62 / 329
61
しおりを挟む
*
作ってあったおかずをレンジで温めて、簡単に夕食を済ませた。
先生がお風呂に入っている間に、リビングのテーブルに勉強道具を並べて、ソファに座りながら、問題集とにらめっこ。
「来週からテスト始まるなぁ。そろそろ問題作らないと」
分からない問題に夢中になっていたら、いつのまにかお風呂から上がった先生が近くまで来ていて、ソファの後ろから問題集を覗き込んできた。
(わっ……)
ふわりと香る石鹸の匂いに、胸がドキドキする。少し濡れた髪と湿った肌、それに加えて、朝と夜にだけお目にかかれる黒い眼鏡の組み合わせが、すごく色っぽくて、お風呂上がりの先生の破壊力は凄まじかった。
目眩がしそうなほどドキドキしてる俺とは対照的に、先生は爽やかに微笑んで隣に座る。二人でゆっくり出来るようにと買ったソファ。その目的通り、買った日以来、隣で肩を並べてテレビを見たり、お話をしたり、とっても楽しい時間を過ごしてる。
(でも、これからテストの準備で忙しくなるよね……)
今まで通りにゆっくり出来なくなることが、寂しい。だけど、こんな贅沢な悩みを持てることを嬉しくも思う。
「分からないとこあったら、聞いてな。化学以外でも数学とかなら教えれるから」
そう言ってもらえたけど、先生も持ち帰った仕事があるのに、俺に時間を割いてもらうのは抵抗がある。
(……でも、もう少しだけ、一緒にいたい)
俺がリビングを占領しちゃうせいで、先生は仕事するときは寝室に行ってしまう。テスト週間ともなれば、俺は職員室と同様に寝室にも入室禁止だ。だから、一緒にれるのはこの時間だけ。
(甘えても、いいかな……)
俺は勇気を出して、分からなかった数学の問題を指差す。
「じゃあ、あの……ここ、なんですけど……」
「ああ、ここは……」
先生が「借りるよ」と言って俺のシャーペンを手に取る。俺が普段使ってるものを、先生が使ってる。それだけでそわそわして落ち着かない。
(これが、恋するってことなんだ……)
実を言うと、先生に対する感情は、想いを自覚する前とあまり変わらない。思えば俺は、好きだと思う前から先生に対してドキドキしてたのだから。
だけど、恋だと思うだけで、なんだか特別な感じがする。意識すればするほど想いが高まっていく、相手への愛おしい気持ち。
(初めての気持ち……叶わなくても大事にしたい……)
「分かった?」
「……ん」
「心?」
「え……あっ」
いつのまにか説明が終わってて、先生が苦笑して俺のことを見ていた。
「はは。難しいかった?」
「……ご、ごめんなさい」
先生は怒った様子もなく「じゃあもう一回な」と教えてくれる。どれだけ優しいのかと恐縮しながら、今度はちゃんと真面目に聞いた。
授業でも思っていることだけど、先生の教え方はすごく分かりやすい。専門の科目でなくてもこんなに上手く教えられるなんて、先生は教師が天職だと思う。
「すごい……」
「なんか、嬉しいな」
「だって、本当に分かりやすくて……すごいです」
「ん?ああ、いや。それも嬉しいけど」
「……?」
「甘えてくれたのかなって」
「あ……」
図星を突かれたのが恥ずかしくなって、下に俯く。そんな俺の頭に、先生の手が乗って、ゆっくりと髪を梳かれた。それがすごく心地良い。ずっとこうしていたい。
でもこんな幸せな時間が永遠に続くわけがない。先生に「他には?」って聞かれて、首を横に振ると、お別れの時間。先生は最後に頭をポンポンとして、ソファから立ち上がった。
「じゃあ、俺も仕事してくるな。勉強頑張って」
「はい。先生も……頑張ってください」
「ん。ありがと。じゃあ、また明日な。おやすみ」
「おやすみなさい」
寝室へと向かう先生。寂しいけど、また明日「おはよう」って会えるから、今日は我慢。
(俺もお風呂入ってから、もうひと頑張りしよう)
作ってあったおかずをレンジで温めて、簡単に夕食を済ませた。
先生がお風呂に入っている間に、リビングのテーブルに勉強道具を並べて、ソファに座りながら、問題集とにらめっこ。
「来週からテスト始まるなぁ。そろそろ問題作らないと」
分からない問題に夢中になっていたら、いつのまにかお風呂から上がった先生が近くまで来ていて、ソファの後ろから問題集を覗き込んできた。
(わっ……)
ふわりと香る石鹸の匂いに、胸がドキドキする。少し濡れた髪と湿った肌、それに加えて、朝と夜にだけお目にかかれる黒い眼鏡の組み合わせが、すごく色っぽくて、お風呂上がりの先生の破壊力は凄まじかった。
目眩がしそうなほどドキドキしてる俺とは対照的に、先生は爽やかに微笑んで隣に座る。二人でゆっくり出来るようにと買ったソファ。その目的通り、買った日以来、隣で肩を並べてテレビを見たり、お話をしたり、とっても楽しい時間を過ごしてる。
(でも、これからテストの準備で忙しくなるよね……)
今まで通りにゆっくり出来なくなることが、寂しい。だけど、こんな贅沢な悩みを持てることを嬉しくも思う。
「分からないとこあったら、聞いてな。化学以外でも数学とかなら教えれるから」
そう言ってもらえたけど、先生も持ち帰った仕事があるのに、俺に時間を割いてもらうのは抵抗がある。
(……でも、もう少しだけ、一緒にいたい)
俺がリビングを占領しちゃうせいで、先生は仕事するときは寝室に行ってしまう。テスト週間ともなれば、俺は職員室と同様に寝室にも入室禁止だ。だから、一緒にれるのはこの時間だけ。
(甘えても、いいかな……)
俺は勇気を出して、分からなかった数学の問題を指差す。
「じゃあ、あの……ここ、なんですけど……」
「ああ、ここは……」
先生が「借りるよ」と言って俺のシャーペンを手に取る。俺が普段使ってるものを、先生が使ってる。それだけでそわそわして落ち着かない。
(これが、恋するってことなんだ……)
実を言うと、先生に対する感情は、想いを自覚する前とあまり変わらない。思えば俺は、好きだと思う前から先生に対してドキドキしてたのだから。
だけど、恋だと思うだけで、なんだか特別な感じがする。意識すればするほど想いが高まっていく、相手への愛おしい気持ち。
(初めての気持ち……叶わなくても大事にしたい……)
「分かった?」
「……ん」
「心?」
「え……あっ」
いつのまにか説明が終わってて、先生が苦笑して俺のことを見ていた。
「はは。難しいかった?」
「……ご、ごめんなさい」
先生は怒った様子もなく「じゃあもう一回な」と教えてくれる。どれだけ優しいのかと恐縮しながら、今度はちゃんと真面目に聞いた。
授業でも思っていることだけど、先生の教え方はすごく分かりやすい。専門の科目でなくてもこんなに上手く教えられるなんて、先生は教師が天職だと思う。
「すごい……」
「なんか、嬉しいな」
「だって、本当に分かりやすくて……すごいです」
「ん?ああ、いや。それも嬉しいけど」
「……?」
「甘えてくれたのかなって」
「あ……」
図星を突かれたのが恥ずかしくなって、下に俯く。そんな俺の頭に、先生の手が乗って、ゆっくりと髪を梳かれた。それがすごく心地良い。ずっとこうしていたい。
でもこんな幸せな時間が永遠に続くわけがない。先生に「他には?」って聞かれて、首を横に振ると、お別れの時間。先生は最後に頭をポンポンとして、ソファから立ち上がった。
「じゃあ、俺も仕事してくるな。勉強頑張って」
「はい。先生も……頑張ってください」
「ん。ありがと。じゃあ、また明日な。おやすみ」
「おやすみなさい」
寝室へと向かう先生。寂しいけど、また明日「おはよう」って会えるから、今日は我慢。
(俺もお風呂入ってから、もうひと頑張りしよう)
0
お気に入りに追加
189
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
僕は肉便器 ~皮をめくってなかをさわって~ 【童貞新入社員はこうして開発されました】
ヤミイ
BL
新入社員として、とある企業に就職した僕。希望に胸を膨らませる僕だったが、あろうことか、教育係として目の前に現れたのは、1年前、野外で僕を襲い、官能の淵に引きずり込んだあの男だった。そして始まる、毎日のように夜のオフィスで淫獣に弄ばれる、僕の爛れた日々…。
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
聖域で狩られた教師 和彦の場合
零
BL
純朴な新任体育教師、和彦。
鍛えられた逞しく美しい肉体。
狩人はその身体を獲物に定める。
若く凛々しい教師の精神、肉体を襲う受難の数々。
精神的に、肉体的に、追い詰められていく体育教師。
まずは精神を、そして、筋肉に覆われた身体を、、、
若く爽やかな新米体育教師、杉山和彦が生徒に狩の獲物とされ、堕ちていくまで。
以前書いた作品のリライトになります。
男性向けに設定しましたが、個人的には、性別関係なしに読んでいただける方に読んでいただきたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる