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8.再会した"王と王妃"

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「ティリンス王子!!」

本宮を後にするティリンス王子にアンドリューは大声で呼びかけました。

ティリンス王子はカーネリアン国の人気者です。元々ティリンス王子は愛人の子、という身分から他の兄弟に苛められ苦しい幼少時代を過ごしました。しかし、ティリンス王子は優秀な頭脳を武器に地位を高め、今では誰からも認められ尊敬される王子になっています。

(ティリンス王子ならば、リリア王妃を受け入れてくださるかもしれない。)

「なんだい?」

ティリンス王子は興味深そうにアンドリューを見ました。柔らかい茶色の髪に緑の目。整った顔立ちをしています。

アンドリューは名乗り、リリア王妃の騎士をしていることをティリンス王子に伝えました。

「君がリリア様の騎士なのか。ちょうどこれからリリア様を尋ねにいこうと思っていたんだ。彼女のために綺麗なバラも持ってきたしね。」

ティリンス王子は満足そうに笑いました。ティリンス王子は本当にリリア王妃を訪ねてきたようです。

「リリア様が本宮にいないことを知っていたのですか?」

「まあ、リリア様の噂は村のみんなから聞いてきたんだよ。あんまりにもジキルが酷いから、ちょっと虐めてやりたくてさ。」

アンドリューは呆気にとられて、ティリンス王子を見ました。ティリンス王子は初めからリリア王妃の事情を全て知った上でタンサルト国に来たようです。

「それよりさ僕の服、リリア様はどう思うかな?」

アンドリューは言葉に迷いました。ティリンス王子はカーネリアン国特有の服を着ています。この国では見慣れませんが、ティリンス王子によく似合っています。

「似合っていると、おっしゃるはずです。」

なぜ、そのようなことを気にするのでしょうか。

「僕はこれから、リリア様にお慕いしていることを伝えるつもりなんだ。」

ティリンス王子は照れくさそうに言いました。事情を聞くと、一度商談の場で見かけたリリア王妃のことが忘れられなくなってしまったらしいのです。リリア王妃の不幸な境遇を聞いて、いても立ってもいられなくなったティリンス王子はついにタンサルト国にやってきたのでした。




  ◇◇◇


「許さぬ!!」

その頃タンサルト国本宮ではジキル王が怒りに震えていました。こんなにも、誰かに馬鹿にされたのは初めてです。

しかも、あのティリンスとかいう男はリリア王妃のことを庇っていました。

「あの女は誰よりも不幸であるべきなのだ!!そうなって当然の罪をあの女は負っているのだ!!」

ジキル王は上手く行かないことを全てリリア王妃のせいにしていました。ジキル王にとって父が死んだことも、政治が上手く行かないことも、全てリリア王妃のせいでした。

「いままで生かしてやっていたが、そろそろそれも終わるべきなのだ、、、。」

国民の人気がリリア王妃に集まっていることも、ジキル王には到底見過ごせないことです。リリア王妃を処罰するための準備をジキル王は少しずつ整えていました。

「いまにみていろ、、、!」

ジキル王の怒りを察知して、会場は静まり返ったままです。ティリンス王子が去って少し経ちましたが、皆黙ってジキル王の様子を伺っています。静かな本宮に一人の女性の声が響きました。

「陛下!!」

一斉に、人々は声の主の方を向きました。そこに立っていたのは、黒髪に黒い瞳の美しい女性。タンサルト国王妃リリアでした。

「お話があって参りました。」

なんということでしょうか。リリア王妃の側にアンドリューはいません。アンドリューが北宮に帰る前に、リリア王妃が本宮に来てしまったのです。


  ◇◇◇

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