7 / 38
7.反対
しおりを挟む
騎士団の東塔をでて、国王が住む本宮殿に向かう。
なんだか酷く緊張してきた。それに私は、いつもどおりの騎士団服のままだ。この服装のまま、国王に会っていいの・・・?
緊張で胸がいっぱいの私に対して、ルカ様はいつもどおりだ。楽しそうに繋いだ手を揺らしている。
「あの・・・ルカ様・・・。手を繫ぐのをやめませんか?」
王子と手を繋ぐ女騎士。
その姿はあまりにも目立つ。
しかも、ルカ様は私以外に二人護衛を連れているので、余計にわけが分からなくなっていた。
「どうして?皆に俺達の仲の良さを見せつけなきゃ。その方が父上に婚約を認めてもらやすいかもしれないだろ。」
本当に?王族たるもの秩序を持った行動をとか、言われる気がするんだけれども。
ステフィス国王の姿は遠くからちらりと見たことしかない。だが噂では真面目で厳しい人だと聞いたことがある。
「そうでしょうか・・・?」
私との偽の婚約によって、ルカ様の評判が落ちてほしくないんだけどな。
城内を歩き、本宮殿が近づく。
「それより、ルネア、前から言おうと思っていたんだけど・・・」
ルカが何か言いかけた時、何者かがルカに向かって矢を放つのが見えた。
「危ない!!」
私はルカ様の手を思い切り引く。
ヒュンッ
一本の矢が私の頬をかすめて、後ろの建物に刺さる。
ルカ様を狙ったのは誰・・・?
「ルカ様を頼みます!」
私は護衛の兵士に声をかけ、矢を打った人間を追いかける。だが先程見た場所にたどり着いた時、その姿は消えていた。
「ルネア!」
ルカ様が護衛を連れて、こちらに駆け寄ってくる。
「ルカ様、だいじょうぶですか?」
矢は真っ直ぐルカ様を狙っていた。やはり、彼は命を狙われているのだ。
「僕は、だいじょうぶだがルネアは綺麗な顔に傷が・・・。跡が残らなければ良いのだが・・・。」
心配そうに私の傷を覗き込むルカ様。
「だいじょうぶですよ。こんなのかすり傷です。それより、ルカ様が無事で良かった。」
にっこりと微笑んでみせる。
誰かを守りたくて騎士になった。誰かの為に命を張れることは幸せなことだ。
「医務室に行こう。」
「ほんとに平気ですよ?」
だがルカは治療が第一優先だと譲らなかった。こんな傷は体中にあるから、今更なのに。
「女の子なんだし、顔に傷が残ったら大変だろ!」
「はぁ・・・。」
その女らしさが欠片もないから、離縁されたわけで。もう、私は諦めているのだがルカ様はそうではないらしい。
「行くぞ!」
ルカ様に引っ張られて医務室に向かう。
心配してくれるのはありがたいけど、私はただの婚約者(仮)。いわば、ルカ様を守るための盾にすぎない。
「私なんかに、ありがとうございます。」
お礼を言うとルカ様は困った顔をした。
◇◇◇
東塔の隣にある医務室は昔からよくお世話になっている場所。同期の騎士の中でも、私は無茶をする方だったので、よく怪我をしてここに担ぎ込まれていた。
そのうちに医師の一人であるアンと親しくなり、今では友人として仲良くしている。
アンはルカ様と共に医務室に入ってきた私をみて、顔を顰めた。
「どういうこと?え、待って・・・リーブスに離縁されたんじゃ無かったの?なんで王子といるの?」
ルカ様がいるにも関わらず、アンはいつも通りの口調だ。
「えっと、これには事情があってね・・・。」
アンにはまだリーブスに離縁されたことを伝えてなかった。どこから説明したらいいのか・・・。
「そんなことより、怪我の治療をしてくれないか?ルネアが顔に傷を負ってしまったんだ。」
傷と言ってもじんわりと血がにじむ程度のかすり傷。
ルカ様に連れて来られなければ、わざわざ医務室に来なかっただろう。
「わかりましたけど・・・。事情は説明してもらうからね!」
アンに頬を治療して貰いながら、ルカ様は事実を少し変えたストーリーをアンに説明していた。婚約が(仮)だと言うことは、知られたくないからだ。
「ルネアがリーブスに離縁されて訓練場で泣いているところに、ちょうど出会ったんだ。そのあまりの美しさに、俺は一目惚れしてしまってな。家を追い出されて行く宛が無いというから、俺の部屋に来てもらったんだけど、すっかり意気投合してしまってね。ルネアと婚約の約束をしたんだ!」
ルカ様の命を守るための婚約(仮)という事実を隠すと、こんなにも嘘くさくなってしまうのか。
王子が私に一目惚れなんて、あり得ない。
アンは腕を組んで難しい顔をしている。やっぱり信じられないよね。
「ルカ様がルネアに一目惚れしたことは理解できました。」
へ?
「だけど、ルネアがルカ様との婚約を了承したのが納得できません!ねぇルネア。本当にルカ様が好きなの?好きじゃないのに、家が無いからって婚約を了承しちゃったんじゃないでしょうね?!」
アンは早口でまくし立てた。
「え、えーと?」
「家が無いなら、私の家に泊めてあげるから、好きじゃ無いのにルカ様と結婚しちゃだめ!!私はルネアの姉代わりとして、絶対に認めませんからね!!」
心配してくれるのはありがたいのだが、これはたった一ヶ月間の婚約者(仮)にすぎないわけで。
さて、どうしたらいいのか・・・?
なんだか酷く緊張してきた。それに私は、いつもどおりの騎士団服のままだ。この服装のまま、国王に会っていいの・・・?
緊張で胸がいっぱいの私に対して、ルカ様はいつもどおりだ。楽しそうに繋いだ手を揺らしている。
「あの・・・ルカ様・・・。手を繫ぐのをやめませんか?」
王子と手を繋ぐ女騎士。
その姿はあまりにも目立つ。
しかも、ルカ様は私以外に二人護衛を連れているので、余計にわけが分からなくなっていた。
「どうして?皆に俺達の仲の良さを見せつけなきゃ。その方が父上に婚約を認めてもらやすいかもしれないだろ。」
本当に?王族たるもの秩序を持った行動をとか、言われる気がするんだけれども。
ステフィス国王の姿は遠くからちらりと見たことしかない。だが噂では真面目で厳しい人だと聞いたことがある。
「そうでしょうか・・・?」
私との偽の婚約によって、ルカ様の評判が落ちてほしくないんだけどな。
城内を歩き、本宮殿が近づく。
「それより、ルネア、前から言おうと思っていたんだけど・・・」
ルカが何か言いかけた時、何者かがルカに向かって矢を放つのが見えた。
「危ない!!」
私はルカ様の手を思い切り引く。
ヒュンッ
一本の矢が私の頬をかすめて、後ろの建物に刺さる。
ルカ様を狙ったのは誰・・・?
「ルカ様を頼みます!」
私は護衛の兵士に声をかけ、矢を打った人間を追いかける。だが先程見た場所にたどり着いた時、その姿は消えていた。
「ルネア!」
ルカ様が護衛を連れて、こちらに駆け寄ってくる。
「ルカ様、だいじょうぶですか?」
矢は真っ直ぐルカ様を狙っていた。やはり、彼は命を狙われているのだ。
「僕は、だいじょうぶだがルネアは綺麗な顔に傷が・・・。跡が残らなければ良いのだが・・・。」
心配そうに私の傷を覗き込むルカ様。
「だいじょうぶですよ。こんなのかすり傷です。それより、ルカ様が無事で良かった。」
にっこりと微笑んでみせる。
誰かを守りたくて騎士になった。誰かの為に命を張れることは幸せなことだ。
「医務室に行こう。」
「ほんとに平気ですよ?」
だがルカは治療が第一優先だと譲らなかった。こんな傷は体中にあるから、今更なのに。
「女の子なんだし、顔に傷が残ったら大変だろ!」
「はぁ・・・。」
その女らしさが欠片もないから、離縁されたわけで。もう、私は諦めているのだがルカ様はそうではないらしい。
「行くぞ!」
ルカ様に引っ張られて医務室に向かう。
心配してくれるのはありがたいけど、私はただの婚約者(仮)。いわば、ルカ様を守るための盾にすぎない。
「私なんかに、ありがとうございます。」
お礼を言うとルカ様は困った顔をした。
◇◇◇
東塔の隣にある医務室は昔からよくお世話になっている場所。同期の騎士の中でも、私は無茶をする方だったので、よく怪我をしてここに担ぎ込まれていた。
そのうちに医師の一人であるアンと親しくなり、今では友人として仲良くしている。
アンはルカ様と共に医務室に入ってきた私をみて、顔を顰めた。
「どういうこと?え、待って・・・リーブスに離縁されたんじゃ無かったの?なんで王子といるの?」
ルカ様がいるにも関わらず、アンはいつも通りの口調だ。
「えっと、これには事情があってね・・・。」
アンにはまだリーブスに離縁されたことを伝えてなかった。どこから説明したらいいのか・・・。
「そんなことより、怪我の治療をしてくれないか?ルネアが顔に傷を負ってしまったんだ。」
傷と言ってもじんわりと血がにじむ程度のかすり傷。
ルカ様に連れて来られなければ、わざわざ医務室に来なかっただろう。
「わかりましたけど・・・。事情は説明してもらうからね!」
アンに頬を治療して貰いながら、ルカ様は事実を少し変えたストーリーをアンに説明していた。婚約が(仮)だと言うことは、知られたくないからだ。
「ルネアがリーブスに離縁されて訓練場で泣いているところに、ちょうど出会ったんだ。そのあまりの美しさに、俺は一目惚れしてしまってな。家を追い出されて行く宛が無いというから、俺の部屋に来てもらったんだけど、すっかり意気投合してしまってね。ルネアと婚約の約束をしたんだ!」
ルカ様の命を守るための婚約(仮)という事実を隠すと、こんなにも嘘くさくなってしまうのか。
王子が私に一目惚れなんて、あり得ない。
アンは腕を組んで難しい顔をしている。やっぱり信じられないよね。
「ルカ様がルネアに一目惚れしたことは理解できました。」
へ?
「だけど、ルネアがルカ様との婚約を了承したのが納得できません!ねぇルネア。本当にルカ様が好きなの?好きじゃないのに、家が無いからって婚約を了承しちゃったんじゃないでしょうね?!」
アンは早口でまくし立てた。
「え、えーと?」
「家が無いなら、私の家に泊めてあげるから、好きじゃ無いのにルカ様と結婚しちゃだめ!!私はルネアの姉代わりとして、絶対に認めませんからね!!」
心配してくれるのはありがたいのだが、これはたった一ヶ月間の婚約者(仮)にすぎないわけで。
さて、どうしたらいいのか・・・?
11
お気に入りに追加
1,058
あなたにおすすめの小説
【本編完結】番って便利な言葉ね
朝山みどり
恋愛
番だと言われて異世界に召喚されたわたしは、番との永遠の愛に胸躍らせたが、番は迎えに来なかった。
召喚者が持つ能力もなく。番の家も冷たかった。
しかし、能力があることが分かり、わたしは一人で生きて行こうと思った・・・・
本編完結しましたが、ときおり番外編をあげます。
ぜひ読んで下さい。
「第17回恋愛小説大賞」 で奨励賞をいただきました。 ありがとうございます
短編から長編へ変更しました。
62話で完結しました。
婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
きさらぎ
恋愛
テンネル侯爵家の嫡男エドガーに真実の愛を見つけたと言われ、ブルーバーグ侯爵家の令嬢フローラは婚約破棄された。フローラにはとても良い結婚条件だったのだが……しかし、これを機に結婚よりも大好きな研究に打ち込もうと思っていたら、ガーデンパーティーで新たな出会いが待っていた。一方、テンネル侯爵家はエドガー達のやらかしが重なり、気づいた時には―。
※『婚約破棄された地味令嬢は、あっという間に王子様に捕獲されました。』(現在は非公開です)をタイトルを変更して改稿をしています。
お気に入り登録・しおり等読んで頂いている皆様申し訳ございません。こちらの方を読んで頂ければと思います。
わざわざパーティで婚約破棄していただかなくても大丈夫ですよ。私もそのつもりでしたから。
しあ
恋愛
私の婚約者がパーティーで別の女性をパートナーに連れてきて、突然婚約破棄を宣言をし始めた。
わざわざここで始めなくてもいいものを…ですが、私も色々と用意してましたので、少しお話をして、私と魔道具研究所で共同開発を行った映像記録魔道具を見ていただくことにしました。
あら?映像をご覧になってから顔色が悪いですが、大丈夫でしょうか?
もし大丈夫ではなくても止める気はありませんけどね?
王太子殿下に婚約者がいるのはご存知ですか?
通木遼平
恋愛
フォルトマジア王国の王立学院で卒業を祝う夜会に、マレクは卒業する姉のエスコートのため参加をしていた。そこに来賓であるはずの王太子が平民の卒業生をエスコートして現れた。
王太子には婚約者がいるにも関わらず、彼の在学時から二人の関係は噂されていた。
周囲のざわめきをよそに何事もなく夜会をはじめようとする王太子の前に数名の令嬢たちが進み出て――。
※以前他のサイトで掲載していた作品です
都合のいい女は卒業です。
火野村志紀
恋愛
伯爵令嬢サラサは、王太子ライオットと婚約していた。
しかしライオットが神官の娘であるオフィーリアと恋に落ちたことで、事態は急転する。
治癒魔法の使い手で聖女と呼ばれるオフィーリアと、魔力を一切持たない『非保持者』のサラサ。
どちらが王家に必要とされているかは明白だった。
「すまない。オフィーリアに正妃の座を譲ってくれないだろうか」
だから、そう言われてもサラサは大人しく引き下がることにした。
しかし「君は側妃にでもなればいい」と言われた瞬間、何かがプツンと切れる音がした。
この男には今まで散々苦労をかけられてきたし、屈辱も味わってきた。
それでも必死に尽くしてきたのに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか。
だからサラサは満面の笑みを浮かべながら、はっきりと告げた。
「ご遠慮しますわ、ライオット殿下」
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
【悲報】最弱ジョブ「弓使い」の俺、ダンジョン攻略中にSランク迷惑パーティーに絡まれる。~配信中に最弱の俺が最強をボコしたらバズりまくった件~
果 一
ファンタジー
《第17回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を賜りました》
俺こと、息吹翔の通う学校には、Sランクパーティーのメンバーがいる。名前は木山豪気。ハイレベルな強さを持つ“剣士”であり、世間的にも有名である――ただし悪い意味で。
人を見下し、学校のアイドルを盗撮し、さらには平気で他のダンジョン冒険者を襲う、最低最悪の人間だった。しかも俺が最弱ジョブと言われる「弓使い(アーチャー)」だとわかるや否や、ガムを吐き捨てバカにしてくる始末。
「こいつとは二度と関わりたくないな」
そう思った矢先、ダンジョン攻略中に豪気が所属するSランクパーティーと遭遇してしまい、問答無用で攻撃を受けて――
しかし、豪気達は知らない。俺が弓捌きを極め、SSランクまで到達しているということを。
そして、俺も知らない。豪気達との戦いの様子が全国配信されていて、バズリまくってしまうということを。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。
※本作はカクヨム・小説家になろうでも公開しています。両サイトでのタイトルは『【悲報】最弱ジョブ「弓使い」の俺、ダンジョン攻略中にSランク迷惑パーティーに絡まれる。~全国配信されていることに気付かず全員返り討ちにしたら、バズリまくって大変なことになったんだが!?~』となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる