【完結】婚約者を寝盗られ婚約破棄となりました。裏切られてばかりでもう疲れた伯爵様は逃げ出すことにしました。

16 私はまだソラウ様の婚約者なの！！

リングイット家の車庫。私の仕事場に行くと、珍しくソラウ様がもう来ていた。

「おはよう。」

「おはようございます。早いですね。まだ学園に行くまで時間があると思うのですが、、、？」

あれ？私遅刻したかな。通常時計を見るも、ソラウ様が出発する一時間前である。

「今日は、学園が休みだから。」

と、ソラウ様。

「はぁ、、、。」

言ってくれたら、私今日休みだったのになぁ。

「なぁ、アキ。デートしないか？」
　
ソラウ様は私に言った。なぜ、この人はこんなにも私のことが好きなんだろう。

「しません。」

「どうしてもだめか？」

「どうしてもです。」

なぜ、なんだろう。私はソラウ様の愛人の子供ですよ？いくら親と子供は別物とはいえ、そこまで割り切れるものなんだろうか。

「そうか。」

ソラウ様は悲しそうな顔で俯いた。
親と子供は違う。そう割り切って、私のことを好きだというソラウ様は尊い。話していると、救われる気がした。私は私なんだと思わせてくれる。

「明日なら、いいですよ？」

「ほんとか！」

「デートではなく、ちょっとデザートでも食べに行きましょう？」

「それはデートだ！行こう！！」

「変な人ですね。ソラウ様。」

思わず、つぶやく。もしも、こんな形で貴方にあっていなければ、私は貴方を好きになっていたかもしれません。


　　◇◇◇


「さてと、私は一回家に帰りましょうかね。」

私は大きく伸びをした。ソラウ様は、何やら約束があると屋敷に帰っていった。私が、ここにいてもすることはない。

屋敷から帰ろうとしたとき

「ソラウの運転手！」

ある女に声をかけられた。

「なんのようでしょうか？フィリア様。」

目の前に立っていたのは、ソラウ様の元婚約者のフィリア様。相変わらず耳障りな嫌な声をしている。

「よく堂々と運転手を続けられるわね！！」

フィリアは私を睨みつけて言った。この人、こんな怖い顔しかできないのかな。

「あなたこそ、よく堂々とリングイット家に来れましたねぇ。」

あんなにソラウ様にボロクソ言われて折れない心の強さには驚くね。

「私はまだ、ソラウ様の婚約者なの！！」

と、フィリアが叫ぶ。

「そうですかぁ。」

フィリアは私に向かって、一枚の手紙を投げた。

「それを読みなさい。」

私は床に転がった手紙を眺める。

「あとでちゃんと読みますよ。」

私はフィリアを睨みつけた。なんなんだこの女。

「痛い目を見せてやるから。」

そう言ってフィリアはその場所を去っていった。その姿を確認して、私は手紙を開く。

ー中央時計台の前に４時に来いー

と書いてある。中央時計台は確かに待ち合わせの人気スポットだけど、こんなにも被るかね、、、。

「ま、行くわけないんだけどね。」

私はその手紙をびりびりに破いて、ひらひらと地面に撒いた。

　　
　　◇◇◇