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番外編 おともだち⑦
しおりを挟む「でも良いのー?俺と仲良くしてたら、おどおどちゃんにまた誤解されるかもよ?」
ケラケラと笑う律。もうすっかりいつもの調子だ。
「……別に」
だから俺も、いつも通りの態度で応えた。たぶん、これが正解だから。
「セフレを切ることは言ったし……アイツからしたら、俺にとってお前は兄貴みたいな存在らしいから」
「……ぷっ。それは安心だ!あの子に近親相姦なんて概念なさそうだもんねぇ」
「それは俺にもねえよ」
兄貴となんて、考えただけでも鳥肌もんだ。
苦い顔を浮かべていると、律がふふっと笑みを漏らす。
「はぁーあ、覚悟してたのに台無しぃ」
「あ?」
脈絡ない言葉の意味が分からなくて聞き返すと、律は「ちょっと猶予ができたなって思っただけ!」とまたもや意味不明なことを嬉しそうに言い放ち、スクッとベンチから立ち上がった。
昼間にガキが書いたであろう輪っかの中を、ケンケンパッと慣れた様子で進む。そしてクルッと振り返ると、ニマッと口角を上げた。
「ま、んじゃあ、おにーさんはおとーとの恋を応援してあげましょう。あと、受験も!」
「ついでみたいに言ってんじゃねえよ……」
俺も立ち上がって、普通に歩いて律の隣に追いつく。そのまま俺たちは、特に示し合わせることなく、夜道を歩いた。
今日は月がよく見える。不安が消えたせいか、それはいつもより輝いて見えた。
「つき……せ」
途中、律が上を見上げて、ボソッと呟いた。
「……あ?月がなに?」
「つきがせ!名字、月ヶ瀬って言うの。月ヶ瀬律」
「へぇ……つーか、なんだよ今さら」
名前で呼んで欲しいからと、今まで頑に名字を教えなかったくせに。
「友だちになっから、教えてあげたんですー。あ、でも、今まで通り名前で呼んでよっ?」
「はいはい」
今さら呼び方を変えるつもりもない。
返事をすれば、律は満足そうに笑って、それっきり、俺に背を向けて、数歩前を歩き続けた。
(月ヶ瀬律)
そう名乗った男は、前は鬱陶しいくらい腕を組んできたのに、今はそれをしない。そんな変化に、本当にただのダチになったんだと実感する。
ほっとしたような、どこか寂しいような。
そんな感情に蓋をして、今はただ、月に照らされる金髪を眺めていた。
《おともだち 完》
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