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28.オリビアが、いない、、、?

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レオがハリバート城に帰ると、城の様子がいつもと違っていた。

ー皇太子が帰ってきた

ーこれからこの国はどうなるんだ、、、?

兵やメイド達が、焦った顔で城を走り回っている。さらにはいつもは城にいない大臣たちが入口に大勢集まっていた。

(何があったのだ。)

嫌な予感が、頭の中を駆け巡る。

動揺を悟られないよう、レオは真っ直ぐ前だけを向いて王の間に向かう。

(とにかくまず、オリビアの無事を確かめねば。)

城の人間は遠巻きにレオを見るばかりで、何があったか誰も教えようとしない。

「レオ。」

足早にオリビアの元に向かうレオを引き止めたのは、

「フローレンス、、、。」

顔を扇で隠したフローレンスだった。その後ろには、無表情のサルマンが控えている。

(何も、感じるな。何も思うな。)

レオは自身に言い聞かせる。そうでなければ、今にも剣で切りつけてしまいそうになるからだ。

「お母様と呼んで頂戴と、いつも言っているでしょう?」

そう言ってフローレンスは目を細める。

(俺はお前を絶対に、母とは呼ばない。)

フローレンスのせいで、何人もの罪なき人間が命を落としてきた。それは、レオを殺そうとしたメイドだけではないことをレオは知っている。

フローレンスは自分に不都合な人間を、サルマンに命じて次々に消しているのだ。

「なんの用だ?」

フローレンスは低い声で言った。

「少し前、カルク様が意識を失われて、危険な状況が続いているわ。医師は、今夜が峠だろうと言っているの。」

「なんだと、、、!」

レオは大きく息を吸い、カルクの部屋に向かおうとした。

だが、

「待ちなさい。」

フローレンスが、レオの腕を掴んだ。

「離せ、、、。」

フローレンスは扇の下で小さく笑った。周りからは見えないフローレンスの恐ろしい顔がレオにはよく見える。

(父が死ぬのが、そんなに嬉しいか。)

腹の底から怒りが込み上げてくるが、この女に構っている暇はない。

「貴方をカルク様の元にいかせるわけに行かないわ。」

と、フローレンス。

「なぜだ、、、?俺は、国王の息子だ。なぜ、会いに行くことができないんだ、、、?」

「父親を殺したと言われるのは嫌でしょう?」 

フローレンスはレオの耳元で囁いた。

「お前っ、、お前がその噂を流すのだろう?!」

どんな噂を流されても、これまでは耐えられた。だが、親愛なる父を殺したという噂だけは聞きたくなかった。

(父上、、、!)

レオの腕を掴むフローレンスの爪が、腕に食い込む。

「分かったら、部屋に帰って大人しくしなさい。」

レオは強く自分の胸元を掴んだ。

(何も、思うな。戦えば、、、誰が傷つく。)

よろけそうになりながら、レオは王の間に戻る。

部屋に内側から鍵をかけ、オリビアがいるはずの隠し部屋に向かう。

「オリ、ビア、、、?」

だがそこに、オリビアの姿は無かった。

(まさかっ!)

お手洗いの天井を見上げると、そこには梯子がかかっていた。

(ここから、出ていったのか、、、?)

その通路は、かつてレオも使っていた道であった。

(父上のところに、、行ったのか、、、?頼む、、見つからないでくれ、オリビア!)



  ◇◇◇


    
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