102 / 329
101
しおりを挟む
*
放課後。今日は金曜日だからバイトがないので、学校の近くのスーパーに夕食の買い出しに来た。
カゴを持ちながら、ぼーっと食材を見て回るも、なかなか今日のメニューが思いつかない。
「先生、何食べたいんだろ……」
先生はなんでも美味しいって言って食べてくれて、どんな料理が好きなのかいまいち把握できていない。
リクエストを聞いたときは、ちゃんと答えてくれるけど、いつも聞いてばかりじゃ申し訳ないし……。
(でも、魚よりはお肉の方が好きそう……?)
先生はスラッとした見た目の割に、結構よく食べる。でも、ガツガツって感じではなくて、箸の持ち方から食べ方まで、全てにおいて綺麗で格好良い。
そんな先生の食事風景を思い浮かべて、浮かれた気持ちになってしまった。つい唇まで鮮明に想像してしまい、慌ててかぶりを振る。
(うう……駄目駄目)
最近の俺はこんなことばかり考えていて、本当に情けないし恥ずかしい。良い加減にしなきゃ、と自分を律して、買い物に集中した。
(あ、安い……)
ちょうどお肉のコーナーで良いお肉を見つけたので、手を伸ばすと、ちょうど同じお肉を取ろうとした人と手がぶつかってしまった。
「あっ、ごめんなさいね」
「い、いえっ。こちらこそ」
慌てて手を引っ込めて顔を上げると、俺は息を飲んだ。
(わぁ……綺麗な人……)
緑色の着物がよく似合っているこの女性は、四十代後半くらいだろうか。穏やかな瞳と、整った顔立ち。目の横に刻まれた微かな皺さえも、その人の魅力に感じる。まさに大和撫子のような女性だった。
思わず見惚れてしまった俺に、女性が首を傾げる。
「あら?貴方、その制服……もしかして、すぐそこの学校の子?」
「は、はい。そうですけど……」
そう言うと、女性はパアッと表情を明るくした。
「あらまぁ!うちの息子、そこの化学教師やってるのよ」
「え……」
(化学って……)
うちの学校の化学教師で、この年代のお母さんがいる人は、一人しか思い浮かばない。
そんな俺の予想は見事の的中で、女性はその人と同じ、穏やかな優しい瞳でニコリと微笑んだ。
「高谷広って言うんだけど、知ってるかしら?」
放課後。今日は金曜日だからバイトがないので、学校の近くのスーパーに夕食の買い出しに来た。
カゴを持ちながら、ぼーっと食材を見て回るも、なかなか今日のメニューが思いつかない。
「先生、何食べたいんだろ……」
先生はなんでも美味しいって言って食べてくれて、どんな料理が好きなのかいまいち把握できていない。
リクエストを聞いたときは、ちゃんと答えてくれるけど、いつも聞いてばかりじゃ申し訳ないし……。
(でも、魚よりはお肉の方が好きそう……?)
先生はスラッとした見た目の割に、結構よく食べる。でも、ガツガツって感じではなくて、箸の持ち方から食べ方まで、全てにおいて綺麗で格好良い。
そんな先生の食事風景を思い浮かべて、浮かれた気持ちになってしまった。つい唇まで鮮明に想像してしまい、慌ててかぶりを振る。
(うう……駄目駄目)
最近の俺はこんなことばかり考えていて、本当に情けないし恥ずかしい。良い加減にしなきゃ、と自分を律して、買い物に集中した。
(あ、安い……)
ちょうどお肉のコーナーで良いお肉を見つけたので、手を伸ばすと、ちょうど同じお肉を取ろうとした人と手がぶつかってしまった。
「あっ、ごめんなさいね」
「い、いえっ。こちらこそ」
慌てて手を引っ込めて顔を上げると、俺は息を飲んだ。
(わぁ……綺麗な人……)
緑色の着物がよく似合っているこの女性は、四十代後半くらいだろうか。穏やかな瞳と、整った顔立ち。目の横に刻まれた微かな皺さえも、その人の魅力に感じる。まさに大和撫子のような女性だった。
思わず見惚れてしまった俺に、女性が首を傾げる。
「あら?貴方、その制服……もしかして、すぐそこの学校の子?」
「は、はい。そうですけど……」
そう言うと、女性はパアッと表情を明るくした。
「あらまぁ!うちの息子、そこの化学教師やってるのよ」
「え……」
(化学って……)
うちの学校の化学教師で、この年代のお母さんがいる人は、一人しか思い浮かばない。
そんな俺の予想は見事の的中で、女性はその人と同じ、穏やかな優しい瞳でニコリと微笑んだ。
「高谷広って言うんだけど、知ってるかしら?」
0
お気に入りに追加
189
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる