上 下
2 / 2

あいつがいないと、眠れない。

しおりを挟む





「ランがいなくなった?」

私、サンは

思いもよらないアルファの言葉に

思わず

大声をあげた。



ここは

王子アルファの執務室。



私はアルファに呼び出され、

一ヶ月ぶりに

城に来ていた。



アルファは椅子に座り、

背もたれにもたれ掛かって

ぐったりしている。



「そうだ。

 昨日の夕方、


 城を出て

 そのまま帰ってこないんだ。」



アルファの目には

大きなクマができている。



「誘拐?!」



ランの出産予定日まで

あと2ヶ月。



ランの身に何かあれば、

赤ちゃんも危ない。




「いや、


 多分、


 自分で出ていった。」


アルファは

ボソリと呟く。



「あいつの部屋に、


 荒らされた形跡はないし、

  

 あいつのメイドと警護兵ごと



 いなくなってる。」
  


とりあえず、

事件では無さそうね。





「アルファ、


 貴方なにか


 ランが出ていったことに


 心当たりがあるんでしょう。」



アルファは

ガバッと

体を起こした。



「だって、まさか


 ほんとに出ていくなんて、


 思わないじゃないか!」




あーあ。

だめね、アルファ。



「ランに、


 出ていけと言ったの?」



アルファは

顔を顰める。




「つい、腹が立つことがあって。



 本気じゃなかった。」




私はがっくりとうなだれる

元婚約者アルファの姿を眺める。



私と婚約しているときは、

こんなふうにならなかったわ。



「ランが、
 

 どこに言ったか、



 心当たり、ないか?」



ねぇ、ラン。


私、本当に嬉しいの。



「心当たり、あるわ。


 ランがいないと、寂しい?」


アルファは

ふん、と鼻をならした。



「しょうがないだろ。


 あいつがいないと、


 眠れないだから。」


アルファはちゃんと、


あなたのことを愛しているわ。




------------------------------------




「やっぱり、


 無理なのかな、、。」



私、ランは

小さくため息をついた。



ここは

お城から少し離れた


実家の別荘。



小さい頃からよく

遊びに来た思い出の場所だ。



大きくなってからも、

悩みがあると


この場所に来たくなる。



こころが、弱っているのかな。




お姉ちゃんから、

アルファを奪って、

子供まで作ったけど




今更になって


それで良かったのか、

わからなくなってきた。



「自業自得かぁ。」



アルファの側にいるのが、

切なくなって

逃げてきた。



「ねぇ、アルファ。



 私を見つけてくれる?」

















しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

双子の妹に婚約者を奪われ婚約破棄となりました。

五月ふう
恋愛
ルカが聖女になったんなら、アテネとは婚約破棄して、ルカと結婚しようか。婚約者であるゼウはそう呟いた。なぜ?ルカは聖女になったんじゃなくて、悪魔に取り憑かれたのよ!そんなアテネの言葉はゼウに届かない、、、。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

「地味でブサイクな女は嫌いだ」と婚約破棄されたので、地味になるためのメイクを取りたいと思います。

水垣するめ
恋愛
ナタリー・フェネルは伯爵家のノーラン・パーカーと婚約していた。 ナタリーは十歳のある頃、ノーランから「男の僕より目立つな」と地味メイクを強制される。 それからナタリーはずっと地味に生きてきた。 全てはノーランの為だった。 しかし、ある日それは突然裏切られた。 ノーランが急に子爵家のサンドラ・ワトソンと婚約すると言い始めた。 理由は、「君のような地味で無口な面白味のない女性は僕に相応しくない」からだ。 ノーランはナタリーのことを馬鹿にし、ナタリーはそれを黙って聞いている。 しかし、ナタリーは心の中では違うことを考えていた。 (婚約破棄ってことは、もう地味メイクはしなくていいってこと!?) そして本来のポテンシャルが発揮できるようになったナタリーは、学園の人気者になっていく……。

お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?

朱音ゆうひ
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。 何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!   と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど? 別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

処理中です...