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2年目の冬
特別な夜
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私はベッドに寝そべったまま誠慈君の顔を見つめて
「じゃあ、今プレゼントをあげたら幸せが溢れちゃうかな?」
私の言葉に、彼は目を丸くして
「えっ? でも今日は予算オーバーだからプレゼントは無しって」
「私は誠慈君の誕生日にプレゼントをあげてないから、その分」
誠慈君の誕生日。私はプレゼントを買うお金が無いからと裸を見せた。
でも実際は彼へのプレゼントが思いのほか高かったので、流石に予算オーバーだなと、クリスマスと一緒にさせてもらったのだった。
ある種のサプライズに誠慈君は
「確かにプレゼントはもらってないけど、それ以上に嬉しいことをしてもらったのに。俺だけプレゼントをもらうなんて……」
むしろケチケチしないで誕生日も寄越せよと思ってもいいのに。私の裸なんて、もはやいつでも見られるものを『もらった判定』に入れてくれるの優しいな。
彼の反応をありがたく思いつつ
「誠慈君に喜んで欲しくて買ったものだから。遠慮するよりも、もらって欲しい」
「わ、分かった」
「目を閉じて?」
「うん」
私はカバンから小箱を取り出すと、彼の左手の薬指に
「えっ!? こ、これって……」
目を丸くする誠慈君。その薬指には、小粒のサファイアがついた男性用のシルバーリングが光っている。
「私も誕生日に指輪をもらったから、誠慈君にも特別な贈りものがしたくて。どうせだから誕生石のついた指輪をあげたかったんだけど、高かったからプレゼント2回分」
9月の誕生石はサファイアで、宝石言葉は『誠実』と『慈愛』だそうだ。
2つの言葉を合わせると、まんま誠慈君の名前になる。すごい偶然だなって驚いて、ケチな私には珍しくどうしても指輪を贈りたくなった。
指輪のサイズはお母さんに協力してもらって聞き出した。うちのお母さんは普段から誠慈君に婿ハラスメントしているので、何食わぬ顔で指輪のサイズを測ってくれた。
「あ、ありがとう。萌乃から指輪をもらえるなんて思わなかった。嬉しい」
誠慈君は目を潤ませて感動すると、そのままポロッと涙した。
こんなに喜んでくれるなら私も奮発した甲斐がある。
なんだか恋人の務めを果たしたような誇らしい気持ちになっていると
「あの、これ、薬指に嵌めてくれたのは、そういう意味だと思っていいの?」
「そういう意味って?」
首を傾げる私に、誠慈君は少しもじもじしながら頬を染めて
「俺も萌乃に指輪をあげたし……。婚約指輪みたいな……」
愛情の印ではあるが、もちろん婚約指輪のつもりはない。
でも誠慈君は婚約指輪にしたいのだろうか?
彼の反応に、私は少し驚きながら
「誠慈君は本当に私と結婚したいの? 私はお母さんに甘えっぱなしで、家事とかほとんどできないし、かと言って仕事ができるわけでもないのに」
恋愛と結婚では求められるスキルが違う。
人生の伴侶としては、私は誠慈君のお荷物にしかなれないだろうと
「ただ付き合う分にはよくても、結婚相手には」
しかし「向いてない」という言葉を遮るように
「何かして欲しいから結婚したいんじゃなくて、ただもっとずっと一緒に居たいんだ。家事とか仕事が問題なら、どっちも俺がやるから。萌乃はただ同じ家に居てくれるだけでいいから、ダメかな?」
それじゃ本当に捨てニャンだ。
怠惰な私に「一方的に護られるなんて嫌。お人形さん扱いしないで」みたいな自立心は無い。
本当は捨てニャン上等だが、誠慈君は石油王や大富豪ではなく一般市民だ。
働きながら家事もするのは、あまりにも大変だ。いくら私が怠け者でも、誠慈君だけに苦労させたくはないので
「誠慈君が本気で結婚したいなら、家事はこれから覚える。それでもだいぶ足手まといだけど、本当に私でいいの?」
私の問いに、誠慈君は真っ直ぐこちらを見つめながら、ギュッと手を握ると
「萌乃でいいじゃなくて萌乃がいいんだ。他の人じゃ絶対にダメで、恋愛も結婚も萌乃とだからしたい」
そこまではカッコ良かったのに、急にアセアセすると
「だからその、カップルの浮ついた口約束じゃなくて正式な婚約として、俺が就職したら結婚してくれる?」
大好きな人に、そんな微笑ましい感じで求婚されたら、嫌なんて少しも思えなくて
「うん。待っている」
微笑みながらOKすると、誠慈君は「やった!」と顔を輝かせて
「やったぁぁぁ……」
噛みしめるように呟くと、くしゃっと顔を歪ませて
「ダメだ。嬉しくて、また泣いてしまう……」
私は誠慈君ほど感激屋ではない。でも私なんかと結婚できることに、こんなに感動してくれる人が居る。
その事実がなんだか、とても胸に響いて
「……うん。嬉しいとなんか泣けて来るね」
はじめて2人きりで迎えた聖夜は、思ったよりずっと特別な夜になった。
「じゃあ、今プレゼントをあげたら幸せが溢れちゃうかな?」
私の言葉に、彼は目を丸くして
「えっ? でも今日は予算オーバーだからプレゼントは無しって」
「私は誠慈君の誕生日にプレゼントをあげてないから、その分」
誠慈君の誕生日。私はプレゼントを買うお金が無いからと裸を見せた。
でも実際は彼へのプレゼントが思いのほか高かったので、流石に予算オーバーだなと、クリスマスと一緒にさせてもらったのだった。
ある種のサプライズに誠慈君は
「確かにプレゼントはもらってないけど、それ以上に嬉しいことをしてもらったのに。俺だけプレゼントをもらうなんて……」
むしろケチケチしないで誕生日も寄越せよと思ってもいいのに。私の裸なんて、もはやいつでも見られるものを『もらった判定』に入れてくれるの優しいな。
彼の反応をありがたく思いつつ
「誠慈君に喜んで欲しくて買ったものだから。遠慮するよりも、もらって欲しい」
「わ、分かった」
「目を閉じて?」
「うん」
私はカバンから小箱を取り出すと、彼の左手の薬指に
「えっ!? こ、これって……」
目を丸くする誠慈君。その薬指には、小粒のサファイアがついた男性用のシルバーリングが光っている。
「私も誕生日に指輪をもらったから、誠慈君にも特別な贈りものがしたくて。どうせだから誕生石のついた指輪をあげたかったんだけど、高かったからプレゼント2回分」
9月の誕生石はサファイアで、宝石言葉は『誠実』と『慈愛』だそうだ。
2つの言葉を合わせると、まんま誠慈君の名前になる。すごい偶然だなって驚いて、ケチな私には珍しくどうしても指輪を贈りたくなった。
指輪のサイズはお母さんに協力してもらって聞き出した。うちのお母さんは普段から誠慈君に婿ハラスメントしているので、何食わぬ顔で指輪のサイズを測ってくれた。
「あ、ありがとう。萌乃から指輪をもらえるなんて思わなかった。嬉しい」
誠慈君は目を潤ませて感動すると、そのままポロッと涙した。
こんなに喜んでくれるなら私も奮発した甲斐がある。
なんだか恋人の務めを果たしたような誇らしい気持ちになっていると
「あの、これ、薬指に嵌めてくれたのは、そういう意味だと思っていいの?」
「そういう意味って?」
首を傾げる私に、誠慈君は少しもじもじしながら頬を染めて
「俺も萌乃に指輪をあげたし……。婚約指輪みたいな……」
愛情の印ではあるが、もちろん婚約指輪のつもりはない。
でも誠慈君は婚約指輪にしたいのだろうか?
彼の反応に、私は少し驚きながら
「誠慈君は本当に私と結婚したいの? 私はお母さんに甘えっぱなしで、家事とかほとんどできないし、かと言って仕事ができるわけでもないのに」
恋愛と結婚では求められるスキルが違う。
人生の伴侶としては、私は誠慈君のお荷物にしかなれないだろうと
「ただ付き合う分にはよくても、結婚相手には」
しかし「向いてない」という言葉を遮るように
「何かして欲しいから結婚したいんじゃなくて、ただもっとずっと一緒に居たいんだ。家事とか仕事が問題なら、どっちも俺がやるから。萌乃はただ同じ家に居てくれるだけでいいから、ダメかな?」
それじゃ本当に捨てニャンだ。
怠惰な私に「一方的に護られるなんて嫌。お人形さん扱いしないで」みたいな自立心は無い。
本当は捨てニャン上等だが、誠慈君は石油王や大富豪ではなく一般市民だ。
働きながら家事もするのは、あまりにも大変だ。いくら私が怠け者でも、誠慈君だけに苦労させたくはないので
「誠慈君が本気で結婚したいなら、家事はこれから覚える。それでもだいぶ足手まといだけど、本当に私でいいの?」
私の問いに、誠慈君は真っ直ぐこちらを見つめながら、ギュッと手を握ると
「萌乃でいいじゃなくて萌乃がいいんだ。他の人じゃ絶対にダメで、恋愛も結婚も萌乃とだからしたい」
そこまではカッコ良かったのに、急にアセアセすると
「だからその、カップルの浮ついた口約束じゃなくて正式な婚約として、俺が就職したら結婚してくれる?」
大好きな人に、そんな微笑ましい感じで求婚されたら、嫌なんて少しも思えなくて
「うん。待っている」
微笑みながらOKすると、誠慈君は「やった!」と顔を輝かせて
「やったぁぁぁ……」
噛みしめるように呟くと、くしゃっと顔を歪ませて
「ダメだ。嬉しくて、また泣いてしまう……」
私は誠慈君ほど感激屋ではない。でも私なんかと結婚できることに、こんなに感動してくれる人が居る。
その事実がなんだか、とても胸に響いて
「……うん。嬉しいとなんか泣けて来るね」
はじめて2人きりで迎えた聖夜は、思ったよりずっと特別な夜になった。
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