上 下
1 / 3

双子の妹は私から婚約者を奪った挙げ句、私を牢屋送りにしようとしています。

しおりを挟む
私が3日ぶりに家に帰ると、私の婚約者であるリックと双子の妹であるランナが裸で抱き合っていました。    

(嘘、、、。)

ドアの隙間から私はリックとランナを呆然と見つめました。お互いに夢中な二人は、私の存在に気づいていません。

「ねぇ、リック。もうそろそろお姉様と婚約破棄してくれるぅ?」 

舌っ足らずな声で、ランナがリックに尋ねました。一卵性の双子である私とランナは全く同じ顔をしています。  
 
「もちろんだよ。ランナ。もうアリアナにはうんざりだ。あんな女と結婚するなんてあまりにも辛すぎる。絶対にアリアナと婚約破棄して、君と結婚するよ。」

リックはランナを抱きしめて言いました。

(最低、、、。)

私の名前はアリアナ・エンジャルといいます。
婚約者のリックとは学生時代からお付き合いしていて、もう5年になります。本当なら、もう私とリックは一年前に結婚しているはずでした。結婚する直前に、私の両親が不慮の事故でなくなったのです。私とランナは世界でただ一人の家族でした。

「まあ嬉しい。リックにお姉様なんかが釣り合うはずないって、ずっと思ってたんだあ。」

ランナはリックの頬にキスをしました。その姿を見ていると、怒りよりも悲しみが込み上げてきました。私達は、唯一頼れる存在であるはずなのに、ランナは私からリックを奪ったのです。

(いつからランナは私を裏切っていたのだろう。)

この一年、仕事ばかりをしていた私には、彼らの浮気がいつ始まったのか分かりません。両親の死後、悲しみにくれている暇はありませんでした。彼らが残した莫大な借金が見つかったのです。24歳の私はもう働き始めていましたが、ランナはまだ無職でした。借金とりに追われながら私は必死で借金を返しました。

(ランナに、貧しい思いをしてほしくなくて、、私必死で働いたのに、、。)

その結果、リックと一緒にいる時間がなくなり、リックをランナに奪われてしまうなんて、あまりにも残酷です。

「実はねぇ、私、リックの子供ができたのぉ!」

「本当か!!」

リックは嬉しそうにランナを抱きしめました。二人を思い切り殴りに行こう。私はドアを開けようとしましたが、体が動きませんでした。私はこれから、最愛の婚約者であった人とただ一人の家族を失ってしまうのです。

リックは元々、物静かで穏やかな人間でした。ですが私と付き合っている間に少しずつ派手になり始め、最近ではヤンチャなお友達が増えてきていました。何度かそんなリックを止めたのですが、彼は全く聞く耳を持ちませんでした。

「それでねぇ、お姉様が邪魔なんだあ。上手く、お姉様に消えてほしいの。お姉様が悪者になってくれたら、全てが上手く行くわ。」

ランナの言葉に私は震え上がりました。ランナには昔から自分の目的のためならば手段を選ばないところがあります。

(ランナは私をずっと邪魔に思ってる。)

ランナは昔から、私のことを激しく嫌っていました。私達は一卵性の双子で見た目は殆一緒ですが、一箇所、明確に見分けがつく部分があります。ランナには鼻の下に大きなほくろがありました。ランナはそのホクロをずっと気にしており、そのことで私を常に攻撃してきました。

"ホクロが無いからって、私より自分のほうが綺麗だと思っているんでしょう?!"

ランナはいつも私にそう言いました。否定すればするほど逆効果で、私達の仲は悪くなってしまいました。

「ねぇ、リック。私、お姉様を消す良い方法考えちゃった。」

「それはどんな方法だい?」

私はじっと息をひそめました。幸運にも私の存在はまだ二人にバレていません。ドアのある場所がちょうどベットから目に入らない角度だったのです。

「お姉様が私に嫉妬して、私を毒で殺そうとした。けれど賢い私が毒を飲む前にお姉様の悪事に気づくの。私がお姉様の悪事を暴いて、お姉様は牢屋送りになるの?どう?素敵でしょ?」

恐ろしい子です。いくら恨んでいるとはいえ、私はランナの唯一の家族であるのに、私を牢屋に送ると彼女は言っています。

私はそっとその場を離れました。

(もう、貴方を家族とは思わないわ。)

心がナイフであちこちから刺されているようです。心が苦しくてたまりませんでした。しかしランナは私を罠に嵌めようとしています。彼女の思い通りになるわけには行きません。


  ◇◇◇
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]宝石姫の秘密

シマ
恋愛
国一番の宝石の産地、ミレーニア。山に囲まれたその土地で宝石の採掘を一手に引き受けているのは領主一家のアイビン家。 そこには王家と一家しか知らない秘密があった。

【完結】「王太子だった俺がドキドキする理由」

まほりろ
恋愛
眉目秀麗で文武両道の王太子は美しい平民の少女と恋に落ち、身分の差を乗り越えて結婚し幸せに暮らしました…………では終わらない物語。 ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿してます。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ

海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。 あぁ、大丈夫よ。 だって彼私の部屋にいるもん。 部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。

【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢

美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」  かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。  誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。  そこで彼女はある1人の人物と出会う。  彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。  ーー蜂蜜みたい。  これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。

(完結)私の夫は死にました(全3話)

青空一夏
恋愛
夫が新しく始める事業の資金を借りに出かけた直後に行方不明となり、市井の治安が悪い裏通りで夫が乗っていた馬車が発見される。おびただしい血痕があり、盗賊に襲われたのだろうと判断された。1年後に失踪宣告がなされ死んだものと見なされたが、多数の債権者が押し寄せる。 私は莫大な借金を背負い、給料が高いガラス工房の仕事についた。それでも返し切れず夜中は定食屋で調理補助の仕事まで始める。半年後過労で倒れた私に従兄弟が手を差し伸べてくれた。 ところがある日、夫とそっくりな男を見かけてしまい・・・・・・ R15ざまぁ。因果応報。ゆるふわ設定ご都合主義です。全3話。お話しの長さに偏りがあるかもしれません。

親友に婚約者を奪われ婚約破棄されました。呪われた子と家族に邪険にされ続けた私には帰る場所はありません。

五月ふう
恋愛
「サナ!  この呪われた奴め!!」 足を止めて振り返ると そこにいたのは、 「ハイリ、、、。  サンディア、、。」 私の婚約者であるハイリと 友人のサンディアだった。 「人の心を読み取れるんだろう!!  僕のことを  ずっと騙していたんだな!」 貴方も、 そう言って私を責めるのね。 この力のせいで、家族からずっと 気味悪いと邪険にされてきた。 「ハイリ。」 「俺の名を呼ぶな!!  気味が悪い!」 もう、貴方とはいられないのね。 「婚約破棄しましょうか?」 ハイリは私を絶望に突き落とした。

中庭に始まり、中庭に終わる

よもぎ
恋愛
中庭で相対するのは顔はよくとも頭が悪い一人の男と可愛いだけの女と、内実ともに優れた男の婚約者。男が叫ぶのはもちろん婚約破棄。なぜなら、彼もまた愚かな存在だからです

私の作った料理を食べているのに、浮気するなんてずいぶん度胸がおありなのね。さあ、何が入っているでしょう?

kieiku
恋愛
「毎日の苦しい訓練の中に、癒やしを求めてしまうのは騎士のさがなのだ。君も騎士の妻なら、わかってくれ」わかりませんわ? 「浮気なんて、とても度胸がおありなのね、旦那様。私が食事に何か入れてもおかしくないって、思いませんでしたの?」 まあ、もうかなり食べてらっしゃいますけど。 旦那様ったら、苦しそうねえ? 命乞いなんて。ふふっ。

処理中です...