なぜだ……?!僕はロマリア国の王子だぞ!」
エドワーズの言葉にセラは軽蔑した視線を向ける。
「だから何だというのですか?」
「は……。」
「私は王子の妻となることに、まったく価値を感じていませんから。」
ロマリア王家への無礼となったってかまわない。今はこのポンコツ王子に腹を立たせることが優先だ。これだけ馬鹿にしたのなら、王子は諦めて違う女性を捜すだろう。
「王子である僕を侮辱するのか?!」
エドワーズは声を荒げて、セラに詰め寄った。
「正直な気持ちを言っただけです。王子様。」
そう言うとセラは小さく笑って、魔法を唱えた。神殿に帰って、フルーツを食べたおかげで、魔力が少し戻っている。あまり沢山の魔力は使えないが、ポンコツ王子をからかうくらいの魔力は残っている。
「ううわああああっ!何をするっ!」
無様にエドワーズが空中に浮いた。浮かされたエドワーズは足をばたつかせている。
「おやめください、セラ様。エドワーズ様は、ロマリア国の大切な第一王子様なのですから。」
カイルは怯えるエドワーズを呆れた目で見つめる。それから魔法を唱え、セラの浮遊魔法を妨害した。妨害魔法でセラの魔法が弱まる。
「あ……!」
「うわわあああっ!」
セラの魔力が弱まったせいで、エドワーズが地面に落とされた。浮かせた高さは、セラの身長より少し高いくらいだから重大な怪我ではないだろう。だが、受け身を取れず思い切りしりもちをついたエドワーズ。彼は痛みで涙目になっていた。
「痛いぞ!おいっカイル、何をするっ!」
どうやらエドワーズは、カイルのせいで地面に叩きつけられたとわかっているようだ。カイルから雑な扱いを受けるのが初めてではないのだろう。
「大げさに痛がるふりをするのはやめてください、エドワーズ様。」
カイルは腰を抑えるエドワーズを横目でちらりと見ただけで、すぐにセラに向き直った。
「求婚を受け入れてくださいませんか?」
カイルは無表情でセラに尋ねた。セラは一歩後ずさる。魔力が少なくなっているとはいえ、セラの魔法がカイルに破られてしまったのだ。
「何を言われようとも、私は王子と結婚するつもりはありません。」
セラは素早く魔法を唱えて、エドワーズの傷を治療した。ちょっと脅そうとしただけで、傷つけようと思ったわけではない。実際にエドワーズを落っことしたのは、カイルの魔法のせいだけど。
「ん?」
突如痛みがなくなったエドワーズはきょとんとした顔をした。
「セラ様はお優しい方ですね。ですが、そんな貴方だからこそ、エドワーズ様の求婚を断ることができないのですよ。」
ユリウスは低い声でセラを脅した。
(どういうこと…‥‥?)
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