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28.再会

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騎士はルネアの育ての父デルで間違いなかった。育ての父でなければルネアのことを、騎士はよく知っていたのだ。

「まさかルネアが私の剣を抱きしめなければ、眠れなくなるとは思いませんでしたが・・・。」

そう言ってデルはどこか遠くを眺める。

「また今度、ルネアについて詳しく教えてください。」

俺は丁寧な口調でデルに頼んだ。
ルネアの父と思うと、偉ぶるわけにはいかない。

「勿論です。それからルカ様、事が落ち着いたら貴方と話したい事があります。」

デルは深刻な顔で俺に言った。
父として、娘を頼むとかそういう話か・・・?

「分かりました。お父さん。」

俺は恭しくそう返事をすると、デルは目を細めて優しい表情で笑った。

「ルネアが、ルカ様をお守りしているのは・・・きっと運命なのでしょう・・・。」

そうポツリと呟いたデル。
運命・・・?一体どういうことだ・・・?

「さあ、行きましょう。ルネアは城の外れの倉庫の中に閉じ込められています。」

そう言ったデルはルネアの剣を手に取り、大事そうにぎゅっと抱きしめた。

「申し訳、ありません・・・。俺が不甲斐ないせいで・・・。」

思わず、謝罪の言葉が口をつく。

「いいのです。ルネアはずっと誰かを守りたいと心の底から望んでいたのですから。」

デルは小さく首をふった。

城から少し離れて西の森に入る。森の影から小さな倉庫が見えた。あそこにルネアが閉じ込められているのか。

「ルネアは私が助けに参ります。ルカ様は・・・この裏を抜けて先に城から脱出してください。」

言いづらそうに、デルが言う。確かにルネアを助ける為に、俺は足手まといだ。本当はルネアを自分で助けたい。だが俺は・・・正義のヒーローになるための力がない。

「分かりました。ルネアを頼みます。」

「任せてください。この森を抜けて城の外に出ると、右手に大きな酒屋があります。そこで待っていてください。」

デルならきっとルネアを救ってくれる・・・なんせルネアの師匠だ。俺のすることは、感情に任せてデルに着いていくことじゃない。

"自分の力の無さを認めて逃げる"
それが今の俺にできる最善の方法だ。

デルがルネアを助けてくれることを信じて、俺は城の外に向かって走り出した。



   ◇◇◇



SIDE ルネア


見張りが交換するタイミング。私、ルネアはそれを待っていた。手首の縄はすでに解き、いつでも動ける状態にしている。

ーー鍵さえ開けられれば、いつでも逃げられる
 
ドンドンドン!

外から倉庫のドアを叩く音がする。

「交代の時間だ!」

あれ・・・?
私はその声に妙に聞き覚えがあった。懐かしい、大好きな人の声。

まさかね・・・彼が今ここに現れるはず無い。集中して、逃亡のタイミングを図るの・・・。

「もうそんな時間か・・・。」

見張りの一人が懐から鍵を取り出し、内側から鍵を開ける。すると現れたのは、全身を甲冑で覆った一人の騎士。背に真っ黒い大剣を背負い、右手には私の剣を持っている。

嘘・・・。

私は自分の目が信じられなかった。
そこに現れたのは、私の師匠デル。5年前に姿を消したっきり、一度も会えていなかった大切な人。甲冑でその姿が見えなくても、はっきりと師匠だと分かった。

「お前は・・・誰だ?」

見張りが怪訝な顔で首をかしげた時。師匠は目にもとまらぬ早さで見張りの男をなぎ倒した。

「ルネア!!」

そして右手で私に向かって大剣を投げる。
師匠・・・本当に師匠が助けに来てくれたんだ!

「"お前の守りたい人"は無事だ!さっさと逃げるぞ!!」

そう師匠は叫んだ。

師匠はルカ様を先に助けてくれたんだ。
いつから側で見守っていてくれたんだろう。こんな場面なのに・・・だめだ、目がうるんでくる。

師匠と二人がかりなら、4人の見張りを倒すことは容易だった。師匠は私の十倍強い。

見張りを倒し、森の中を走って逃げる。

「ししょう・・・。」

声が震える。

「油断するな。まだここは敵の範囲内だ。」

「は、はい・・・!」

森の裏を抜けて城から抜け出すと、師匠は甲冑を外した。

「久しぶりだな。ルネア。」

「師匠・・・!」

5年ぶりに見る師匠は昔と変わらず精悍な顔つきをしている。だが、白髪は昔より増えていて、確かに5年の歳月を感じた。

「強くなったな、ルネア。焦らずに、よく待ったよ。」

優しい口調で師匠が褒めてくれた。
騙されて、みっともなく誘拐された私なのに・・・。

師匠の言葉で、堪えていた涙が溢れてくる。

「まさか・・師匠が助けに来て・・くれるなんて・・・思いませんでした・・・。」

師匠はぽんぽんと、優しく私の頭を撫でてくれた。

「泣き虫は変わらないな。ルネア。
 さぁ、行こう。ルカ様が待っている。」

「はい!!」

だめだ。師匠の前だと子供っぽくなってしまう。心の中は喜びでいっぱいだった。


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