【完結】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。

五月ふう

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3 こっそり料理するのは楽しいですね

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「お!メルちゃん!今日は何を作るんだい?」

厨房に行くと、料理長のミックじいちゃんが私に気さくに話しかけてくれた。自分で食糧を調達するのはなかなか難しいので、この厨房に来るようにしている。ここは東宮殿共通の厨房。ミックじいちゃんはアレックスの料理担当で腕は確かだ。

「今日はねぇ、オムライス、ていう料理を作ろうと思うよ。」

「オムライス、、、?また聞いたことが無い料理だがきっと美味しいんだろうな。」

ミックじいちゃんが目を輝かせている。また味見させてもらおうとしてるな、ミックじいちゃん。まあ、ミックじいちゃんの驚く顔が楽しみだから良いんだけどね。

(ああ、楽しいな。)

自分で料理を作るようになってから、一週間が経ったが、生活はますます快適になった。これまでのように動きづらいドレスは辞め、メイド服を来て一日を過ごしている。

「そういえば、ついこの間来たアレックス様の新しい婚約者様は、またいなくなっちまったなぁ。」

とミックじいちゃんが言った。私はここで、アレックスの婚約者ではなく、アレックス付きのメイドと名乗っている。私のメイドは皆辞め、婚約者である私自身がメイドの格好をしているので、みんな婚約者は逃げ出したと思っているのだろう。

「また?そんなにすぐにいつもいなくなっちゃうの?」

まあ、初日にあんなこと言われたら、普通の婚約者さんはここを出ていくよね。なんとかここに残ったとしても、愛人さんの強烈な嫌がらせが待ってるわけだし。

「ああ。どうせ全部、リーシャのせいさ。アレックス様もなんであんな女をいつまでも図に乗らせておくんだか、、、。」

リーシャ、とはアレックスに囲われている愛人のことだ。リーシャは東宮殿の使用人に酷く嫌われている。私はまだリーシャの姿を直接見たことはないが、その悪評だけは散々耳にした。

「リーシャって、何者なの?」

ピーマンを炒めながら、ミックじいちゃんに尋ねる。ミックじいちゃんは東宮殿で働いて長いらしく、色々事情を知っているのだ。

「あの女は、もともとアレックス様付きの使用人の娘でなぁ。アレックスとリーシャは幼馴染、とも言える関係だな。ただアレックス様は真面目な方だし、本来は愛人を囲うような人ではないと思うんだが、、、。」

ふむふむ。幼馴染、ね。甘酸っぱくて、嫌いな言葉だ。前世で私を殺した夫も、私の幼馴染であった。

「それだけ、アレックス様は愛人を愛してるんですね。」

ミックじいちゃんは手を止めると、真剣な顔で言った。

「そうは思わんな、、、。アレックス様とリーシャには、ちょっと複雑な事情があってな、、、。」

「事情?」

「詳しくは話せんが、、、わしは誰かがアレックス様を助けてくれるのを待っておるのだよ。」

事情があるにしろ、あの女の暴挙を放っておくのはどうかと思うけどね。一生、結婚できませんよ。アレックス王子様。まあ、私には関係のない話だけどね。

「さあ!できたよ。ミックじいちゃん!」

そんなことを話している間に、オムライスが完成した。久しぶりのオムライスに胸が高まる。実家のサイモン家もお金持ちではあるのだが、なかなかお米が手に入らずオムライスを作れなかったのだ。だが流石ここは王子の厨房、何でも食材はそろっている。オムライスを一口食べたミックじいちゃんが目を見開いて私に尋ねた。

「上手い!!レシピを教えてくれ、メルちゃん!」

おやすいごようですよ。ミックじいちゃん。

まさか、このときレシピを教えたことで、私の平穏が崩れるとは思っていなかった。



  ◇◇◇
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