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9 助けてあげたいよ

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side メル

「アレックス、、、。」

リーシャと共に去っていくアレックスを見ていると胸が苦しかった。

まるで、昔の私みたいだ。お前のせいだと責められ、それでもなにも言えずに最後は殺されてしまった。私の夫も恐らく心の病だった。

(助けてあげたい。)

どうしても、そう思わずにはいられなかった。誰のことも愛したくないし、愛されたくない。だから、誰とも深く関わりたくなかった。

だけど、アレックスはもう私の大切な友達だ。それに、あまりにも過去の自分に似すぎていて、放っておくなんてできなかった。

(助けてあげたいよ、アレックス。)

その日の夜、私は久しぶりに前世、城川ひろみだった頃の夢を見た。

   ◇◇◇

「お前のせいだ!!ひろみ!!お前のせいで俺はアルコール依存症になったんだ!!」

夫であるトモヒロの口癖だった。

常に罵詈雑言を浴びせられ、友人との外出も全て制限された。さらに、トモヒロはアルコール依存症で、お酒を飲むと手がつけられなくなった。今から思うとさっさと逃げ出していれば良かったんだと思う。

「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」

だけど、当時はもう洗脳されていて、なぜだが自分が悪いと思いこんでいた。そして、私は暴れるトモヒロを止めようとしてそのまま殺されてしまったのだった。

私には負い目があった。トモヒロが一番辛いときに側にいれなかったという負い目。彼の母が事故で突如亡くなってしまったのは、大学受験の一ヶ月前のことだった。勉強になにも手がつかなくなってしまったトモヒロに、私は構ってられず、ひたすら勉強をしていた。

その当時、もうトモヒロと付き合っていたのに私は自分の受験を優先したのだ。結局トモヒロは立ち直ることができず、大学受験に失敗しフリーターになった。そこから、トモヒロの人生はおかしくなり始め、アルコールに逃げるようになったのだった。

「お前のせいだ!!」

その言葉は、呪いだった。

私をビール瓶で殴り倒したトモヒロは、死にかける私を抱きしめて叫んだ。

「こんなつもりじゃなかった、、、!死なないでくれ!!ひろみ!!俺はお前を愛してるんだ!!」

愛してる?
愛してるなら、何をしてもいいの?

それなら私は、二度と愛されたくないし、誰のことも愛したくないわ。


  ◇◇◇
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