【完結】寝盗られて離縁しましたが、王子様の婚約者(仮)として溺愛されています!

五月ふう

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22.国王様

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「父上が待ってる。行こう。ルネア。」

「はい・・・!」

正装に着替えたルカ様は、私に手を差し出した。ついにルカ様のお父様・・・国王様に挨拶に行くのだ。

メイドさんに髪を結い上げ、綺麗に化粧をしてもらった。鏡に映る自分はまるで私じゃないみたいだ。

「綺麗だよ。ルネア。」

そう言ってルカ様が私の腰に手を回す。

「・・・あの!」

「転ばないようにささえるよ。」

これはただのエスコート。
大袈裟に反応してしまって恥ずかしいわ・・・。

ルカ様に手を引かれ、国王様の部屋に向かう。

「緊張してる?」

「はい・・・とても。」

ルカ様より5歳歳上。孤児。離婚歴あり。
誰がどう考えても、私とルカ様は不釣り合いだ。

婚約を認めてもらうなんて無謀なんじゃないか・・・そんな思いで胸がいっぱいだった。

ついに、国王の部屋の前まで来ると、ルカ様は緊張する私に言う。

「心配しなくてもだいじょうぶ。きっと父上は婚約を認めてくれるよ。」

「・・・そうだといいのですが・・・」

ルカ様が声をかけると、国王の部屋を守る衛兵が扉がゆっくりと開けた。

そこには、長い白髪の男性がこちらに背を向けて立っている。

あの方が・・・国王様?

「父上!挨拶に参りました。」

ゆっくりと振り返った国王様は大きな笑みを浮かべていた。

「はじめまして。ルネア。ルカの父のガーラン・ステフィスだ。」

穏やかな声だ。深緑の瞳がルカ様とよく似ていた。

「お初にお目にかかります。私、ルネア・マリーと申します。」

「ルネアに会えるのを楽しみにしていたんだよ。誰とも婚約しようとしなかったルカが連れてきた人だからね。」

ガーラン様の言葉に驚いて、私はルカ様を見る。

「好きな人ができるまで婚約はしないと、父上に言っていたんだよ。」

ルカ様は嬉しそうに言った。

それではなぜ、出会ったばかりの私と婚約(仮)をすることを決めてしまったのですか・・・? 

"好きな人"
私は偽物の婚約者だから、その条件には当てはまりませんか?

ドレスを持ち上げ、私は慎重に席についた。隣にルカ様、正面にはガーラン様が座っている。

心臓が大きく音を立てている。

「ルネアは騎士をしていると聞いたよ。ステフィス国唯一の女騎士。噂には聞いていたが、こんなにも美しい人だとは思わなかったよ。」

そんな勿体ないお言葉を・・・!

「そうでしょう?私もルネアに出会って一目で彼女を好きになってしまいました。」

ルカ様まで・・・!
私はなんと言えばいいのでしょう?

「わ、わたしもルカ様のお優しさに日々感動しております・・・!」

ぎゅっと拳を握りしめて言うと、ガーラン様が声をあげて笑った。

「そうか、そうか。二人は本当に想い合っているのだな。」

ガーラン様は嬉しそうにルカ様を見つめる。その瞳には、大きな愛情が感じられた。

「父上・・・私とルネアの婚約を認めてくれますか?」

ルカ様の言葉にガーラン様が大きく頷いた。

嘘・・・!

「勿論だよ。ルカには・・・愛する人と結婚してほしいとずっと思っていたんだ。

ルネアさん。」

「は、はい!」

国王様から了承をもらい、呆けていた私は急に名前を呼ばれて我に返った。

「ルカの正式な婚約者になれば、これまで以上に大変なことが増えるだろう。そうなったとしても、ルカを支え愛してくれるかい?」

「はい・・・!」

すぐに、返事をしてから気がつく。
私は本当の婚約者じゃない。

だけど、何があったとしてもルカ様を支えて生きたい想いは本当だ。

「ルカは・・・18歳の誕生日まで命を狙われ続けるだろう。君にも、危害が及ぶかも知れない・・・。この状況を止められない力なき父を許してくれ・・・。」

ガーラン様は静かに頭を下げた。
ステフィス国におけるガーラン様の権力は大きくないと聞いたことがある。

この国の実権を握っているのは、ガーラン様の正室ミラルノ様の実家。恐らく、彼らがルカ様の命を狙う黒幕だ。

「国王様・・・。お顔を上げてください。だいじょうぶです。私がルカ様を絶対にお守りしますから。」

ガーラン様は顔をあげ、ゆっくりとまばたきを繰り返した。

「・・・」

「おまかせください。私は、騎士ですから。」

ガーラン様は何も言わず、私を凝視している。
いけない・・・失言だったのかしら・・・。

「どうしたのですか?父上?」

ガーラン様は、はっとした表情で首を振った。

「ああ、大したことではないのだ。ルネアはアリアに似ていると思ってな。やはり、母に似た人を好きになると言うが、育ての母でもそうなのだな。」

シャッキーさんも同じことを言っていたな。行方不明のアリアさん。いつかお会いしてみたいな。アリアさんが帰ってくる時まで私がルカ様の婚約者でいられるか、わからないけれど。

「・・・関係ないと思いますけど。」

ルカ様が恥ずかしそうに肩をすくめた。

それから少しの時間話をしたあと、ガーラン様の公務の時間になった。

「それではな。二人仲良く・・・なんとか、生き延びてくれ。」

「はい。父上も体に気をつけて。」

部屋を出る私達を、ガーラン様は優しく見守ってくださった。

ルカ様の周りの人は皆、優しい人ばかりだ。

また、悲しませたくない人が増えてしまったわ・・・。

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