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1列車到着!乗務中異常なし!。

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リサは笑顔である。
その頬に、一条の涙。

めぐは思い出す。あの日、あの時。

そう、国鉄本社へ願書を貰いに行った帰り・・・・・。
首都の駅の、ひとつ、隣の駅に展示してあった蒸気機関車。
もう走れない、途切れたレールの上にある機関車を見たリサ、18歳。

「おじいちゃん・・・・。」
そう言って。


その時、この、青い機関車がブルー・トレインを率いて
発車していき。空気笛を、ふ、と鳴らした。


落涙するリサ。Naomiが肩を引き寄せ
「いつか、会えるさ、乗るんだろ?機関車。運転台で。」

めぐも涙した。その時、この日の夢を一瞬、見たのだった。




リサは、万感の思いで、青い機関車を眺めている。
これから、国境を越えてブルー・トレインは進むので・・・・
青い機関車はここまで。
国境超えの赤い機関車が付け替えられる。

その為に、いつもはここで、すぐに車庫へと格納されるけれど
きょうは式典があるので、すこし、そのまま。


その間に、TVやラジオ、新聞などへの取材に応えたり。



その彼女は、ここまでの鉄道員人生を回顧していた。



「いろいろ、あったな・・・・。」




国鉄の奨学金を貰って、大学に行った。
普通は鉄道総合研究所とか、管理職コースに行く。でも、そうはせずに
機関車職場を希望し、軋轢があったこと。


元々は、国鉄の慣習で
大学卒でも、一応は職場研修と言って
鉄道の現場を一年程度、経験する。

普通は、管理職候補は別格扱いなのだけれども
彼女は、機関車職場を希望して。
「手」職と言われる、一番下の庫内手、アルバイトのような仕事から
習った。

蒸気機関の時代ではないから、そんなに汚れることはないけれど
それでも、機関車の下回りの点検や、整備の手伝い位は行うので
整備服、つなぎのそれを着て。
整備士のように働いたりした。
それから、機関助士職になり。それから、受験。
そうしないと、機関車の免許証・・・甲種動力者運転免許証を受験させては貰えない。

一年程度の実地研修で、そこまで行くのは大変である。

中学出であれば、3年は庫内手が普通で
格別努力家でもない限り、そこから3年程度は整備見習いで
それから機関助士である。

そこまで行けない人も多い。




電車職なら、そうではなく
駅員=>車掌=>運転士となり
研修程度で運転免許は得られる。

機関車は特別、厳格なのである。

特急列車であったり、貨物列車であったり。
どちらも運転が大変難しく、危険であるから。そういう理由だ。




しかし、敢えて機関車職を希望したのは・・・他ならぬ祖父への想いがあったのと
この、ブルー・トレインが廃止されるまでに乗務したい。
そういう強い意志があったから。


そうとしか言えないと、リサ自身は思う。



その全てが、終わった。そういう思いで、青い機関車、EF66-54号機を見つめた。

子供の頃、よく路傍から見上げたこの機関車は
白い冷凍貨車を長く率いて、高速で駆け抜けていく颯爽とした存在だった。


「いつか、ブルー・トレインを引くといいな」と、彼女は思っていたけれど

それが、10年程後に実現して。
ブルー・トレインにも、幾度となく乗車した。


彼女の叔父は、車掌としてブルー・トレインに乗務していて

「いつか、乗務できるといいな」と言って

乗務に随行した時に、ドア・スイッチを扱わせて貰ったりして
旅を楽しんだ記憶がある。



その叔父も、もう、天に召されている。





その思い出が、いくつも心を駆け抜けて行った。


「これから、何を目標にして生きていくのかな、わたし」などと、ふと思ったりもした。












「めぐ、さん?」と、優しい声。



「・・・?」めぐは、現世に戻る。


声は、クリスタさん。
ふわふわと、所在なげに。


めぐは、一瞬、time-slipをしていたのだけれども・・・・
天使、クリスタさんにはそれは理解できる。


此方の世界では、ほんの一瞬の事なのだ。



傍目には、微眠みの中の夢・・・と見えるのだけれども。



「ああ、クリスタさん、ありがとう」と言って
見た目はめぐにそっくりの、クリスタさんと微笑みあった。





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