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15.誤解
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私に抱きつくルカ様を見たトンプソンは、頭を押さえてうつむいた。
「あの・・・。俺は、お邪魔でしょうから、退散します。ルネア、幸せになれよ。」
「あ、ありがとう!あの!ルカ様・・・!」
どうやらトンプソンを驚かせてしまったようだが、私はそれどころじゃない。
恥ずかしさと、ルカ様に抱きしめられた驚きでどうしたらいいかわからないのだ。
酷く動揺している私を見て、ルカ様が慌てて私を離した。
「ごめんな。つい、ルネアの言葉が嬉しくてさ。」
この場で唯一、私達の婚約が偽だと知っているクアイ様も驚いた顔をしている。
「おいおい。ルカ。いつの間にそんな情熱家になったんだ?すっかりルネアに虜じゃ無いか。」
違いますよ!クアイ様!これが偽の婚約だって知ってるでしょう?!
「なあ、ルカ。久しぶりだし、お酒でも飲まないか?」
と、クアイ様が提案する。
「良いですね!二人の馴れ初めをもっと詳しく聞きたいですし!」
アンも乗り気だ。
どうしましょう。あまり詳しく聞かれてはアンに嘘がバレてしまうのでは・・・
だが、ルカ様は上機嫌で頷いた。
「いいぞ。この間ちょうど梅でお酒を作ったところだったんだ。ルネアも、明日の父上への挨拶で緊張してるからな。」
ルカ様の言葉で明日の謁見についてまた思い出してしまった。
「確かに・・・お酒を飲んだら気が楽かもしれませんね。」
私はお酒を飲んでもあまり変わらない。戦闘に影響しない程度に留めておけば、問題ないだろう。
◇◇◇
ダイニングルームから場所を移し、リビングルームでお酒を飲むことになった。そのため私は急いでルカ様のベットの前のソファーを移動させていた。
ちょうど今アンが厨房にお酒を取りに行っている。変に勘ぐられる前に無事移動できたと思ったのだが・・・
「なんで、ソファーの上に枕と布団が乗ってるんだ?」
リビングルームに入ってきたクアイ様に気付かれてしまった。ルカ様はまだキッチンにいるらしく姿は無い。
「あの・・・警備の為です。」
上手い言い訳が思いつかず、私は事実を言ってしまう。案の定、クアイ様は顔をしかめた。
「ルネアはいつも、ソファーの上で寝てるのか?」
なんと答えるべきだろうか。クアイ様は私とルカ様が偽の婚約者である事を知っている。正直に話していいかもしれない。
「そうです。ルカ様を守る為にこのソファーで眠っています。」
クアイ様は申し訳なさそうに言う。
「すまないな。婚約者のふりだなんて、大変な事だらけだろう。」
「いいえ。ルカ様を守る日々はとても幸せですよ。」
クアイ様に安心してもらえるよう笑顔で答えた。
「そうか・・・」
クアイ様は少し黙った後、私の目をまっすぐに見て尋ねた。
「ルネアは・・・ルカのことが好きなのか?俺は事情を知っているから、嘘をつかず正直に答えてくれ。」
私は俯いて、両手をぎゅっと握りしめた。ルカ様をどう思っているのかなんて、考えたってしかたないのに。
「好きなわけないじゃないですか。」
そう小さい声で答えた。
「そうか・・・踏み込んだ事を聞いて悪かったな。ルカもあの様子だし、少し気になってしまってな。」
確かにルカ様は私を婚約者(仮)として大切にしてくれている。だけど、それ以上でもそれ以下でもない。
クアイ様に小さく頭を下げて、ルカ様がいるキッチンに戻ろうとしたのだが・・・
「ルネア。苦しくなったら、偽の婚約者なんてやめていいからな。」
クアイ様は穏やかな口調で私に言った。
「え・・・?」
「騎士だからとか、ルカが王子だからとか気にしなくていいんだ。ルネアがルカの婚約者でいるのが苦しくなったら、俺がルカに伝えるよ。」
どうしてそんなことを言うのだろう?私ではルカ様の婚約者(仮)として力不足だということなのだろうか。
鼓動が早まる。唾を飲み込んで真意を聞き返そうとしたとき、
「何を話してるんですか?お酒を調達してきました!ね、飲もう!ルネア!」
お酒を抱えたアンが部屋に帰ってきた。
アンの前で話を続けるわけにはいかない。
「クアイと二人きりで変なことをされなかったか?」
おつまみを手に持ったルカ様が私の隣に座る。
「おいおい。嫉妬深い男は嫌われるぞ。ルカの婚約者に俺が何かするわけないだろう。」
クアイ様はルカ様の肩を抱いて、私にウィングをした。
もしかしたらクアイ様は、私のルカ様への気持ちに気がついているのかもしれない。
ルカ様の事を好きになってしまっては、騎士としての役目を果たせない。ルカ様への好意を制御できなくなったら、婚約者(仮)をやめろ。
きっとクアイ様が言いたかったのは、そういうことだ。
「何を話していたんだ?」
まだ気になる様子のルカ様。
「騎士としての心構えを、クアイ様にご指導頂いたのですよ。」
口を尖らせたルカ様に伝えた。
「騎士としての心構え?クアイが?」
「そうです。」
私は深く頷いた。
アンに婚約を認めてもらえそうなのは安心だ。だけど、クアイ様のいうとおり、ルカ様への接し方はもう少し気をつけるべきなのかもしれないな。
「あの・・・。俺は、お邪魔でしょうから、退散します。ルネア、幸せになれよ。」
「あ、ありがとう!あの!ルカ様・・・!」
どうやらトンプソンを驚かせてしまったようだが、私はそれどころじゃない。
恥ずかしさと、ルカ様に抱きしめられた驚きでどうしたらいいかわからないのだ。
酷く動揺している私を見て、ルカ様が慌てて私を離した。
「ごめんな。つい、ルネアの言葉が嬉しくてさ。」
この場で唯一、私達の婚約が偽だと知っているクアイ様も驚いた顔をしている。
「おいおい。ルカ。いつの間にそんな情熱家になったんだ?すっかりルネアに虜じゃ無いか。」
違いますよ!クアイ様!これが偽の婚約だって知ってるでしょう?!
「なあ、ルカ。久しぶりだし、お酒でも飲まないか?」
と、クアイ様が提案する。
「良いですね!二人の馴れ初めをもっと詳しく聞きたいですし!」
アンも乗り気だ。
どうしましょう。あまり詳しく聞かれてはアンに嘘がバレてしまうのでは・・・
だが、ルカ様は上機嫌で頷いた。
「いいぞ。この間ちょうど梅でお酒を作ったところだったんだ。ルネアも、明日の父上への挨拶で緊張してるからな。」
ルカ様の言葉で明日の謁見についてまた思い出してしまった。
「確かに・・・お酒を飲んだら気が楽かもしれませんね。」
私はお酒を飲んでもあまり変わらない。戦闘に影響しない程度に留めておけば、問題ないだろう。
◇◇◇
ダイニングルームから場所を移し、リビングルームでお酒を飲むことになった。そのため私は急いでルカ様のベットの前のソファーを移動させていた。
ちょうど今アンが厨房にお酒を取りに行っている。変に勘ぐられる前に無事移動できたと思ったのだが・・・
「なんで、ソファーの上に枕と布団が乗ってるんだ?」
リビングルームに入ってきたクアイ様に気付かれてしまった。ルカ様はまだキッチンにいるらしく姿は無い。
「あの・・・警備の為です。」
上手い言い訳が思いつかず、私は事実を言ってしまう。案の定、クアイ様は顔をしかめた。
「ルネアはいつも、ソファーの上で寝てるのか?」
なんと答えるべきだろうか。クアイ様は私とルカ様が偽の婚約者である事を知っている。正直に話していいかもしれない。
「そうです。ルカ様を守る為にこのソファーで眠っています。」
クアイ様は申し訳なさそうに言う。
「すまないな。婚約者のふりだなんて、大変な事だらけだろう。」
「いいえ。ルカ様を守る日々はとても幸せですよ。」
クアイ様に安心してもらえるよう笑顔で答えた。
「そうか・・・」
クアイ様は少し黙った後、私の目をまっすぐに見て尋ねた。
「ルネアは・・・ルカのことが好きなのか?俺は事情を知っているから、嘘をつかず正直に答えてくれ。」
私は俯いて、両手をぎゅっと握りしめた。ルカ様をどう思っているのかなんて、考えたってしかたないのに。
「好きなわけないじゃないですか。」
そう小さい声で答えた。
「そうか・・・踏み込んだ事を聞いて悪かったな。ルカもあの様子だし、少し気になってしまってな。」
確かにルカ様は私を婚約者(仮)として大切にしてくれている。だけど、それ以上でもそれ以下でもない。
クアイ様に小さく頭を下げて、ルカ様がいるキッチンに戻ろうとしたのだが・・・
「ルネア。苦しくなったら、偽の婚約者なんてやめていいからな。」
クアイ様は穏やかな口調で私に言った。
「え・・・?」
「騎士だからとか、ルカが王子だからとか気にしなくていいんだ。ルネアがルカの婚約者でいるのが苦しくなったら、俺がルカに伝えるよ。」
どうしてそんなことを言うのだろう?私ではルカ様の婚約者(仮)として力不足だということなのだろうか。
鼓動が早まる。唾を飲み込んで真意を聞き返そうとしたとき、
「何を話してるんですか?お酒を調達してきました!ね、飲もう!ルネア!」
お酒を抱えたアンが部屋に帰ってきた。
アンの前で話を続けるわけにはいかない。
「クアイと二人きりで変なことをされなかったか?」
おつまみを手に持ったルカ様が私の隣に座る。
「おいおい。嫉妬深い男は嫌われるぞ。ルカの婚約者に俺が何かするわけないだろう。」
クアイ様はルカ様の肩を抱いて、私にウィングをした。
もしかしたらクアイ様は、私のルカ様への気持ちに気がついているのかもしれない。
ルカ様の事を好きになってしまっては、騎士としての役目を果たせない。ルカ様への好意を制御できなくなったら、婚約者(仮)をやめろ。
きっとクアイ様が言いたかったのは、そういうことだ。
「何を話していたんだ?」
まだ気になる様子のルカ様。
「騎士としての心構えを、クアイ様にご指導頂いたのですよ。」
口を尖らせたルカ様に伝えた。
「騎士としての心構え?クアイが?」
「そうです。」
私は深く頷いた。
アンに婚約を認めてもらえそうなのは安心だ。だけど、クアイ様のいうとおり、ルカ様への接し方はもう少し気をつけるべきなのかもしれないな。
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