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季節五 冬
七と兄弟
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顔が似ているだけだというのに、何故こんなにも緊張してしまうのだろうか。七は空に手を引かれながら、彼の後ろ姿を見詰めて、そんなことを考えていた。散々連れ回された挙句、空は一室の襖の前で立ち止まった。振り向くと七が息を乱しているのに気付き、二人の目線の高さが同じになるように、空は腰を落として優しく言葉を掛ける。
「大丈夫か? すまない、無理矢理に引っ張って」
「いいよ。…それより弟達がいるんでしょ? 早く行かなきゃ」
七はそう言ったが、自分から襖を開けようとはしなかった。七に背を向けて腰を上げると、空が一気に襖を引く。襖の向こうには、確かに空の弟の二人がいた。これまた蒼と空と瓜二つの顔であった。そんな二人がぽかんと口を開けて七を見詰めていた。
「…誰だよ」
「こんにちはー」
二人は対照的に、しかし同時に言葉を発した。一人は辛気臭そうな顔だが、もう一人は笑顔である。そんな二人を見て、空が苦笑したのが見えた。
「明るいのが音、性格が悪そうなのが歴だ。随分似てない双子だよな」
空が大ざっぱに説明する。それだけの情報で、七は何方が何方か理解出来た。これだけの情報で見破ることの出来る双子というのも、そうそう居ないのではないだろうか。七は珍しい物を見るように、二人を交互に見やった。
「そして、この人は七。蒼の幼馴染…だったよな?」
七は二人から空に視線を移すと、後ろ手に襖を閉め、首を縦に振った。更に、少しばかりの説明を付け加える。
「あたしは陰陽師を生業としてるの。多分貴方達は知らないだろうけど、あたしが十歳…だから、蒼が十歳の時からここで働いてるわ」
急に辺りが静まり返った。陰陽師の話をしたからか、年の話をしたからか、きっとそれは後者だと考えられる。音が聞きにくそうに尋ねた。
「…えーと、七さん? つまり、今何歳…?」
「二十七歳だけど…」
年齢を告げると、やはり沈黙が続いた。かと思うと、歴――だと思われる双子の片割れ――が笑い出した。嘘だと思われてしまったのか、そう思った七が抗議する。ここで、この二人と同年代か年下だと思われてしまうのは避けたい。
「あたしは本当に…!」
「分かってる。…その、真剣な顔がさ、少し面白くて」
その言葉で、七を除いた三人が同時に声を上げて笑い出した。どちらにしても失礼な人ね、と思いながら、七はその場に腰を下ろした。それに倣うようにして、笑うのを止めた空も、立っていた場所に座り込んだ。
「大丈夫か? すまない、無理矢理に引っ張って」
「いいよ。…それより弟達がいるんでしょ? 早く行かなきゃ」
七はそう言ったが、自分から襖を開けようとはしなかった。七に背を向けて腰を上げると、空が一気に襖を引く。襖の向こうには、確かに空の弟の二人がいた。これまた蒼と空と瓜二つの顔であった。そんな二人がぽかんと口を開けて七を見詰めていた。
「…誰だよ」
「こんにちはー」
二人は対照的に、しかし同時に言葉を発した。一人は辛気臭そうな顔だが、もう一人は笑顔である。そんな二人を見て、空が苦笑したのが見えた。
「明るいのが音、性格が悪そうなのが歴だ。随分似てない双子だよな」
空が大ざっぱに説明する。それだけの情報で、七は何方が何方か理解出来た。これだけの情報で見破ることの出来る双子というのも、そうそう居ないのではないだろうか。七は珍しい物を見るように、二人を交互に見やった。
「そして、この人は七。蒼の幼馴染…だったよな?」
七は二人から空に視線を移すと、後ろ手に襖を閉め、首を縦に振った。更に、少しばかりの説明を付け加える。
「あたしは陰陽師を生業としてるの。多分貴方達は知らないだろうけど、あたしが十歳…だから、蒼が十歳の時からここで働いてるわ」
急に辺りが静まり返った。陰陽師の話をしたからか、年の話をしたからか、きっとそれは後者だと考えられる。音が聞きにくそうに尋ねた。
「…えーと、七さん? つまり、今何歳…?」
「二十七歳だけど…」
年齢を告げると、やはり沈黙が続いた。かと思うと、歴――だと思われる双子の片割れ――が笑い出した。嘘だと思われてしまったのか、そう思った七が抗議する。ここで、この二人と同年代か年下だと思われてしまうのは避けたい。
「あたしは本当に…!」
「分かってる。…その、真剣な顔がさ、少し面白くて」
その言葉で、七を除いた三人が同時に声を上げて笑い出した。どちらにしても失礼な人ね、と思いながら、七はその場に腰を下ろした。それに倣うようにして、笑うのを止めた空も、立っていた場所に座り込んだ。
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