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5.新しい友達ができました

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時は戻って、私、シエリはというと。


「どうしよ・・・。」

サイラスの母に家から追い出され、途方に暮れていた。
ニューナとアルフ様は後二週間はザルトル国に帰ってこないし、サイラス様もいつ帰ってくるかわからないし・・・。

ああ、どうしよう。頼る人がいない。

「はは。」

私は乾いた声で笑った。
地面には義母様が投げたお金とカバンが転がっている。

あんまりにも、不用心すぎるな・・・。
ゆっくりと立ち上がり、カバンとお金を拾い上げた。もうすっかり日は沈み、あたりは暗くなっている。義母様からのお金を使えば宿に泊まれるだろうけど・・・どうしてもこのお金は使いたくなかった。

「ふぅぅぅ。」

立ち上がると、涙がぽろぽろと零れてくる。胸が締め付けられるような痛み。乱暴に涙をぬぐって、私は歩き出した。

サイラス様がいる隣町に行こう。義母の言いなりになって、自分の国に帰るつもりはない。私はサイラス様を愛してる。誰になんと言われたって、私は彼と一緒にいたいんだ。

「だいじょうぶよ・・・」

私は自分に言い聞かせる。

隣町リンドンには馬を走らせれば二時間、歩いても半日くらいでつけるはずだ。朝、向こうの街についてサイラス様を探そう。

夜、一人で歩くのは不安だけれど、リンドン国までの道には街灯が経っていて、夜でも人の行き来がある。ひたすらまっすぐ歩くだけなはずだから、何とか私でも迷子にならずにたどりつけるんじゃないかな・・・。

そんなひどく楽観的な考えで、隣街リンドンに向かって歩き始めたけれど・・・。

「疲れた・・・。」

普段、運動不足の私はすっかり疲れ果てていた。道の途中で足をねんざししてまい、足を引きずるように歩く。人通りはすっかり少なくなり、どこからかフクロウの鳴き声が聞こえてくる。

諦めて宿を探そうかな・・・。

立ち止まって、ぼんやりと夜空を見上げた。そこに広がるのは満天の星空。

綺麗・・・。よし、もう少し歩こう。

まだ諦めるには早い。あのまま、城下町にとどまって居たら、義母様に見つかって無理やり母国に送り返されてしまうかもしれないし。サイラスと共にいるために、私はひたすらに歩みを進めた。

「ニャーニャー」

歩いていると足元から、猫の鳴き声が聞こえた。

「猫さんこんにちは。貴方も隣町に行くの?」

しゃがみこみ、猫さんの頭を撫でる。暗くてよく見えないけれど、ずいぶんふわふわの毛並みをした猫さんだ。どこかの家から迷子になってしまったのだろうか。

「ニャアア。」

頭をなられた猫さんは嬉しそうにのどを鳴らす。人懐っこい子だ。

「一緒に行きましょうか?」

「ニャーーー」

猫さんはまるで私に返事をするかのように鳴いた。私が再び歩き始めると、猫さんは私の足元をついてくる。なんてかわいいんだろう。心折れそうになっていた私だけど、猫さんに力をもらって再び歩き出した。

どれくらい歩き続けたんだろう。痛みが麻痺してきたのか、右足の痛みは薄れてきた。

「る~るる~♪」

鼻歌を歌うと、猫さんも鳴き声を上げて一緒に歌ってくれる。

「ニャーニャー。」

体は疲れているはずなのに、歩き始めたときよりも足は軽く感じた。きっとそれは猫さんが一緒に旅していてくれるからだろう。

「朝日だよ。猫さん。」

朝日に照らされて、ずっと一緒に歩いていた猫さんの体が初めてはっきり見えた。真っ白の体に青い瞳。なんて綺麗な猫さんなんだろう。

「ニャァ・・・」

猫さんは大きなあくびをすると、その場にくるりと丸まった。ずっと歩いて疲れたんだろう。猫さんは目を閉じて、眠ってしまった。

街についたら、義母のお金を少し借りて、猫さんにご飯を買ってあげようかな。隣町リンドンに向かう道は、少しずつ人通りが増えてきた。この道は馬も走っていくから、道の真ん中で眠っていたら少し危ないかもしれない。私は猫さんを抱き上げて、木の陰にある丸太に腰かけた。

「もう少しだ。」

ここまで歩き続けて、かなり体力消耗してしまった。猫さんをここに置いていくわけにはいかないし、私も少し休もう・・・。丸太の上で猫さんの背中を撫でていると、私もうとうとしてきて・・・、いつの間にか夢の世界にいた。




   ◇◇◇
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