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15 幸せ

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後日。


「行こう。リン。」

スバルに差し出された手を取って
リンは遊郭を出た。

空には晴天が広がる。

「スバル!」

「ん?」

スバルは振り返る。

「これから先 
 ずっとずっと、一緒だよ。」

リンは満面の笑みが
太陽に照らされた。


「ああ!
 ずっと一緒だ!」


   ◇◇◇
 

アユに刺されたコウリュウは
意識を取り戻すことなく
そのまま死んだらしい。

「なぜあの日、
 桜国の軍が助けに来てくれたの?」

リンはスバルに尋ねる。
リンは未だスバルが何者か
知らなかった。

スバルは肩を竦める。

「さあなぁ。
 きっと神様が
 俺たちを助けてくれたのさ。」



 
  ◇◇◇


「そろそろかな。」

「そろそろ来るよ。」

桜国の都から遠く離れた田舎の村。

スバルとリンは並んで
縁側に腰掛けておまんじゅうを
食べていた。

穏やかな昼下り。

スバルは最近は
時々風邪をひく程度で
すっかり元気になっていた。

「リン。」

と名を呼べば
リンはにっこりと笑って

「なーに?」

と首をかしげた。

用など何も無い、
ただ可愛いから
名を呼びたかっただけだ。

スバルは可愛い可愛い愛妻に
ぎゅっと抱きついた。

「もー、スバルったら。」

リンはスバルの頭を
優しく撫でた。  


「あー!

 スバル先生、
 いちゃいちゃしてるー!」

そう言ってスバルを指さしたのは
村の子供達だ。

スバルは村の子供達に
読み書きを教えている。

「いいだろ?
 俺の奥さんは
 可愛いんだから。」

スバルが照れもせずに
堂々といった。

リンは顔を赤くして
立ち上がると
子供たちに言った。

「さ!
 みんなおまんじゅうあるよ!
 食べる人?」

「はーい!!」

子供達は元気よく手を挙げる。

「じゃあ持ってくるね!」

リンが台所に向かうと
スバルも立ち上がり着いてきた。

「俺も行く!」

しょうがないなぁ、
とばかりに
リンは肩をすくめる。

「ずっと一緒だもんね。」

「そうだ!!」

スバルは勢いよく頷いた。

「あー!!
 またいちゃいちゃ!!」

子供達が目ざとく指差す。

「良いんだ!」

スバルは胸をはる。

リンはにこにこと笑っている。

「だってリンのことが
 大好きなんだから!」

そうして二人は
村一番のおしどり夫婦として
幸せに暮らしましたとさ。







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