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3.素晴らしい"王妃様"
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リリア王妃の必死の働きにより、タンサルト国は少しずつ豊かになっていきました。それと共に、タンサルト国の人々はリリア王妃を慕い始めました。
"リリア王妃様はタンサルト国を救ってくださる"
タンサルト国の人々の言葉です。北宮に住む可哀想な"お飾り正妃様"が国を豊かにしてくれている。王に冷たくされているにも関わらず、タンサルト国のために尽くしてくれている。大国フラリア国に怯えていた国民にとって、リリア王妃の存在は大きな希望でした。
「素晴らしいです!リリア王妃!カナル国との貿易は大きな利益を生んでいます!」
北宮に来たタンサルト国の大臣がリリア王妃を褒め称えました。
「皆さんの協力のおかげですわ。」
リリア王妃はいつも謙虚に周りの人を褒めます。これによって城の人間はますますリリア王妃を慕いました。
(よく、これほどまでに力をつけられた。)
アンドリューは少し離れた場所からリリア王妃を見つめました。リリア王妃が仕事を任されるようになってから4年の月日が経っています。
「リリア王妃は本当に貿易の才能に優れてらっしゃる。」
大臣はそう言って褒めますが、今の成功はリリア王妃の血の滲むような努力の賜物です。
これまで閑散としていた北宮には城の役人が沢山、訪ねて来るようになりました。今や、国の政治の中心となっているのはジキル王ではなくリリア王妃でした。
しかし、ジキル王は未だにリリア王妃を王妃として扱おうとしません。
◇◇◇
リリア王妃は長い間、不眠に苦しんでらっしゃいます。眠れないリリア王妃の話し相手になるのは、アンドリューでした。リリア王妃はベットにもたれかかって、タンサルト国本宮の方向を見つめます。
「なぜ、陛下は私を王妃として認めてくださらないのかしら、、、?」
リリア王妃のお心は未だに悲しいままでした。国が豊かになれば、ジキル王がリリア王妃を愛してくれるとリリア王妃は未だに信じていました。
「私には陛下のお心はわかりませんが、きっとリリア様の功績を褒めていらっしゃいますよ。」
アンドリューはリリア王妃に言いました。それは、真実ではありません。ジキル王はリリア王妃の力が増してくることを快く思っていないことは、多くの人間が知っていました。ですが、リリア王妃に真実を伝えられないのです。リリア王妃が聞きたい言葉がアンドリューには手に取るようにわかりました。
「明日の私の誕生日には、陛下はお祝いを言ってくれるかしら?」
リリア王妃の25歳の誕生日は近づいていました。いままで一度もジキル王がリリア王妃の誕生日を祝ったことはありません。リリア王妃も本当は気づいているはずなのです。ジキル王がリリア王妃を愛する日は来ないことを。
(何と言うべきなのか。いつものように、リリア様の聞きたい言葉を伝えて、それでリリア様が救われるのか?)
アンドリューには分かりませんでした。リリア王妃が心の内を話せる相手はアンドリューだけです。自分と話している間だけでも、リリア王妃の心が安らいでほしいとアンドリューは願っていました。
「きっと、陛下はリリア様の誕生日を祝ってくださいます。」
アンドリューは、必死で笑顔を作りました。この言葉が嘘だとリリア王妃に気づいてほしいとアンドリューは思っていました。当たり障りの無い、つまらない言葉しか並べられない自分を馬鹿だと一蹴してくれたなら、どんなにいいでしょう。
「アンドリュー、貴方は、、本当に優しい人だわ。」
リリア王妃は小さく笑うと、ゆっくり目を閉じました。
「これ以上、なにを頑張ればいいのかしら?」
もうリリア王妃はなにも頑張らなくてもいいはずです。これ以上の苦しみをリリア王妃に与えるなんて、あまりにも酷すぎます。
「リリア様はタンサルト国を豊かにしているのです。リリア様ほど素晴らしい王妃はいないのですよ。」
アンドリューはリリア王妃の手を強く握りました。無礼な行為であることはわかっています。ですが、こうしていなければリリア王妃がいなくなってしまうような気がしました。
"リリア王妃様はタンサルト国を救ってくださる"
タンサルト国の人々の言葉です。北宮に住む可哀想な"お飾り正妃様"が国を豊かにしてくれている。王に冷たくされているにも関わらず、タンサルト国のために尽くしてくれている。大国フラリア国に怯えていた国民にとって、リリア王妃の存在は大きな希望でした。
「素晴らしいです!リリア王妃!カナル国との貿易は大きな利益を生んでいます!」
北宮に来たタンサルト国の大臣がリリア王妃を褒め称えました。
「皆さんの協力のおかげですわ。」
リリア王妃はいつも謙虚に周りの人を褒めます。これによって城の人間はますますリリア王妃を慕いました。
(よく、これほどまでに力をつけられた。)
アンドリューは少し離れた場所からリリア王妃を見つめました。リリア王妃が仕事を任されるようになってから4年の月日が経っています。
「リリア王妃は本当に貿易の才能に優れてらっしゃる。」
大臣はそう言って褒めますが、今の成功はリリア王妃の血の滲むような努力の賜物です。
これまで閑散としていた北宮には城の役人が沢山、訪ねて来るようになりました。今や、国の政治の中心となっているのはジキル王ではなくリリア王妃でした。
しかし、ジキル王は未だにリリア王妃を王妃として扱おうとしません。
◇◇◇
リリア王妃は長い間、不眠に苦しんでらっしゃいます。眠れないリリア王妃の話し相手になるのは、アンドリューでした。リリア王妃はベットにもたれかかって、タンサルト国本宮の方向を見つめます。
「なぜ、陛下は私を王妃として認めてくださらないのかしら、、、?」
リリア王妃のお心は未だに悲しいままでした。国が豊かになれば、ジキル王がリリア王妃を愛してくれるとリリア王妃は未だに信じていました。
「私には陛下のお心はわかりませんが、きっとリリア様の功績を褒めていらっしゃいますよ。」
アンドリューはリリア王妃に言いました。それは、真実ではありません。ジキル王はリリア王妃の力が増してくることを快く思っていないことは、多くの人間が知っていました。ですが、リリア王妃に真実を伝えられないのです。リリア王妃が聞きたい言葉がアンドリューには手に取るようにわかりました。
「明日の私の誕生日には、陛下はお祝いを言ってくれるかしら?」
リリア王妃の25歳の誕生日は近づいていました。いままで一度もジキル王がリリア王妃の誕生日を祝ったことはありません。リリア王妃も本当は気づいているはずなのです。ジキル王がリリア王妃を愛する日は来ないことを。
(何と言うべきなのか。いつものように、リリア様の聞きたい言葉を伝えて、それでリリア様が救われるのか?)
アンドリューには分かりませんでした。リリア王妃が心の内を話せる相手はアンドリューだけです。自分と話している間だけでも、リリア王妃の心が安らいでほしいとアンドリューは願っていました。
「きっと、陛下はリリア様の誕生日を祝ってくださいます。」
アンドリューは、必死で笑顔を作りました。この言葉が嘘だとリリア王妃に気づいてほしいとアンドリューは思っていました。当たり障りの無い、つまらない言葉しか並べられない自分を馬鹿だと一蹴してくれたなら、どんなにいいでしょう。
「アンドリュー、貴方は、、本当に優しい人だわ。」
リリア王妃は小さく笑うと、ゆっくり目を閉じました。
「これ以上、なにを頑張ればいいのかしら?」
もうリリア王妃はなにも頑張らなくてもいいはずです。これ以上の苦しみをリリア王妃に与えるなんて、あまりにも酷すぎます。
「リリア様はタンサルト国を豊かにしているのです。リリア様ほど素晴らしい王妃はいないのですよ。」
アンドリューはリリア王妃の手を強く握りました。無礼な行為であることはわかっています。ですが、こうしていなければリリア王妃がいなくなってしまうような気がしました。
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