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11.好きなんだよ

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「実はそうなんだよ~よくわかったねぇ。シーくん!」

 ーーーー気づいてくれて嬉しいぞ、シーくん!

 「あまりにも、アリーチと師匠は違う人間すぎるんです。」

「ま、そうね。けど、なんでアリーチの中身がラウラになってるってわかったの?ほかにも人はいっぱいいるじゃん?」

「ヴァンブリード家の令嬢が突如ラウラ・アップルを虐めなくなったと噂になっていましたから。これまでの暴挙が嘘のようにおとなしくしているとみんな不思議がってました。」

「ほう。」

「僕、師匠に会いたくて、ラウラ・アップルのところに言ったんですが、態度があまりにも違ったんです。最初、大けがを負っておかしくなったのかと思ったんですけど、もしかしたら、入れ替わっちゃったのかなって。」

 平然と言うシモンズ。

「よくあることなの?」

「いいえ。こんなこと現実にあるとは信じられませんでしたが、ま、実際に起こっているから、信じるしかないですよ。」

「ま、そうだね。」

 シモンズのサッパリした物分かりの良い性格が正直ありがたい。

 ーーーー必死で元の姿に戻そうと頑張られても困るしね。

 入れ替わったって、何の不自由もしていない。これから、自由に世界中を旅するのだから。

「今、中身がお師匠ではない偽物のラウラと、国王リッカルドが大げんかしているのを知っていますか?」

「あーやっぱり喧嘩しちゃったかぁ。」

 予想はできていた。あの高飛車なお嬢様は、意地でも自分の性格を変えないだろうって。もともとのアリーチ・ヴァンブリードだった時に、なんでリッカルドが彼女を遠ざけたか、もう少し考えてもよかったのにね。

「はい。激変して、強気になったラウラをリッカルドは嫌気が差したらしく……婚約破棄すると言い出しています。」

「だーから、大人しくしてるように言ったのになぁ。」

 ーーーーせっかく入れ替わりに成功しても、また婚約破棄されたら、意味ないじゃん!あれ?これ、実は私だけ得を下のでは?

「リッカルドに婚約破棄されて、怒りくるったラウラがアリーチを国外追放するようにと命じたようですが……リッカルドの方は逆にアリーチとよりを戻そうとしているみたいですよ。」

 シモンズの言葉にアリーチは震えあがる。

 ーーーーそれってつまり私とよりを戻そうとしてるってわけよね?!

「ひええええ!なんでぇ?!」

「どうも、最後に会って話した時のことが忘れられないみたいで。まあ、中身は師匠ですもん。」

 ーーーーもっと警戒して、アリーチっぽく高飛車にふるまえばよかったぁぁぁ!

「いやだあああ!リッカルドの婚約者に逆戻りだなんて、勘弁してええええ!」

 アリーチが頭を抱えていると、シモンズはにっこり笑ってアリーチに手を差し出した。

「そう思ったので、迎えに来ました。師匠!」

「へ?どゆこと?」

「僕は師匠のことがずっと好きでした。リッカルドなんかに渡したくないと、ずっと思っていたんです。」

 ーーーーえーと、えーと……?

「いや、でも見た目アリーチだし……。」

「関係ないですよ。お師匠!ね、お師匠。僕と一緒に、逃げませんか?僕とでは嫌ですか?」

「いいよ。」

「あ?お師匠照れてます?」

 顔が熱い。

 ーーーー嬉しいに決まってるじゃん。だって、アリーチに生まれ変わって唯一悲しかったことが、もうシーくんと一緒にいられないことだったんだから。

「あたし、お城で刺されてさ、もう死ぬんだあって思ったとき、シーくんの顔が思い浮かんだんだよね。」

「え……。」

 シモンズの顔が固まり、アリーチはにっこり笑った。

「そん時思ったんだ、私はシーくんがすきだったんだぁってね。」

 シモンズの顔が真っ赤に染まった。

「師匠……ずるいです!」

「ふふふ!一緒に行こう!シーくん!あたしたちは自由だ」よ!
 
 何者かに殺されかけて、悪役令嬢アリーチ・ヴァンブリードと入れ変わってしまったラウラ・アップル。彼女は入れ替ってしまったことを全く気にすることなく、シモンズと共に、自由な旅に出たのでした。
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