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23.騎士と王妃の"恋愛値"
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「そろそろシィナの元に行かなくてはならないわね。」
リリア王妃はふうと大きく息を吐いて立ち上がりました。シィナが自分に話したいこととは何でしょうか。今のリリア王妃にはアンドリューに関する悪い想像ばかりが頭をよぎります。
「アンドリューとシィナが一緒にいて、だいじょうぶですか?」
「どう、かしら。」
ティリンスの言葉にリリア王妃はうつむきました。ティリンスにすぐに知られてしまうほどリリア王妃の行動はあからさまだったのです。いつも側にいるアンドリューにならば、すぐにこの恋心が伝わってしまうかもしれないと、リリア王妃は恐れていました。
「伝わって、しまうかしら?」
「もしかしたら、そうかもしれませんね。」
実際にはアンドリューは気づかないだろうとティリンスは思っていました。リリア王妃、アンドリュー共に、恋愛に関する耐性や能力はすこぶる低いのです。
「ついてきてもらっても、いいかしら?」
リリア王妃は小さい声で尋ねました。三人でいるときの自分がどんな醜態を晒してしまうか、想像もつきません。
「かまいませんよ。」
「もしも私が少しでもおかしな行動をしたら、すぐに教えてちょうだい。」
ティリンスは微笑みました。リリア王妃の必死な表情がとても可愛らしかったのです。
「わかりました。」
◇◇◇
「リリア様!」
アンドリューはリリア王妃の部屋からもう二部屋離れた廊下でリリア王妃を待っていました。本当は壁に耳を押し当てて、ティリンス王子とリリア王妃の会話を聞きたいところでした。
(何を話していたのだろう。)
ですか、騎士としてそんなことは絶対にできません。しかし、黙って座っていることもできなかったので、アンドリューは廊下をうろうろと歩いて待っていました。
「待たせたわね。シィナの元に行くわよ。」
リリア王妃は硬い表情でアンドリューに言いました。
「行きましょう。リリア王妃がずっと知りたかったことが聞けるはずです。」
旧ミラノリ国の現状をリリア王妃を差し置いて自分が聞くわけにはいきません。シィナにはリリア王妃がいるときに話してもらうよう頼んでいました。
「知りたかったこと、、、?一体何の話?」
リリア王妃は訝しげな顔でアンドリューに尋ねました。何故か、ティリンスが当たり前のようにリリア王妃に着いてきます。ティリンス王子はカーネリアン国の人間で敵ではありませんが、ミラノリ国の内情を共有するほどは信頼していません。
「その、、、。ティリンスには、、、」
「僕には構わなくていいよ。もしも黙っていてほしいことなら、口外はしないさ。」
「ですが、リリア様、、、?」
リリア王妃はうつむいたまま答えました。
「良いのよ。ティリンスには着いてきてもらうわ。」
リリア王妃がそう言うのであれば、アンドリューには何も言い返せません。
「そうですか。」
ティリンスと、何を話したのですか。アンドリューはその言葉をなんとか飲み込みました。踏み込んではいけない話題であるような気がしたのです。特に、二人の間に恋愛感情が生まれている最中であるならば、邪魔をしてはいけません。
「気にするな。」
ティリンス王子は楽しそうにアンドリューの肩を叩きました。この男はどこまで分かっているのでしょう。気をつけていないと、アンドリューの恋心をティリンス王子に気が付かれてしまいそうです。
「気にしてなどいないさ。」
いつもどおり笑えたでしょうか。アンドリューには自信がありませんでした。
◇◇◇
リリア王妃はふうと大きく息を吐いて立ち上がりました。シィナが自分に話したいこととは何でしょうか。今のリリア王妃にはアンドリューに関する悪い想像ばかりが頭をよぎります。
「アンドリューとシィナが一緒にいて、だいじょうぶですか?」
「どう、かしら。」
ティリンスの言葉にリリア王妃はうつむきました。ティリンスにすぐに知られてしまうほどリリア王妃の行動はあからさまだったのです。いつも側にいるアンドリューにならば、すぐにこの恋心が伝わってしまうかもしれないと、リリア王妃は恐れていました。
「伝わって、しまうかしら?」
「もしかしたら、そうかもしれませんね。」
実際にはアンドリューは気づかないだろうとティリンスは思っていました。リリア王妃、アンドリュー共に、恋愛に関する耐性や能力はすこぶる低いのです。
「ついてきてもらっても、いいかしら?」
リリア王妃は小さい声で尋ねました。三人でいるときの自分がどんな醜態を晒してしまうか、想像もつきません。
「かまいませんよ。」
「もしも私が少しでもおかしな行動をしたら、すぐに教えてちょうだい。」
ティリンスは微笑みました。リリア王妃の必死な表情がとても可愛らしかったのです。
「わかりました。」
◇◇◇
「リリア様!」
アンドリューはリリア王妃の部屋からもう二部屋離れた廊下でリリア王妃を待っていました。本当は壁に耳を押し当てて、ティリンス王子とリリア王妃の会話を聞きたいところでした。
(何を話していたのだろう。)
ですか、騎士としてそんなことは絶対にできません。しかし、黙って座っていることもできなかったので、アンドリューは廊下をうろうろと歩いて待っていました。
「待たせたわね。シィナの元に行くわよ。」
リリア王妃は硬い表情でアンドリューに言いました。
「行きましょう。リリア王妃がずっと知りたかったことが聞けるはずです。」
旧ミラノリ国の現状をリリア王妃を差し置いて自分が聞くわけにはいきません。シィナにはリリア王妃がいるときに話してもらうよう頼んでいました。
「知りたかったこと、、、?一体何の話?」
リリア王妃は訝しげな顔でアンドリューに尋ねました。何故か、ティリンスが当たり前のようにリリア王妃に着いてきます。ティリンス王子はカーネリアン国の人間で敵ではありませんが、ミラノリ国の内情を共有するほどは信頼していません。
「その、、、。ティリンスには、、、」
「僕には構わなくていいよ。もしも黙っていてほしいことなら、口外はしないさ。」
「ですが、リリア様、、、?」
リリア王妃はうつむいたまま答えました。
「良いのよ。ティリンスには着いてきてもらうわ。」
リリア王妃がそう言うのであれば、アンドリューには何も言い返せません。
「そうですか。」
ティリンスと、何を話したのですか。アンドリューはその言葉をなんとか飲み込みました。踏み込んではいけない話題であるような気がしたのです。特に、二人の間に恋愛感情が生まれている最中であるならば、邪魔をしてはいけません。
「気にするな。」
ティリンス王子は楽しそうにアンドリューの肩を叩きました。この男はどこまで分かっているのでしょう。気をつけていないと、アンドリューの恋心をティリンス王子に気が付かれてしまいそうです。
「気にしてなどいないさ。」
いつもどおり笑えたでしょうか。アンドリューには自信がありませんでした。
◇◇◇
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