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どうせ転生するんなら、愛されヒロインが良かった。

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「起きてください!


 お嬢様!!


 もうとっくに朝ですよ!」



知らない男性の声がする。




おかしいな。





私、浅野美奈は

彼氏いない歴24年の

しがないOLのはずなんだけど。




お嬢様、て。


このあいだまでやっていた

恋愛RPGじゃあるまいし、、。



「もう朝ごはんの用意は


 できておりますよ!



 ジュリエッタお嬢様!」



そうそう、

主人公のジュリエッタは

一途な良い子なんだけど、



婚約者がくそ男で、、て、

途中でこっぴどく振られて

婚約破棄されるんだよな、、て。






え?



私は

ぱっちりと目を

開けた。




そこにいたのは、


「おはようございます。


 遅いお目覚めですね、


 ジュリエッタお嬢様。」


執事、レオリオ、

だったはず、、。



確か、

主人公ジュリエッタを

助けるポジションの、、。




「貴方、レオリオ、よね?」


私が尋ねると、

レオリオは首をかしげた。



「そうですが、、、。


 急にどうしたんですか。


 頭でも打ったんですか?」 




私はぶんぶんと

首を振った。




「なんでもない。」



信じられない!




私はゲームの世界の主人公に

転生したんだ。



てゆか、

どうせ転生するんなら、


もっとお気に入りの

ゲームの主人公になりたかった。



私は

イライラし過ぎて、


このゲームを、

途中でやめている。



主人公ジュリエッタは、

婚約者のタナトスに婚約破棄された後

可哀想なくらい転落人生を送る。



私はそれに耐えかねて、

エンディングまでいけなかった。






「どうしたんですか?


 阿呆っぽい顔をして。」


と、執事のレオリオ。



この毒舌執事だけは、

結構好きだったけどね。



「今日ってさ、


 何日だっけ、、。」



婚約破棄が宣告されるのは、

10月1日。



そしてその日が、

ジュリエッタの不幸が

始まる日になる。




この様子だと、

まだ婚約破棄は

されてなさそうだよね。



「今日は、

 9月21日ですよ。」 



婚約破棄まで、

あと10日か、、、!




それならまだ、

間に合うかもしれない。



「レオリオ、


 貴方にちょっと手伝ってほしい


 ことがあるの、、!」




------------------------------------




「泥棒ごっこですか?」

   

僕、レオリオは

サングラスに帽子を深く被って、


息を潜めるお嬢様ジュリエッタに

声をかけた。



もう、深夜1時を回ろうとしている。



にもかかわらず、

お嬢様は


全く帰ろうとしない。



「いいえ!



 これは私の人生をかけた



 戦いなのよ!」



そう言って

お嬢様は


婚約者であるタナトス様の

家を睨みつけた。



とうとうジュリエッタ様が

おかしくなってしまった。



元々変わった人ではあるのだが、
 
数日前から

特に様子がおかしい。




「今日、


 タナトスが


 国宝を盗む日なの!



 その証拠を


 なんとしても掴まないといけないの!」



国宝をですか、、。


タナトス様が

国宝を盗む理由がよくわからないし、

そもそも、



「なぜ、


 タナトス様が、

 国宝を盗むと思うのですか?」



流石に、

婚約者のことを

疑いすぎではないか?



まあ、

僕はタナトスのことが

全然好きじゃないんだけど。



「分かるから分かるの!



 今に見てなさい。


 タナトスは


 国宝を盗んだ罪を


 私に押し付けようとするんだから!」




「はぁ、、」



ジュリエッタ様は

昔から夢見がちでおられる。



「あ!

 ほら!!!」



ジュリエッタ様が、

指を指す先には、



「嘘だろ、、。」 



国宝である聖剣を

屋敷に運び込もうとする男共と


それを向かい入れるタナトスがいた。




「ほら!!


 写真撮って!!



 証拠よ、証拠!!」



言われるままに、

写真を撮った。



ジュリエッタ様は

予知能力でも

手に入れられたのだろうか?




なんにせよ、

本当に面白い人だ。





--------------------------------------



「国宝である聖剣が


 無くなったですって?!」



私、元浅野美奈こと

ジュリエッタは、

父の言葉に大げさに反応してみせた。




さて、

勝負だ、

タナトス!



今日は10月1日。



ゲームの中の私が、

婚約破棄され、


そして泥棒として

無実の罪をきせられる日。




私は運命にだって

ちゃんと逆らってやるから!




「王が必死に探しているそうだよ。



 ジュリエッタも


 何か気になることがあれば



 私に言いなさい。」




はーい、パパ。




ゲーム本来の道筋なら、

タナトス達の手によって


私の部屋に運び込まれてる頃だ。




だが、

そうはさせない。



頼んだわよ、

レオリオ。





「お嬢様。」



レオリオ。



「どう?」


レオリオはにっこりと笑った。



「お嬢様の


 おっしゃるとおりに。」



よし!

よくやったレオリオ!



あとはラスボスを

待ち受けるのみだ。



「タナトス様が、


 いらっしゃいました。」


メイドに引き連れられて、

私の婚約者であるタナトスが

家にやってきた。




「やぁ、


 ジュリエッタ。



 実は君の


 良くない噂をきいたんだが、、?」



さぁ、始まった。



「あら、


 ごきげんよう。タナトス様。



 良くない噂?



 なんでしょう。



 全く心当たりがありませんわ!」




私はタナトスを見つめた。



うーん、

始めたときから、

タナトスのビジュアルは

あまり好きじゃなかったけど、


実際に見ても


あまり惹かれないわね。



「実は、



 国宝に関することなんだ。



 昨日、

 聖剣が盗まれたことは



 知っているかい?」


白々しいやつめ。


あんたが盗んだんでしょうが。




「ええ、


 お父上から先程伺いました。」




捕まりそうになったからって、

婚約者に罪を被せるなんて最低。



「そう。


 実は昨日の夜


 君の家に国宝を運び込まれた、


 という噂があるんだ。」



普通に考えたら、

こんなうら若き乙女が


国宝なんかに


興味持つわけないと思うんだけど。



「僕はそんな噂、



 信じてないんだ。



 だからこそ、



 君の無実を証明したい。



 君の部屋を


 少し見せてもらっても



 いいかい?」



ほんとは嫌だけど。



「どーぞ。」



タナトスはにやりと笑った。




残念だけど私の部屋には、

貴方の望むものは


何も無いわよ。




------------------------------------




「こ、これは、、、!」


部屋に入った

タナトスは

驚きの声をあげた。





そこにいたのは、

ぼこぼこにされ、

縄で縛られた

二人の男と、


その側に落ちている聖剣だった。





ふー、疲れた疲れた。




僕、レオリオは

壁に寄りかかって一息ついた。




ジュリエッタ様も、

私が万能だと思って、

なんでも頼んでくるからな。



「この男たちが、


 不法侵入し、



 国宝を置いていこうとするので、



 こうして捕まえた次第です。」




僕はタナトスを

眺めた。



タナトスは

拳を握りしめて

僕を睨みつけている。



怒るなら

ジュリエッタ様に怒ってくださいよ。




ジュリエッタ様は、

縛られた男たちに向って、

尋ねた。



「貴方達、


 こんなことをするなんて、、!



 誰に頼まれたの??」




「あいつ、タナトスだ!



 あいつに頼まれて


 これを運んだだけだ!」


男どもは答えた。



「て、言ってるけど?」

ジュリエッタ様は

タナトス様を振り返る、




ずいぶん楽しそうですね、

お嬢様。



「こいつらは、、


 嘘をついている!!



 ジュリエッタ、


 お前が、

 俺に罪をきせようとしてるんだ!!」


ジュリエッタお嬢様は、


にやりと笑うと


懐から取り出した写真を


ぱあっと


投げた。



ひらひらと、

昨晩撮った証拠写真が広がる。




「これが動かぬ証拠よ!



 観念しなさい!!」



タナトスは

あ然として、



ガックリとその場に座り込んだ。


「なぜ、


 分かった?!」



お嬢様は

にっこりと笑った。



「秘密!」



その秘密、

僕にも教えてくれませんか?



------------------------------------



そしてその後、

タナトスは

国宝を盗んだ罪で


逮捕され、


そのまま牢屋に収監された。


ここに

少し早めの

ハッピーエンドが訪れたのだった。




美奈があのままゲームを続けていれば、


レオリオが、

タナトスの罪を暴いたあと、


ジュリエッタと

結婚する結末になったのだが、


それはまた別の話である。



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