先生、おねがい。

あん

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 一緒にご飯を食べながら、つけたテレビについて会話したりして、残り少ない今日が流れていった。

 明日からもこの生活が待っているというのに、今日がずっと続けば良いのに、なんて変なことを考える自分がいた。


 先生は持ち帰った仕事をするということで、先に入らせてもらったお風呂。いつもはシャワーで済ましていたから、久しぶりの湯船は気持ちが良かった。


 「先生、お風呂……ありがとうございました」


 歯磨きも着替えも済ませてリビングへ行くと、一人掛けのソファに座ってパソコンとにらめっこしていた先生が、俺の声を聞いた途端に顔を上げる。真剣だった表情が打って変わって柔らかいものとなり、ドキッと胸が高鳴った。


 (かっこいい……)


 ついそう思ってしまうほど、優しい先生と真剣な先生のギャップが胸に刺さる。これは、同じ男としての憧れなのだろうか。……いくら憧れても、追いつけるなんてこれっぽっちも思わないけれど。


 「お、じゃあ、俺も入るかな」


 立ち上がった先生が俺の横を通り抜けてお風呂へ向かう。その途中で何かを思い出したように振り返った。

 
 「水とか好きに飲んでて良いから。眠かったら寝てても良いし」

 「あ、ありがとうございます……」


 先生がお風呂に入って行ったのを確認して小さく息を吐く。

 今日はとても幸せだったけど、気を張りすぎていつもより疲れたかもしれない。その証拠に、まだ10時ほどなのにすでに眠気がきている。

 
 (……寝てても良いって言ってたけど、どこに寝れば良いんだろう?寝室はあり得ないから……ここ?)


 さっきまで先生が座っていた一人掛けソファ。俺は背も小ちゃいし蹲れば寝れると思うけど、その考えもすぐに消える。先生がお風呂から上がっても、まだ仕事をする可能性もあるからだ。


 (……床、かな。……床、だな)


 自分に相応しい場所はそこしか思いつかなくて、床にペタンと座り、ソファの前の低いテーブルにうつ伏せになり、手の上に顔を乗せた。

 これが案外収まりが良くて、すぐにうとうとしだす。


 (楽しかったな、今日。ずっと……ずっと、こんな日が続けば良いのに……)


 そんなことを思っているうちに、次第に意識が薄れていった。
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