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4 メイドなんかいらないんですよ!
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side アレックス
東宮殿、アレックス王子の部屋。
「ミック!今日の料理はずいぶん美味しいな!誰が考案したんだ?」
俺は料理長ミックに尋ねた。トマトソース味のご飯に、トロトロの卵。こんな料理を今まで食べたことが無い。
「メル、という最近入った新入りのメイドですよ。この子がオリジナリティに富んだ料理を何でも思いつくのです。」
ミックは嬉しそうに答える。
「メル、、、?誰に担当しているメイドだ?」
「おかしいですね。最近、アレックス様付きのメイドになったと聞いているのですが、、、?」
どういうことだ?俺は自分に仕える使用人の名前を全員覚えているのだが、その中にメル、という人間はいなかった。
「まさか、、、?」
婚約して以来、一度しか会っていないメル・サイモンの顔が頭に浮かんだ。生粋の貴族の娘であるメルが料理をするなんて、有りうるのか、、、?
とにかく、一度メル・サイモンが住む屋敷にいって事実を確認する必要がありそうだ。
メル・サイモン。婚約した当日に一度会ったきりでの婚約者。もうとっくに実家に帰っていると思いこんでいた。自分の婚約者になれば、リーシャから酷い嫌がらせを受けることは分かっていた。だからこそ、早々に婚約破棄してくれるよう、婚約者には近づかないようにしていたのだ。
(俺の勘違いだと良いのだがな。)
愛されないことが、素晴らしいことだ。そう言っていたメルの顔が思い浮かぶ。あの美しい女性が、誰からも愛されないなんてことがあるわけがないと思うのだが、、、。
side メル
「メル、、、なぜそのような格好をしているんだ?」
「えー、気分転換ですよ。アレックス様こそ、なぜこちらに、、、?」
それはいつもどおりの昼下り。私がメイド服姿でクッキー作りをしていると、突然アレックスが現れた。
私のメイド服姿をみて、目を丸くしている。私に会いに来ることなんて今まで一度もなかったから、完全に油断していた。
「ミックから、オムライス、という料理を考案したのが、"メル"というメイドだと聞いたんだ。もしやメルではないかと、聞きに来たんだよ。」
まさかミックじいちゃんが、私の名前を王子に伝えるなんてね。偽名を使っておけば良かった。メル、なんてよくある名前だからだいじょうぶだろうと、油断していたのだ。
「私では無いですよ?私は貴族の娘。料理なんてできるはずないじゃ無いですか~。」
とりあえず、笑って誤魔化したい。アレックスは私に興味があるわけではないだろうから、とにかく早々にここを立ち去ってもらおう。
「だが、それはクッキーだろ?ずいぶん綺麗にクッキーを作っているが?」
「これは、えーと。クッキー作りは今、貴族の女性の間でも流行っているのですよ!」
何でこんな日に限って、屋敷で料理してたんだろう。普段は基本的に厨房で料理をしているのだが、今回はお菓子作り。あまり長い間厨房に入り浸っていると、怪しまれるだろうと思い、食材を屋敷に持ち込んだのだ。
「怪しいな。それに、メルのメイドはどこだ?見たところ、メルの他に誰もいないんだが、、、?」
「えっと、、、今日は皆さんにお休みを出しているのですよ!」
「全員同時に、か?」
もう、疑り深い男め。私を放っといてくれ!
「はい!」
私は力強くうなずいた。もう、二度と帰ってこないお休みではあるけどね。
「主人を残して全員が休むなんてことがあってはならないことだな。後で注意しておく必要がある、、、。」
だめだめ。罪のないメイドさんたちが、怒られるようなことはあってはならない。しょうがないから、素直に言うしかないか。
「みんな辞めたんですよ!」
「え?」
「しょうがないじゃないですか。リーシャが私のメイドに嫌がらせするんですもん!みんな嫌になって辞めたんですよ!!」
◇◇◇
東宮殿、アレックス王子の部屋。
「ミック!今日の料理はずいぶん美味しいな!誰が考案したんだ?」
俺は料理長ミックに尋ねた。トマトソース味のご飯に、トロトロの卵。こんな料理を今まで食べたことが無い。
「メル、という最近入った新入りのメイドですよ。この子がオリジナリティに富んだ料理を何でも思いつくのです。」
ミックは嬉しそうに答える。
「メル、、、?誰に担当しているメイドだ?」
「おかしいですね。最近、アレックス様付きのメイドになったと聞いているのですが、、、?」
どういうことだ?俺は自分に仕える使用人の名前を全員覚えているのだが、その中にメル、という人間はいなかった。
「まさか、、、?」
婚約して以来、一度しか会っていないメル・サイモンの顔が頭に浮かんだ。生粋の貴族の娘であるメルが料理をするなんて、有りうるのか、、、?
とにかく、一度メル・サイモンが住む屋敷にいって事実を確認する必要がありそうだ。
メル・サイモン。婚約した当日に一度会ったきりでの婚約者。もうとっくに実家に帰っていると思いこんでいた。自分の婚約者になれば、リーシャから酷い嫌がらせを受けることは分かっていた。だからこそ、早々に婚約破棄してくれるよう、婚約者には近づかないようにしていたのだ。
(俺の勘違いだと良いのだがな。)
愛されないことが、素晴らしいことだ。そう言っていたメルの顔が思い浮かぶ。あの美しい女性が、誰からも愛されないなんてことがあるわけがないと思うのだが、、、。
side メル
「メル、、、なぜそのような格好をしているんだ?」
「えー、気分転換ですよ。アレックス様こそ、なぜこちらに、、、?」
それはいつもどおりの昼下り。私がメイド服姿でクッキー作りをしていると、突然アレックスが現れた。
私のメイド服姿をみて、目を丸くしている。私に会いに来ることなんて今まで一度もなかったから、完全に油断していた。
「ミックから、オムライス、という料理を考案したのが、"メル"というメイドだと聞いたんだ。もしやメルではないかと、聞きに来たんだよ。」
まさかミックじいちゃんが、私の名前を王子に伝えるなんてね。偽名を使っておけば良かった。メル、なんてよくある名前だからだいじょうぶだろうと、油断していたのだ。
「私では無いですよ?私は貴族の娘。料理なんてできるはずないじゃ無いですか~。」
とりあえず、笑って誤魔化したい。アレックスは私に興味があるわけではないだろうから、とにかく早々にここを立ち去ってもらおう。
「だが、それはクッキーだろ?ずいぶん綺麗にクッキーを作っているが?」
「これは、えーと。クッキー作りは今、貴族の女性の間でも流行っているのですよ!」
何でこんな日に限って、屋敷で料理してたんだろう。普段は基本的に厨房で料理をしているのだが、今回はお菓子作り。あまり長い間厨房に入り浸っていると、怪しまれるだろうと思い、食材を屋敷に持ち込んだのだ。
「怪しいな。それに、メルのメイドはどこだ?見たところ、メルの他に誰もいないんだが、、、?」
「えっと、、、今日は皆さんにお休みを出しているのですよ!」
「全員同時に、か?」
もう、疑り深い男め。私を放っといてくれ!
「はい!」
私は力強くうなずいた。もう、二度と帰ってこないお休みではあるけどね。
「主人を残して全員が休むなんてことがあってはならないことだな。後で注意しておく必要がある、、、。」
だめだめ。罪のないメイドさんたちが、怒られるようなことはあってはならない。しょうがないから、素直に言うしかないか。
「みんな辞めたんですよ!」
「え?」
「しょうがないじゃないですか。リーシャが私のメイドに嫌がらせするんですもん!みんな嫌になって辞めたんですよ!!」
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