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1.婚約者が女を拾ってきた
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初夏、雨がしとしとと降る中、その女は汚れた箱の中に入って、私と婚約者のギルバードを見上げていた。
「ミィナを拾ってください。」
腰まで伸ばした銀色の細い髪に大きな水色の目。ピンク色のワンピースを着て、箱の中で正座をしている。
(何こいつ?)
目をうるうるさせて、いかにも私を拾うのは当然ですよね?という顔をしてる。
私の名前はエマ・スチュワール。28歳。婚約者のギルバードは32歳。
私は元々サイラス国軍探偵部で働いていたのだが、一ヶ月前貴族の一人息子であるギルバードに見初められて恋に落ちた。めでたくスピード婚約した後に、母親の願いを聞いて探偵をやめ、今はギルバードの家で家事をしている。
「行こう、ギルバード。」
ミィナとかいう女に見とれているギルバードの腕を引く。なんとなくこの女には関わらないほうがいい気がする。
「こんな雨の中、可哀想じゃないか?」
「可哀想かもしれないけど、、、。関わらないほうがいいよ。」
私の言葉に、ミィナは顔を覆って泣き出した。探偵をしていた私の感からいうと、こうやってすぐに涙のスイッチが入る女は百発百中でやばい奴だ。
「なんて酷い人なの!!」
「いや、そう言われてもねぇ。ミィナさん、本当に困っているなら、国軍の警察部に助けを求めたら?きっと、いい仕事先を紹介してもらえるわ。」
元々国軍で働いていたので、内情は分かっている。サイラス国は世界的に見て裕福な国だ。まぁ、最近は国王の政治がやばすぎて、国が傾きかけてはいるけれど、それでも貧困層がなんとか生きていくための制度は整っている。
「国軍は、意地悪なので嫌いですぅ。」
「意地悪かもしれないけど、制度として助けてもらえるはずだから。ミィナさん、身分証明書はある?」
「そんなもの、持ってないですぅ。私、親に捨てられたんですもん。」
私は大きくため息をついた。放って置きたいが、元探偵部として見過ごせない。身分証明書が無いとなると厄介だが、国軍で戸籍を見つけ出せればなんとか助けてもらえるはずだ。
「とにかく、国軍の役所に行きましょう。話はそれからよ。」
「嫌です!!」
ミィナは私の手を振り払うと、ギルバードの腕にしがみついた。
「ちょっと!!私の婚約者になにしてるの?」
「貴方、意地悪だから嫌い!国軍の人と一緒なの!ねぇ、私はこんなに可哀想なのに、拾ってくれないんですか?」
「僕が助けてあげるよ。君みたいな可愛い子を放ってはおけないからね。」
「はあ?」
ギルバードはミィナの手を取ってにっこりと微笑んだ。私が思い切り睨みつけているにも関わらず、ギルバードは言葉を続けた。
「僕の家においでよ。部屋は余っているから。」
「ありがとうございます!!」
「ちょ!冗談じゃないわよ!絶対に嫌なんだけど!!」
なぜ婚約したばかりでよく知らない怪しい女を家に入れなくちゃならないんだ。
「だって可哀想じゃないか。エマだって本当は優しい人なんだから、わかってくれるだろ?」
「、、、!」
私がどんなに反対しても、ギルバードはミィナを家に迎い入れることを決めてしまった。ギルバードは拾ってきたミィナに何でも買い与えた。服、カバン、ジュエリー。婚約者である私に暮れたものより高額なものをミィナに貢いでいるのを見て、私の怒りは限界を突破した。
◇◇◇
「ミィナを拾ってください。」
腰まで伸ばした銀色の細い髪に大きな水色の目。ピンク色のワンピースを着て、箱の中で正座をしている。
(何こいつ?)
目をうるうるさせて、いかにも私を拾うのは当然ですよね?という顔をしてる。
私の名前はエマ・スチュワール。28歳。婚約者のギルバードは32歳。
私は元々サイラス国軍探偵部で働いていたのだが、一ヶ月前貴族の一人息子であるギルバードに見初められて恋に落ちた。めでたくスピード婚約した後に、母親の願いを聞いて探偵をやめ、今はギルバードの家で家事をしている。
「行こう、ギルバード。」
ミィナとかいう女に見とれているギルバードの腕を引く。なんとなくこの女には関わらないほうがいい気がする。
「こんな雨の中、可哀想じゃないか?」
「可哀想かもしれないけど、、、。関わらないほうがいいよ。」
私の言葉に、ミィナは顔を覆って泣き出した。探偵をしていた私の感からいうと、こうやってすぐに涙のスイッチが入る女は百発百中でやばい奴だ。
「なんて酷い人なの!!」
「いや、そう言われてもねぇ。ミィナさん、本当に困っているなら、国軍の警察部に助けを求めたら?きっと、いい仕事先を紹介してもらえるわ。」
元々国軍で働いていたので、内情は分かっている。サイラス国は世界的に見て裕福な国だ。まぁ、最近は国王の政治がやばすぎて、国が傾きかけてはいるけれど、それでも貧困層がなんとか生きていくための制度は整っている。
「国軍は、意地悪なので嫌いですぅ。」
「意地悪かもしれないけど、制度として助けてもらえるはずだから。ミィナさん、身分証明書はある?」
「そんなもの、持ってないですぅ。私、親に捨てられたんですもん。」
私は大きくため息をついた。放って置きたいが、元探偵部として見過ごせない。身分証明書が無いとなると厄介だが、国軍で戸籍を見つけ出せればなんとか助けてもらえるはずだ。
「とにかく、国軍の役所に行きましょう。話はそれからよ。」
「嫌です!!」
ミィナは私の手を振り払うと、ギルバードの腕にしがみついた。
「ちょっと!!私の婚約者になにしてるの?」
「貴方、意地悪だから嫌い!国軍の人と一緒なの!ねぇ、私はこんなに可哀想なのに、拾ってくれないんですか?」
「僕が助けてあげるよ。君みたいな可愛い子を放ってはおけないからね。」
「はあ?」
ギルバードはミィナの手を取ってにっこりと微笑んだ。私が思い切り睨みつけているにも関わらず、ギルバードは言葉を続けた。
「僕の家においでよ。部屋は余っているから。」
「ありがとうございます!!」
「ちょ!冗談じゃないわよ!絶対に嫌なんだけど!!」
なぜ婚約したばかりでよく知らない怪しい女を家に入れなくちゃならないんだ。
「だって可哀想じゃないか。エマだって本当は優しい人なんだから、わかってくれるだろ?」
「、、、!」
私がどんなに反対しても、ギルバードはミィナを家に迎い入れることを決めてしまった。ギルバードは拾ってきたミィナに何でも買い与えた。服、カバン、ジュエリー。婚約者である私に暮れたものより高額なものをミィナに貢いでいるのを見て、私の怒りは限界を突破した。
◇◇◇
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