26 / 56
序章 伝説のはじまりは出会いから
第24話 英雄の処遇
しおりを挟む
ジャンの着替えを待っている間、何気なく辺りを見渡していたアレックスはあることに気が付いた。
自由行動と言ったにも拘らず、四千もの兵士たちがチラッチラッと盗み見るような視線をアレックスに向けていた。どうやら、アレックスのことが気になって仕方がないようだ。
ああ、それもそうか、と思ったアレックスが、彼らの視界に入らないように内郭の正門を二〇メートルほど歩いて抜ける。そして、跳ね橋の鎖を掴んで水堀に落ちないように門の外側に身を隠した。
予想は的中した。アレックスが身を隠して暫くすると、次第に雑談めいた話し声がアレックスの耳に届いた。アレックスは、ただそこに存在するだけで彼らを緊張させていたようだ。
「全く……俺はそんな大層な人間じゃないんだがな……」
アレックスが嘆息し、眼下に広がる城下町を眺めながら独り言つ。
内郭の正門から数百メートル手前は、急な勾配になっている。建物を設置するには適していない。代わりにあるのは、段々とした細長い魔法や弓の訓練場は少数派だ。ほとんどすべては、斜面でも設置可能な畑やリンゴなどの果実園だった。陽の光を反射するほどテカった真赤な果実。いい加減に収穫してくれと叫ぶように枝がしなっている。そこには、行軍時のみに消費する糧食生産地が広がっていた。
ただそれも、現実となった世界では、戦争がなくても消費されてしまう。今の数だけでは十分な量を確保できないのは明らかだった。
「ふむ、森を切り開いたら。そこを開拓して畑とか耕さないとだよな」
三〇〇メートルほどの斜面が行き着いた先は、高さが四メートルほどの壁が通せんぼしている。壁と言っても、木柵の次に設置コストが低い簡易的な石積みで、防衛には適さない。ただ単に、中郭の内側にある居住区域と区別するためだけの塀だった。
簡易的な壁の向こう側には、中郭の南門へと続くあみだくじの網目状の道が入り組んでいる。真っすぐに伸びていないのは、防衛の観点からである。そうしなかった場合、中郭の城門を突破でもされたら、城まで敵が一直線――利便性よりも主城を守ることを優先した都市計画の名残だ。
帝都計画の最後の方に作られた外郭から中郭までの商業施設がメインの区画は、人々の往来を想定して真っ直ぐな道が延びている。
それはさておき、いくら城下町を一望できる高台にいるアレックスでも、裸眼で道を行くNPCもとい人々の様子を見ることは叶わなかった。
それならと視覚強化の魔法でも使おうかと思ったアレックスだったが、思い直す。
(これから見に行くんだから、そんな無粋なことをするもんじゃないな)
現場主義者のアレックスらしいといえばらしいが、異世界転移という異常事態に巻き込まれながらも、今を楽しむ余裕があり、アレックスの精神状態は至って安定していた。
そんなことを考えていると、つい先程までガヤガヤと騒がしいと言えるほど雑談に興じていた兵士たちの声が、ピタリと止まった。
「ん、どうしたんだ?」
突然の静寂を訝しんだアレックスが、門のところから内側を覗き込んだ。
「ああ、なるほどな……てか、どうしたんだ?」
アレックスの視線の先には、巨体を揺らしながら歩くガサラムを先頭に、クロードとソフィアが歩いて来ていた。
部隊は違えど、上将軍と将軍の登場に全員がその三人に対して敬礼をし、通り過ぎるのを待っているのであった。先程召喚された者の中の最高位は、大隊長止まり。千人隊長と三〇〇人隊長とでは雲泥の差がある。
詰まる所、その他はそれより下の階級となるのだ。
ガサラムに至っては、城壁東方旅団長だけではなく、城壁南方旅団と城壁西方旅団をもまとめた帝都防衛師団長なのだ。先に倣い言い換えるならば、九千人隊長。緊張しない方が不自然だろう。
門から歩いてきたアレックスの存在に気付いたガサラムが第一声を放つ。
「大将! どうしたんでさぁ!」
アレックスの姿を認めるや否や、山賊顔を綻ばせてガサラムがしゃがれ声を轟かせた。
「ああ、これから城下町の様子を見に行くんでな。待っていたんだ」
相変わらずひでー顔だな、と苦笑いしながらアレックスが答える。
アレックスの言葉を聞くなり、何を勘違いしたのかガサラムが後ろを振り向き、
「ほらな、言ったじゃねえか」
と、クロードとソフィアに言って、ガハハッと下品に笑い出した。
何が、ほらな、なのかわからないアレックスが、眉根を寄せる。
「陛下、お待たせしました」
立ち止まったガサラムを追い抜いたソフィアが跪いた。ソフィアに倣うようにクロードとガサラムも膝を折る。
どういうことだ? と首を傾げそうになったところでアレックスは気が付いた。これまでの一連の遣り取りを思い返し、ソフィアたちも城下町視察に同行するつもりであることを悟ったのだ。
(どこで聞きつけて来たのやら……いや、もう指示を出し終えたのか?)
NPCたちの会議が終わったのだろう。そんな予想を立てながら、アレックスが提案する。
「楽にしろ。ガサラムも一緒に参るか?」
立ち上がったガサラムが、アレックスの誘いに何やら申し訳なさそうな表情をしてから、ガシガシと頭をかいた。
「あーそうしたいのは山々なんですがね。アニエス統括と話して接収の手伝いをすることになったんでさ。あと、あれです。着るもんの調達もですかね」
ガサラムのその話を聞いたアレックスが、ほーうと唸る。
ジャンが昔に設定したタスクに縛られていたにも拘らず、ガサラムはアニエスと話したことを実行しようとしていた。
つまり、アニエスを従者旅団統括に据えた試みは、大正解だった。
まさか、俺の分身と言っただけで俺のタスク設定と同じ効果を生むのか、とガサラムのタスク欄を確認し、先程彼が説明した内容に近いことが記載されていたことで感心した。
「なるほど、お前たちもよくアニエスの言うことを聞くのだぞ。まあ、大丈夫だと思うが、ガサラムは同じ上将軍として、気になることがあればいつでも申してみよ」
「へえ、それはわかってますよ。他に無ければ俺は先に行きますよ。何でも部隊をちょっくら分けないといけねえんでさ」
「うむ、行って良いぞ」
ガサラムの話に因ると、従者たちの打合せはまだ続いているようで、先程アレックスがアニエスに新しく指示した衣服を全員に支給するには、宝物庫の中身だけでは足りないことが判明したようだった。足りない分はブラックの部隊から一部を割いて新たに作成したり、ガサラムの接収部隊が衣料店などを当たることになったらしい。
事情を知ったアレックスがシステムメニューのチャットメッセージ欄を確認すると、アニエスからのメッセージで埋め尽くされていた。
頻繁に遣り取りするチャットメッセージは、システムメッセージと違って知設定をするとうるさい。ゲーム時代の通知設定のままで、「切り」になっていた。
ゲームのときは、プレイヤーと遣り取りがあるためチャットウィンドウを常時表示していた。それでも、今ではそのプレイヤーが存在しておらず、非表示にしていたことで気付くのが遅れてしまった。
アニエスからのメッセージを眺めていると、ガサラムに手伝ってもらうことになった報告と、催促をして申し訳なかった旨の文の後に、捨て置けない文言を見つけた。
『ヴァルード帝国の英雄がアレックス様に面会を求めてるみてえです』
それを見たアレックスが、尽きることのない悩みの種に嘆息してから、
『折を見て引見することだけを伝えろ。捕虜の尖塔からは出せないが、最上階の部屋に移動させとけ。これは最優先で済ませるように。決して気を抜くなよ』
と、ことの重要性を伝える内容を送った。
『わっちとシーザーで行くことにしました』
『それでよい、以上』
了解の旨の返信を確認するなり、取り合えず画面を閉じ、重いため息を吐く。
先程まで城下町の様子を見に行くのを楽しみにしていたのが嘘であるかのように、アレックスの気分は暗くなった。
「陛下、どうなさいましたか?」
ソフィアがアレックスの変化を心配するように覗き込んだ。
「ん? うむ、ヴァルード帝国の英雄関連だ。謁見したいと申すから、最後の仕上げで最上階に移すことにした」
「それは!」
リバフロでは、捕虜にしたNPC勢力のNPCユニットを自駒に転換することが可能だった。ただ、それにも制限があり、時間経過だったり、金銭が必要だったりと、それぞれのユニットごとに設定がされている。
NPCユニットの中でも一級品と言われるのが英雄である。時々によって能力にバラツキがあるが、平均してレベル一五〇前後の能力を有している。それ故に、転換するために時間経過だけではなく、使用するのにリアルマネーが掛かる、『捕虜の尖塔の最上階』で幽閉する必要があった。
謁見を求めてきた英雄は、アレックスがこの異世界に転移した日の戦争イベントで捕獲したばかり。睡魔に襲われていたアレックスは、戦後処理を後回しにし、取り合えず課金が必要ない区画に幽閉しただけだった。
そして、「謁見を求める」というのは、捕獲されたユニットが寝返るか、解放を求めてくるかのターニングポイントである。先ず、捕虜にして一日しか経っておらず、相手が英雄であることから寝返ることはなく、解放要望の一択だろう。しかも、解放を却下した場合は、その場で自害してしまうという運営たひねと叫びたくなる設定だった。
が、アレックスは英雄を自駒に転換するつもりであったため、苦肉の策で最上階へ移動させることを決断したのだ。ゲームのときと同じ効果があるかは不明だが、試さないよりはましだろう。
その、「最上階」という言葉を聞けば、ソフィアもアレックスが言わんとしていることに気付いて驚いたようだ。
「ああ、折角だし仲間は多い方が良いだろう。それに、あの英雄はお前らより強くて頼もしい」
「……そ、そうですか」
ぼそりと呟いて俯いたソフィアが気になり、アレックスが声を掛けようとしたとき。
「おっ、やっと来たな」
着替えを済ませたジャンの姿が視界に入り、アレックスは気を取られてしまったのだった。
自由行動と言ったにも拘らず、四千もの兵士たちがチラッチラッと盗み見るような視線をアレックスに向けていた。どうやら、アレックスのことが気になって仕方がないようだ。
ああ、それもそうか、と思ったアレックスが、彼らの視界に入らないように内郭の正門を二〇メートルほど歩いて抜ける。そして、跳ね橋の鎖を掴んで水堀に落ちないように門の外側に身を隠した。
予想は的中した。アレックスが身を隠して暫くすると、次第に雑談めいた話し声がアレックスの耳に届いた。アレックスは、ただそこに存在するだけで彼らを緊張させていたようだ。
「全く……俺はそんな大層な人間じゃないんだがな……」
アレックスが嘆息し、眼下に広がる城下町を眺めながら独り言つ。
内郭の正門から数百メートル手前は、急な勾配になっている。建物を設置するには適していない。代わりにあるのは、段々とした細長い魔法や弓の訓練場は少数派だ。ほとんどすべては、斜面でも設置可能な畑やリンゴなどの果実園だった。陽の光を反射するほどテカった真赤な果実。いい加減に収穫してくれと叫ぶように枝がしなっている。そこには、行軍時のみに消費する糧食生産地が広がっていた。
ただそれも、現実となった世界では、戦争がなくても消費されてしまう。今の数だけでは十分な量を確保できないのは明らかだった。
「ふむ、森を切り開いたら。そこを開拓して畑とか耕さないとだよな」
三〇〇メートルほどの斜面が行き着いた先は、高さが四メートルほどの壁が通せんぼしている。壁と言っても、木柵の次に設置コストが低い簡易的な石積みで、防衛には適さない。ただ単に、中郭の内側にある居住区域と区別するためだけの塀だった。
簡易的な壁の向こう側には、中郭の南門へと続くあみだくじの網目状の道が入り組んでいる。真っすぐに伸びていないのは、防衛の観点からである。そうしなかった場合、中郭の城門を突破でもされたら、城まで敵が一直線――利便性よりも主城を守ることを優先した都市計画の名残だ。
帝都計画の最後の方に作られた外郭から中郭までの商業施設がメインの区画は、人々の往来を想定して真っ直ぐな道が延びている。
それはさておき、いくら城下町を一望できる高台にいるアレックスでも、裸眼で道を行くNPCもとい人々の様子を見ることは叶わなかった。
それならと視覚強化の魔法でも使おうかと思ったアレックスだったが、思い直す。
(これから見に行くんだから、そんな無粋なことをするもんじゃないな)
現場主義者のアレックスらしいといえばらしいが、異世界転移という異常事態に巻き込まれながらも、今を楽しむ余裕があり、アレックスの精神状態は至って安定していた。
そんなことを考えていると、つい先程までガヤガヤと騒がしいと言えるほど雑談に興じていた兵士たちの声が、ピタリと止まった。
「ん、どうしたんだ?」
突然の静寂を訝しんだアレックスが、門のところから内側を覗き込んだ。
「ああ、なるほどな……てか、どうしたんだ?」
アレックスの視線の先には、巨体を揺らしながら歩くガサラムを先頭に、クロードとソフィアが歩いて来ていた。
部隊は違えど、上将軍と将軍の登場に全員がその三人に対して敬礼をし、通り過ぎるのを待っているのであった。先程召喚された者の中の最高位は、大隊長止まり。千人隊長と三〇〇人隊長とでは雲泥の差がある。
詰まる所、その他はそれより下の階級となるのだ。
ガサラムに至っては、城壁東方旅団長だけではなく、城壁南方旅団と城壁西方旅団をもまとめた帝都防衛師団長なのだ。先に倣い言い換えるならば、九千人隊長。緊張しない方が不自然だろう。
門から歩いてきたアレックスの存在に気付いたガサラムが第一声を放つ。
「大将! どうしたんでさぁ!」
アレックスの姿を認めるや否や、山賊顔を綻ばせてガサラムがしゃがれ声を轟かせた。
「ああ、これから城下町の様子を見に行くんでな。待っていたんだ」
相変わらずひでー顔だな、と苦笑いしながらアレックスが答える。
アレックスの言葉を聞くなり、何を勘違いしたのかガサラムが後ろを振り向き、
「ほらな、言ったじゃねえか」
と、クロードとソフィアに言って、ガハハッと下品に笑い出した。
何が、ほらな、なのかわからないアレックスが、眉根を寄せる。
「陛下、お待たせしました」
立ち止まったガサラムを追い抜いたソフィアが跪いた。ソフィアに倣うようにクロードとガサラムも膝を折る。
どういうことだ? と首を傾げそうになったところでアレックスは気が付いた。これまでの一連の遣り取りを思い返し、ソフィアたちも城下町視察に同行するつもりであることを悟ったのだ。
(どこで聞きつけて来たのやら……いや、もう指示を出し終えたのか?)
NPCたちの会議が終わったのだろう。そんな予想を立てながら、アレックスが提案する。
「楽にしろ。ガサラムも一緒に参るか?」
立ち上がったガサラムが、アレックスの誘いに何やら申し訳なさそうな表情をしてから、ガシガシと頭をかいた。
「あーそうしたいのは山々なんですがね。アニエス統括と話して接収の手伝いをすることになったんでさ。あと、あれです。着るもんの調達もですかね」
ガサラムのその話を聞いたアレックスが、ほーうと唸る。
ジャンが昔に設定したタスクに縛られていたにも拘らず、ガサラムはアニエスと話したことを実行しようとしていた。
つまり、アニエスを従者旅団統括に据えた試みは、大正解だった。
まさか、俺の分身と言っただけで俺のタスク設定と同じ効果を生むのか、とガサラムのタスク欄を確認し、先程彼が説明した内容に近いことが記載されていたことで感心した。
「なるほど、お前たちもよくアニエスの言うことを聞くのだぞ。まあ、大丈夫だと思うが、ガサラムは同じ上将軍として、気になることがあればいつでも申してみよ」
「へえ、それはわかってますよ。他に無ければ俺は先に行きますよ。何でも部隊をちょっくら分けないといけねえんでさ」
「うむ、行って良いぞ」
ガサラムの話に因ると、従者たちの打合せはまだ続いているようで、先程アレックスがアニエスに新しく指示した衣服を全員に支給するには、宝物庫の中身だけでは足りないことが判明したようだった。足りない分はブラックの部隊から一部を割いて新たに作成したり、ガサラムの接収部隊が衣料店などを当たることになったらしい。
事情を知ったアレックスがシステムメニューのチャットメッセージ欄を確認すると、アニエスからのメッセージで埋め尽くされていた。
頻繁に遣り取りするチャットメッセージは、システムメッセージと違って知設定をするとうるさい。ゲーム時代の通知設定のままで、「切り」になっていた。
ゲームのときは、プレイヤーと遣り取りがあるためチャットウィンドウを常時表示していた。それでも、今ではそのプレイヤーが存在しておらず、非表示にしていたことで気付くのが遅れてしまった。
アニエスからのメッセージを眺めていると、ガサラムに手伝ってもらうことになった報告と、催促をして申し訳なかった旨の文の後に、捨て置けない文言を見つけた。
『ヴァルード帝国の英雄がアレックス様に面会を求めてるみてえです』
それを見たアレックスが、尽きることのない悩みの種に嘆息してから、
『折を見て引見することだけを伝えろ。捕虜の尖塔からは出せないが、最上階の部屋に移動させとけ。これは最優先で済ませるように。決して気を抜くなよ』
と、ことの重要性を伝える内容を送った。
『わっちとシーザーで行くことにしました』
『それでよい、以上』
了解の旨の返信を確認するなり、取り合えず画面を閉じ、重いため息を吐く。
先程まで城下町の様子を見に行くのを楽しみにしていたのが嘘であるかのように、アレックスの気分は暗くなった。
「陛下、どうなさいましたか?」
ソフィアがアレックスの変化を心配するように覗き込んだ。
「ん? うむ、ヴァルード帝国の英雄関連だ。謁見したいと申すから、最後の仕上げで最上階に移すことにした」
「それは!」
リバフロでは、捕虜にしたNPC勢力のNPCユニットを自駒に転換することが可能だった。ただ、それにも制限があり、時間経過だったり、金銭が必要だったりと、それぞれのユニットごとに設定がされている。
NPCユニットの中でも一級品と言われるのが英雄である。時々によって能力にバラツキがあるが、平均してレベル一五〇前後の能力を有している。それ故に、転換するために時間経過だけではなく、使用するのにリアルマネーが掛かる、『捕虜の尖塔の最上階』で幽閉する必要があった。
謁見を求めてきた英雄は、アレックスがこの異世界に転移した日の戦争イベントで捕獲したばかり。睡魔に襲われていたアレックスは、戦後処理を後回しにし、取り合えず課金が必要ない区画に幽閉しただけだった。
そして、「謁見を求める」というのは、捕獲されたユニットが寝返るか、解放を求めてくるかのターニングポイントである。先ず、捕虜にして一日しか経っておらず、相手が英雄であることから寝返ることはなく、解放要望の一択だろう。しかも、解放を却下した場合は、その場で自害してしまうという運営たひねと叫びたくなる設定だった。
が、アレックスは英雄を自駒に転換するつもりであったため、苦肉の策で最上階へ移動させることを決断したのだ。ゲームのときと同じ効果があるかは不明だが、試さないよりはましだろう。
その、「最上階」という言葉を聞けば、ソフィアもアレックスが言わんとしていることに気付いて驚いたようだ。
「ああ、折角だし仲間は多い方が良いだろう。それに、あの英雄はお前らより強くて頼もしい」
「……そ、そうですか」
ぼそりと呟いて俯いたソフィアが気になり、アレックスが声を掛けようとしたとき。
「おっ、やっと来たな」
着替えを済ませたジャンの姿が視界に入り、アレックスは気を取られてしまったのだった。
0
お気に入りに追加
1,958
あなたにおすすめの小説
少年の日の思い出
まさみ
BL
19世紀末英国、ヴィクトリア朝倫敦。
イーストエンド出身の娼婦の私生児オリバーは、スタンホープ伯爵の子息エドガーに絵の才能を見初められ、彼の遊び相手として伯爵家に引き取られる。
しかしその裏でスタンホープ伯爵の慰み者となり、日夜体をもてあそばれ……。
(19世紀英国/伯爵×養子/SM/調教/女装(コルセット)/羞恥/お仕置き/ショタ)
自作BL「驚異の部屋≪ヴンダー・カンマー≫」の前日談にあたる短編ですが、これだけでも読めます。
イラスト:暑い様(@atui_p)様
畑にスライムが湧くんだが、どうやら異世界とつながっているみたいです
tera
ファンタジー
■書籍化しました。10月刊行してます。
■それに伴いあらすじ差し替えです。
■全2巻発売中!
■完結積み作品ですか要望によってはこぼれ話をWEBにて更新します。
異世界×現代のんびり農業ファンタジー、開幕!!
会社を辞めて東京奥多摩へ帰ってきた俺、向ケ丘ユヅル。祖父母の残した家と畑を管理することになり、畑の様子を見に行くと……ちょ、スライムが湧いている!? それも、一匹や二匹ってレベルじゃねーぞ! なんとか駆逐したものの、来る日も来る日も畑に異世界からの魔物や女騎士が湧いてくるんだが――東京奥多摩の秘境を舞台に、異世界の同居人と現代人が繰り広げる、ドタバタ農業ファンタジーが今、始まる!
=====
※一話二千文字程度でゆるっと続けていきたいと思います。
※ぜひ感想などありましたらお願いします。
※2017.04.08 HOTランキング一位とれました!
※2017.04.09 ファンタジー小説ランキング一位です、ありがとうございます!
※そして月曜日から一日一更新になります。お読みいただいてありがとうございます!
柳生友矩と徳川家光
克全
BL
完結済み・徳川家光には致命的な欠点があった。武将が小姓を愛するのは武士の嗜みだから欠点ではない。武田信玄、織田信長、徳川家康、皆小姓を愛した。だが、それは、小姓を意する事だ。小姓に愛される事ではない。天下の将軍が、ガチ受けで小姓の言い成りになっては天下の御政道が小姓に支配されてしまうのだ!
そんな徳川家光を支え助ける漢がいた、それは柳生家の次男、柳生友矩だった。
サファヴィア秘話 ―月下の虜囚―
文月 沙織
BL
祖国を出た軍人ダリクは、異国の地サファヴィアで娼館の用心棒として働くことになった。だが、そこにはなんとかつての上官で貴族のサイラスが囚われていた。彼とは因縁があり、ダリクが国を出る理由をつくった相手だ。
性奴隷にされることになったかつての上官が、目のまえでいたぶられる様子を、ダリクは復讐の想いをこめて見つめる。
誇りたかき軍人貴族は、異国の娼館で男娼に堕ちていくーー。
かなり過激な性描写があります。十八歳以下の方はご遠慮ください。
狼さんのごはん
中村湊
恋愛
食品会社に勤める沢絵里。『ご飯は、美味しく楽しく』がモットー。
ある日、会社の食品開発部のサイボーグ課長こと高井雅和に、弁当のおかずをあげた。そこから、餌付け? の日々へと変わる。
ヒーローの末路
真鉄
BL
狼系獣人ヴィラン×ガチムチ系ヒーロー
正義のヒーロー・ブラックムーンは悪の組織に囚われていた。肉体を改造され、ヴィランたちの性欲処理便器として陵辱される日々――。
ヒーロー陵辱/異種姦/獣人×人間/パイズリ/潮吹き/亀頭球
【完結】呪われ王子は生意気な騎士に仮面を外される
りゆき
BL
口の悪い生意気騎士×呪われ王子のラブロマンス!
国の騎士団副団長まで上り詰めた平民出身のディークは、なぜか辺境の地、ミルフェン城へと向かっていた。
ミルフェン城といえば、この国の第一王子が暮らす城として知られている。
なぜ第一王子ともあろうものがそのような辺境の地に住んでいるのか、その理由は誰も知らないが、世間一般的には第一王子は「変わり者」「人嫌い」「冷酷」といった噂があるため、そのような辺境の地に住んでいるのだろうと言われていた。
そんな噂のある第一王子の近衛騎士に任命されてしまったディークは不本意ながらも近衛騎士として奮闘していく。
数少ない使用人たちとひっそり生きている第一王子。
心を開かない彼にはなにやら理由があるようで……。
国の闇のせいで孤独に生きて来た王子が、口の悪い生意気な騎士に戸惑いながらも、次第に心を開いていったとき、初めて愛を知るのだが……。
切なくも真実の愛を掴み取る王道ラブロマンス!
※R18回に印を入れていないのでご注意ください。
※こちらの作品はムーンライトノベルズにも掲載しております。
※完結保証
※全38×2話、ムーンさんに合わせて一話が長いので、こちらでは2分割しております。
※毎日7話更新予定。
イケメン御曹司の初恋
波木真帆
BL
ホテル王の御曹司である佐原恭一郎はゲイを公言しているものの、父親から女性に会うようにと頼まれた。
断りに行くつもりで仕方なく指定されたホテルラウンジで待っていると、中庭にいた可愛らしい人に目を奪われる。
初めてのことにドキドキしながら、急いで彼の元に向かうと彼にとんでもないお願いをされて……。
イケメンスパダリ御曹司のドキドキ初恋の物語です。
甘々ハッピーエンドですのでさらっと読んでいただけると思います。
R18には※つけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる