先生、おねがい。

あん

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 一晩明けて、朝。

 先生を起こさないようにベッドを抜け出して、朝食を作る。自分一人のためには絶対に作らない、お味噌汁と卵焼きと炒め物。

 後はお米が炊けるのを待つだけというタイミングで、寝室のドアが開いた。


 「おはよう。心」

 「おはようございます」


 眼鏡をかけた先生の頭には寝癖が立っていて、なんだか微笑ましい。

 そんな無防備な姿の先生が 台所に立つ俺のところに寄ってきて、「美味そー」と呟く。それだけで嬉しくなる俺はきっと浮かれているのだろう。


 「あ、えっと……あとは、ご飯炊けるの待つだけです」

 「ん。じゃ、顔洗ってくる」


 先生は洗面所に向かい、俺は棚からさっき見つけたお弁当箱を取り出した。

 お米のスペースを開けて、おかずを詰めていく。主役は……タコさんウインナー。先生の真似してみたけど、少しだけ不恰好になってしまった。


 「それ俺の?」

 「……っ!」


 いきなり俺の肩から顔をのぞかせた先生に驚いて、つい肩を震わせてしまう。そんな俺に先生は可笑しそうに笑みをこぼした。コンタクトを入れただろう瞳はキラキラしてて、眩しい。


 「は、はい。先生の、です」

 「それは嬉しいなー。けど心のないよな。俺がタッパーにするか」

 「い、いえっ。自分の分は作ってないです」

 「え、何で?」

 「だって……同じの食べたら、変かなって思って。俺はいつも購買だし……」

 「んー……でもせっかく俺の作ってくれんなら、心も弁当にしたら?明日ちょうど土曜日だし、一緒に弁当箱買いに行こう」


 何色が良い?とか普通に聞いてくる先生。何だか本当に家族みたいで、胸がぎゅっとする。


 「……青……が良いです」

 「青か。良いな。心っぽい」

 「俺っぽい?」

 「うん。優しい色だからかな」


 そう言う先生の方がずっと優しいと思うけど、納得したように頷く先生には何も言えなかった。


 (先生は緑っぽい……落ち着く色だから)


 なんてことを思っているうちに炊飯器が鳴って、二人揃って朝食を取った。


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