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10.騎士の"叶わぬ恋"

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北宮には、ティリンス王子が待っていました。

「リリア王妃、、、!どうしたんだ?!」

リリア王妃はまだ目を覚ましていません。リリあまりの悲しみから、息をすることを忘れてしまったのかもしれません。

「おそらく、貧血だと思います。ジキル王に、相当酷いことを言われたようです。」

ティリンス王子は心配そうにリリア王妃を見つめました。

「そうか。それでは明日、日を改めてまた来る。リリア王妃にはしっかり休むよう、伝えてくれ。」

そう言ってティリンス様は帰って行かれました。アンドリューは気を失ったままのリリア王妃をベットにそっと置きました。血の気の無い顔を見ていると、恐ろしくて、アンドリューはリリア王妃の口元に顔を寄せました。しっかりと息をして、生きています。

(リリア様、、、。)

アンドリューはリリア王妃の手を握って、祈りました。これ以上、リリア王妃に悲しいことが起こりませんように。これから先の人生が全て幸せに溢れますように。アンドリューはなんとしてもリリア王妃に幸せになってもらいたいのです。


  ◇◇◇


リリア王妃が目を覚まされたのは、日が暮れて暫く経った頃でした。

「だめだったわ、、、。」

「リリア様。」

リリア王妃は虚ろな目でアンドリューを見ました。

「全部、無駄だったのね。だってジキル王は、私を憎んでいるのだから。」

「無駄ではありません。リリア様の努力は必ず報われます。」

リリア王妃の功績はジキル王には届かなかったかもしれませんが、ティリンス王子はリリア王妃に気づいてくれました。

「もう、そんな慰めは聞き飽きたわ。暫く一人にして頂戴。」

リリア王妃の心が限界を超えているのはよくわかりました。今、何を言ったところできっとリリア王妃は信じないでしょう。アンドリューは黙って部屋を出ました。

(明日になればきっと、ティリンス王子がリリア王妃を救ってくださる。)

アンドリューの心は、大きく揺れていました。もっと自分に力があれば、リリア王妃を救ってあげられたのではないか、その思いが頭を駆け巡っていました。

「馬鹿だな。」

アンドリューは自分に向けて呟きました。ティリンス王子によってリリア王妃が救われるのですから、これ以上良いことはないはずです。

それにも関わらず、アンドリューは少し苦しく思いました。叶わぬ恋だとは最初から分かっていたはずなのに、ずっと側にいる間に勘違いをしてしまったようです。

   
   ◇◇◇
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