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9 国外追放?!
しおりを挟むそれから一週間、アリーチはヴァンブリード家の令嬢としての日々を過ごしていた。皇太子に婚約破棄された令嬢が課せられることは特にない。
おいしいご飯を食べ、のんびり散歩をして、完全なる優雅な暮らしを楽しんでいた。
「いじめられない生活、最高!」
――――これって最高の展開じゃない?
リッカルドと結婚したくなかったラウラがアリーチに生まれ変わり、なんとしてもリッカルドと結婚したかったアリーチがラウラに生まれ変わった。
――――ハッピーエンドすぎるでしょー!
最高の気分でアリーチがのんびりしていると、ヴァンブリード伯爵が恐ろしい表情で部屋に入ってきた。
――――何事ー?
「アリーチ!お前に国外追放の命令が下った!」
「へ?」
予想外の言葉に、あんぐりと口が開いてしまう。
「リッカルドの婚約者ラウラ・アップルに危害を加え、命を脅かした罪だそうだ!ラウラの訴えによって、リッカルド皇太子が決断を下したのだ!」
「ええっと……。」
ぽりぽりと頬をかく。ラウラをいじめていたのは、入れ替わる前のアリーチ自身である。それにも関わらず、いじめを理由にアリーチを国外追放しようとは、やはりなかなかの悪女だ。
「今すぐにでも、国を出て行けとのお達しだ……ラウラの奴……人が変わったように、逆らう人間に罰を下し始めたのだ。このままではヴァンブリード家も危ない!」
どうやら正式な婚約者に入れ変わったラウラは、アリーチ時代にはできなかったことをしようとしているらしい。私を国から追い出すのも、邪魔。
――――リッカルドに愛想をつかされないといいけど。
元々リッカルドは、アリーチの気の強さに恐れをなして、彼女を婚約破棄従っていた。いくら見た目が変わったとは言え、疑われるようなことはあまりしない方がいいと思うんだけどね。
「何をへらへらしておる!我が家に泥を塗りやがって!お前にはいい加減に愛想が尽きた!」
――――ま、いっか。この家の暮らしにも退屈してたとこだしね。
アリーチは簡単に状況を受け入れ、苦笑いしながら言う。
「愛想が尽きたは、こっちのセリフだ!でも、いいよ、お父さん。皇太子の婚約者様が言うならしょうがないよね。」
「いい加減にしろ!今すぐこの家を出ていけ!」
「はーい!せいせいするね!」
アリーチは元気よく返事をすると、最低限の荷物を詰めて、ヴァンブリード家を飛び出した。
「もう二度と帰ってくるなよ!」
「言われなくても!」
一文無しで家を追い出され、ヴァンブリード家に絶縁されたが、アリーチは対してショックを受けていなかった。
――――まぁ、何とかなるでしょう。もともとアリーチ・ヴァンブリードじゃなかったんだしね。
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