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2.王子様が行方不明?!
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昨日の夜。サイラス様と私はテーブルを囲んで、美味しい料理とワインを楽しんでいた。
話題はつい2日前に行われたアルフ様とニューナの結婚式についてだ。新郎アルフ様はサイラスの親友で、新婦ニューナは私がザルトル国に移住する前からの友達。アルフ様とニューナは、昨日から新婚旅行で海外に行っている。
「素敵でしたね・・・。アルフ様とニューナ、幸せそうで・・・。」
「ああ。僕も早くシエリの花嫁姿を見たくなったよ。」
優しく微笑んでサイラス様が私に言った。
なんて嬉しいお言葉・・・。ザルトル国に移住して一ヶ月が経つが、サイラス様の優しさはとどまるところを知らない。
「大好き・・・です。サイラス様。」
「大好きだよ。」
そう言ったサイラス様が、そっと私の唇に触れようとしたとき
ドンドンドンドン!!
「サイラス様!いらっしゃいますか!!!」
やってきたのは、ザルトル国の兵士だった。もう夜は遅い。
これまでの一か月間、サイラス様が夜間に呼び出されることなんてほとんどなかったのに・・・なにかあったんだろうか?
「どうした?何があったんだ?」
そう尋ねるサイラス様は少し不機嫌。走ってきたのか息を切らしながら兵士は答えた。
「フォックス王子が行方不明です!」
「なんだと・・・!」
「フォックス様が・・・!」
思わず、驚きの声をあげる。
ザイラス国第二王子フォックス様は、私がデンバー国から逃げ出すこと手伝ってくれた恩人だ。彼がいなかったら、私は今頃まだデンバー城で引きこもっていたかもしれない。
「どこに行ったのか、手がかりはあるか?」
「いいえ。まずは大事にする前に、サイラス様に伝えてこいと言われまして・・・。」
「そうか・・・。」
サイラス様は少し考え込んで、すぐに剣を手に取った。
「王子を探しに行くよ。すまない、シエリ。先に眠っていてくれ。」
眠って待っているなんてできない。つい、私はサイラス様の服を掴んだ。
「わたしもフォックス様を探しにいってはだめですか・・・?」
サイラス様は微笑んで、私の手をそっと握った。
「すまない、シエリ。最近の城下町は物騒でな・・・。シエリを連れていけないんだ。僕たが必ずフォックスをみつけてくるから、待っていてくれ。」
「わかりました・・・。」
フォックス様のためになにかしたいけれど、サイラス様の足を引っ張るわけにはいかない。確かに最近、夜間に山賊がでて貴族の女性が誘拐される事件をよく耳にする。嫌な想像ばかりが頭をよぎってしまう。
私の心配が伝わったんだろう。サイラス様は私の背を優しく撫でてくれる。
「大丈夫だ。第二王子は自由な奴で・・・俺はいつも振り回されている。行方不明になるのも初めてじゃないんだ。だから、あまり心配せずにゆっくり休むんだよ。」
「・・・わかりました。お帰りをお待ちしています。」
「愛してるよ。シエリ。家の鍵をしめて、よく用心するんだよ。」
身をかがめたサイラス様は、私の額に軽くキスをして家を出ていった。
◇◇◇
話題はつい2日前に行われたアルフ様とニューナの結婚式についてだ。新郎アルフ様はサイラスの親友で、新婦ニューナは私がザルトル国に移住する前からの友達。アルフ様とニューナは、昨日から新婚旅行で海外に行っている。
「素敵でしたね・・・。アルフ様とニューナ、幸せそうで・・・。」
「ああ。僕も早くシエリの花嫁姿を見たくなったよ。」
優しく微笑んでサイラス様が私に言った。
なんて嬉しいお言葉・・・。ザルトル国に移住して一ヶ月が経つが、サイラス様の優しさはとどまるところを知らない。
「大好き・・・です。サイラス様。」
「大好きだよ。」
そう言ったサイラス様が、そっと私の唇に触れようとしたとき
ドンドンドンドン!!
「サイラス様!いらっしゃいますか!!!」
やってきたのは、ザルトル国の兵士だった。もう夜は遅い。
これまでの一か月間、サイラス様が夜間に呼び出されることなんてほとんどなかったのに・・・なにかあったんだろうか?
「どうした?何があったんだ?」
そう尋ねるサイラス様は少し不機嫌。走ってきたのか息を切らしながら兵士は答えた。
「フォックス王子が行方不明です!」
「なんだと・・・!」
「フォックス様が・・・!」
思わず、驚きの声をあげる。
ザイラス国第二王子フォックス様は、私がデンバー国から逃げ出すこと手伝ってくれた恩人だ。彼がいなかったら、私は今頃まだデンバー城で引きこもっていたかもしれない。
「どこに行ったのか、手がかりはあるか?」
「いいえ。まずは大事にする前に、サイラス様に伝えてこいと言われまして・・・。」
「そうか・・・。」
サイラス様は少し考え込んで、すぐに剣を手に取った。
「王子を探しに行くよ。すまない、シエリ。先に眠っていてくれ。」
眠って待っているなんてできない。つい、私はサイラス様の服を掴んだ。
「わたしもフォックス様を探しにいってはだめですか・・・?」
サイラス様は微笑んで、私の手をそっと握った。
「すまない、シエリ。最近の城下町は物騒でな・・・。シエリを連れていけないんだ。僕たが必ずフォックスをみつけてくるから、待っていてくれ。」
「わかりました・・・。」
フォックス様のためになにかしたいけれど、サイラス様の足を引っ張るわけにはいかない。確かに最近、夜間に山賊がでて貴族の女性が誘拐される事件をよく耳にする。嫌な想像ばかりが頭をよぎってしまう。
私の心配が伝わったんだろう。サイラス様は私の背を優しく撫でてくれる。
「大丈夫だ。第二王子は自由な奴で・・・俺はいつも振り回されている。行方不明になるのも初めてじゃないんだ。だから、あまり心配せずにゆっくり休むんだよ。」
「・・・わかりました。お帰りをお待ちしています。」
「愛してるよ。シエリ。家の鍵をしめて、よく用心するんだよ。」
身をかがめたサイラス様は、私の額に軽くキスをして家を出ていった。
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