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11. 誓いのキスを Side ポール

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【Side ポール】

 次の日、曇天の中、ポールとマティアの結婚式が行われた。大勢が見守る中、結婚式は粛々と進行していく。

 (結局……結婚を止められなかったな。)

 ポールは真っ白いウェディングドレスを身にまとったマティアを見つめる。

 (綺麗だよ、マティア。)

 ポールはそっと心の中で呟く。

 昨晩、サラに部屋に連れ込まれたポールは彼女を薬で眠らせて、一晩隣にいた。

『騙したのね!ポール!』

 朝起きて怒り狂うサラを部屋に"閉じ込めて"、ポールは教会に来た。従者達に口裏をあわせてもらい、サラは体調不良で結婚式を欠席したことにしている。

 (今日のところは……なんとかなるだろうが……。)

 結婚式前日に、皇太子が婚約者以外の女と過ごしたという事実は残り続ける。それが、今後どんな悲劇をもたらすのか、ポールは想像もしたくなかった。

 今日が終われば、ドントール国王はリックストン国からいなくなる。

 (それまで耐えれば……、昨晩のことはマティアを"傷つける"手段になるな。)

 そんな事を考えるポールに神父は尋ねる。 

 「ポール・リックストンは、マティア・ドントールを妻とし、生涯愛することを誓いますか?」

「誓います。」

低い声でポールは誓う。

 (生涯、僕は君を忘れない。)
 
 「マティア・ドントールはポール・リックストンを夫とし、生涯愛することを誓いますか?」

 「誓います。」

 マティアは笑顔で答える。

 (テオは……マティアになんと言ったんだろう?)

 少なくとも、説得に失敗したことは確かだ。むしろ、マティアは昨日より明らかに元気になっていた。

 「誓いのキスを。」

 新婦に促されて、ポールがマティアの肩に触れた。マティアの頬が少しだけ赤く染まる。 

 (僕は君を幸せにできない。)
 
 ポールはマティアを引き寄せ、覆いかぶさった。

「一生、変わらない。」

 マティアだけに聞こえるように、ポールは呟く。そしてキスをしないまま、一歩身を引く。

 (君の唇に触れる資格は僕にはないから。)

「ここにまた、新しい夫婦が誕生した。ポールとマティアに永遠の幸せがあらんことを。」

 マティアはうっすらと目に涙を浮かべているが、微笑みを絶やさない。

「貴方のお嫁さんになることが……私の夢だったのよ。ポール。」

 歌うように、マティアが呟く。

 (なぜ、君はそんなことを言うんだい?)

 真っ白いウェディングドレスを着たマティアに、キスをすることは、ポールの夢でもあったのだ。
 
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