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lissa's memory

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会話はテンポなので、

めぐみたいに、物思いに耽ったりすると


ちょっと、テンポが外れた感じになったりして


その、アウトテンポ感は、若いリサたちは
ふつう、敏感だから


テンポが前乗りになってしまうのは
バンドアンサンブルを
た人には、よくわかる
あの感覚である。



声が大きくなるのも、それと同じで

自分のテンポを保つ、と言うより
相手のテンポと競い合う感じだ。

それが若さ、行動力の証である。

なのに、めぐはそのテンポ感に
合わせないあたりを



リサは「おばあちゃんみたい」と
評した。
(笑)




めぐは、もちろんおばあちゃんではないのだけれども

同じ年齢のひとよりも
時間旅行をしたりして

経験が多くなっているから

そのせいで、考える事も多くて。



それを、めぐ自身「老けちゃうから、記憶を
消しちゃいたい」なんて(笑)思うくらい。





「あ、ごめんごめん、ちょっと
物思いの秋だから」と

めぐは言って。

「まだ夏だよ」と、リサに言われて


そっか、と笑って。



物思いを打ち切った。

でも、気になるのは
やっぱり、この時空間、


神様が粛正したのとは別の
理由で、時空間が歪んでいるのではないかな?と言う疑問だったりした。


ふつうに、一体して見える時空間が
多重していて。



空間軸がふたつある、そんな例。


リサに、弟がいたり、いなかったり。



そんな事ってあるのかなぁ?と
めぐは思う。



「ねえ、リサってさ、ミシェルの
お姉さんだよね」と、聞いてみたりして




リサは「そうよ、なに言ってるの?
変なめぐ?」と


快活に笑うリサは、いつものリサだ。



やっぱり変なのは、めぐの方なのだ。



「魔法なんていらないよ、まったくぅ」と
めぐは、心の中でつぶやいた。




こんな面倒なもの、いらない!と


めぐは、魔法をしばらく封印しようかと思ったり。




未来の事も忘れて。


ふつうに、女の子として毎日を暮らす方が
幸せ。




そんなふうに、気まぐれに思った。


そこは、17歳である。







ミシェルは、そんなめぐの様子を
恋する者の観察力で、察している。

でも、魔法使いだとは
いくら恋する者でもわからない。



滝のように流れるプールの中で、涙に揉まれていると

それどころではなかったりもする(笑)








社会を持って、人間として生きるようになってからの時間は相対的に短く、

反対に、人間に進化するまでの時間の方が長いから



自らの身を守り、戦うような
そういう機会が、いまの社会ではほとんどない。

なので、行動力が余ってしまう。


そんな理由で、運動をしたり、スポーツを
しないと
心が、不健康になっちゃったり。




リサは、そういう点スポーティーだから


健康的、なのだろう。




めぐは、本が好きだったりして
普段から、空想に心を遊ばせる事に慣れているから

いろいろ、見聞きした事などを

連想してしまったりする。



それは、癖、みたいなものだけれども



そのせいで、魔法をうまく使えたりもする。




いまは、魔法を疎ましく思ったりもしているようだけど。






ひととは違う能力のある人は
だいたいそんなもので


その能力の有り難さに
気づかなかったりする。



めぐも、そうなのかもしれない。








ミシェルに慕われて、いいお姉ちゃんの
役を演じるのにも疲れてしまっためぐ(笑)は


でも、泳いで来たので
結構、健康的に疲れた、そんな思いで


家路を辿る。




と、言っても
坂道を下るだけ、なのだけど。




きょうは、リサもミシェルも一緒だから


歩いて下って。


畑の中の道を、


いつかルーフィが
初めて来た時のように
歩いた。



ほんの少し前なのに

とても、遠い思い出のような

そんな気がするのは


めぐが、時間旅行をしたせいで


その短い間に、沢山の経験をした
そんなせいもあるだろう。




確かに、それは疲れてしまいそうだ(笑)。






「ミシェルはさ、うちの学校に志願したいんだよね」と
リサがからかう。




無理よ、女子校だもん、って
笑いながら。


「お姉ちゃん!」と
ミシェルは怒る。





「ほんとなの?と、めぐはびっくりした。
リサの冗談だと思ってたのだ。





「でも、うちの学校に来ても
大丈夫っぽいし。

女の子に人気出るんじゃないかなぁ」と、めぐも冗談半分に。


ミシェルは、困ったような顔をして

「行かないです。ただ、めぐお姉さんと一緒の学校だったら楽しい、って言っただけで」と


ミシェルは、むきになって怒る(笑)

そんなところも、少年らしくて
とってもかわいい。



優しく、なでなでしてあげたいような
そんな少年。




でも。「ミシェルが来る時は
卒業だもん」と、めぐは
残酷な現実を(笑)。





「タイムスリップが出来たらいいのに」と
ミシェルは、SFのような事を言うけど



この3年あと、めぐがタイムトラベルして

ミシェルの願いを叶えた事になる訳で(笑)。



願えば叶う事、ってあるんだな、と
めぐは思う。

ミシェルの願いを、神様が叶えてくれたのかな(笑)
なんて。




ミシェルの
その思いは、この時からのものだったの。

と、めぐは、改めて
ミシェルの一途な思いに、感心した。





そのくらい、人を思ってみたいな、なんて(笑)


めぐ自身が、ルーフィの事を
少し前、思ってた事なんて

もう忘れて。



そうして、楽しい一日を終えて
めぐは、家に帰る。

「ただいまー」と、言って

お母さんは、いつものように「おかえり」と
忙しいのか、キッチンから出てこない。

おばあちゃんは、リビングで何か、ラジオを聴いてて

「おや、おかえり」と。にこにこ。

FM放送だろうか、静かな交響楽。
美しく青きドナウ、とか

定番の音楽だけれども、長く愛されているだけに
いつ聴いても、心惹かれる音楽だ、と
めぐも思う。








美しい音楽のように、心惹かれる
対象は

自然に、惹かれる。


それは、記憶の中、遺伝子の中に
残っている情報、Memoryなので


記憶の持ち主には、どうする事もできない。



不条理だと思う。けど

そういうシステムに
人間は出来ている。




書き換え不可Memoryを、書き換え可能にする

コンピュータで言えば、そんな事になるだろう。

めぐの魔法は、そういう理論で解析ができる。



夢で記憶を組み替えるのは、近代の精神医学でも
しばし使われる治療法であったりもするので
格別、変わった事でもない。


ただ、医師は魔法使いではないから(笑)
麻酔で患者を眠らせて、
夢に語りかける訳なのだけど。








ーーーもちろん、めぐが理論的に考えて
開発した(笑)訳でもない。




自然に、めぐが
会いたいと思っていた、老犬さむや
おじいちゃんに
会うために、夢に旅する事ができた、
そういう事だ。
















ーーーーーーーー;ーーーーーー





ミシェルは、坂道の途中、めぐの家まで来て

名残惜しげに、めぐに別れを告げる。




「きょうは、、ありがとうございました。」と
礼儀正しい少年である。



「めぐお姉さんの水着、見て
興奮しないでね、夜」と、リサはからかう。




「お姉ちゃん!」と、ミシェルは怒る。



じゃ、またねーめぐ。と


リサは、駆け出して逃げながら(笑)。




楽しそうだ。




めぐは、笑顔でふたりの後ろ姿に手を振りながら

「でも、ミシェルがあたしのヌードを想像して興奮するのかしら、夜(笑)」なんて思って


まあ、それもあるだろうなぁ、男の子(笑)だもん。



と、それほど不快には思わなかったのは


ミシェルが、愛らしい少年だったからで


仮に、めぐの事を思っていても
それが、愛ゆえの事で

めぐだけを思ってくれるなら、

そんなに気にならない。






なーんて、想像では思うけど。


「でも、ミシェルを選ぶかどうかはわからないけど(笑)」なーんて。


勝手な事を思ってるめぐ、18歳(笑)。







「たらいまー」と、口調が砕けてしまった(笑)。




おばあちゃんは、まだ畑。



めぐは、かばんの中の水着を
洗濯機に入れて。回してから


裏口から、畑に出た。



「おばーちゃーん。」と


サンダルで、とことこ。たったか。




おばあちゃんは、お風呂の掃除をしていた。


お風呂場は、温泉小屋の中にある。



桧のお風呂を、束子で流して。



木の香は、清々しい。



いつも湧いている温泉だから、お風呂の栓をすれば、すぐ入れるけど。




「おや、めぐ、おかえり。」と

おばあちゃんは、お風呂の桶の掃除をしながら。




「おばあちゃん、お掃除好きね。」と
めぐは、見たままの感想(笑)。




お掃除好きね、おばあちゃん。と
めぐは言う。


「そうよ、気持ちいいでしょ?」と
おばあちゃんはにこにこ。



「気持ちいいけど、入ってる方がいいな」と
めぐが言うと

おばあちゃんは楽しそう。




「そうね」、と笑っている。


おばあちゃん好き。



ふんわりしてて、優しいもん。


と、めぐは思う。




ずっと、一緒にいようね。


とも。






ボーイフレンドと、デートするなんて
面倒で(笑)。



おばあちゃんと一緒のほうがいい、って

そんな訳で、ボーイフレンドも作らないめぐだった。


ミシェルとの、きょうのプールが

デートだったら
違うけど(笑)なんて。



思い出すと、リサとミシェルは
本当に、仲良しで




にこにこ、思い出してると


おばあちゃんは
「めぐ、楽しそうね」って。




うん、楽しかったよー、って
めぐは答えるけど




洗濯が終わったので
水着を取り出して。


干す。


レモンイエロー、少し、蛍光が掛かってて。



お日様の光に当たって、きらきら。




色は、面白い。

レモンイエローに見える水着は、実は、その補色になる色を

吸収しているので、黄色の光を
跳ね返して、黄色に見える。



蛍光も、もちろん同じ理論。



波長があう、なんて言うけれど

その波長で、色んないろに見える。



虹のなないろ、とか。




わんこは白黒にしか見えないらしい。


ミツバチは、蛍光色に敏感で

だから、サルビアとか、蛍光色の花を
持つ種類が増えたりする。


ミツバチが好むからで

それも、波長の好みである。









それはともかく(笑)。


波長って、波の周期だから


人の好みに波長、って言うのも
面白い類推で、あながち
的外れでもない。






そういう理屈を知らなくても、
感覚で、好き嫌いを決める、基準を波長って言う物理用語で比喩するのも
なんとなく、面白い。


めぐとおばあちゃんは、波長があうのだろう。






peppermint
「おばあちゃんは、魔法使いが
いや、になった事ない?」と
めぐは、今の心境を打ち明けた。


おばあちゃんは、穏やかな微笑みのまま
「そうね、お仕事じゃないから。
使わないのは、自由なのよ。
使わなくてはならない時が、もしあったら。
そんな時に使えば、いいの。」と。



「あたしね、お友達が辛い事にあうのが
わかってて、何も出来ないなんて...

未来が分かってしまうって、嫌な事もある。
そういう心配ばかりしてると、老け顔になっちゃいそう(笑)。」


って、めぐは、軽くユーモアを交えて。




おばあちゃんは、笑って「そうね。知りたくないなら
知らないほうがいい事もあるわ。
めぐが思ってるように、忘れちゃうってのもいい方法。」


と、おばあちゃんは言う。




もともと、人の心は
辛い事を忘れるように出来ているので

その為に夢を見るので


めぐが、未来のことを忘れたかったら
忘れても、別に困る事はない。


なんていっても、これから起こる事だもの(笑)。



おばあちゃんは、そう言いたいのだろう。




「そっか。わかった。あたし、魔法を気にしない。
そうする。」と、めぐはきっぱり。


おばあちゃんも、うんうん、と頷いた。






それから、めぐは
自分の部屋に戻ろうとして、
階段のところで、にゃごに会ったけど


彼の、10年後の年老いた姿を連想してしまうので


そんなのは、忘れてしまおうと(笑)。

自分のお部屋で、お昼寝して。


自分の夢に魔法を掛けて。
未来で起きた事を、全部忘れる事にした。

だって、これから何かが起こる、って
思ってた方が楽しいし。


心配ばかりしてると、本当に老婆心(笑)いっぱいの18歳なんて
なんかヘン(笑)




お昼寝して、ゆっくり起きたらもう夕方だった(笑)。


すっきりと、目覚めた。




爽やかに目覚めたのは、
たぶん、めぐ自身が

魔法、なんて訳のわからないものを
使う事を運命だ、と言われても
(笑)ねぇ、って

そんな感じ。


あまり面倒だと、嫌になってしまう。


よくあるように正義の為に働くとか
言っても、それで、疲れてしまうなら


嫌。


それは、ふつうの感情だと思う。


まんがみたいに、正義のヒロイン、なんて
ちょっと、できそうにない。


今のめぐは、そんなふうに感じていた。

人間だから、そんな時もある。




おばあちゃんは、それがわかっていて


おばあちゃん自身の経験から、
「自ら必要だと思うまでは、お休みしても
いいわね」と

そんなふうに思った。

でも、それをおばあちゃんに言われるより
めぐ自身が気づいたほうが、
めぐ自身が、気持ちよいだろうと

そう思って、何も言わなかった。


おばあちゃんも、魔法使いさんだから


18歳くらいの時、同じように
思って

誰かに指図されるのは嫌な年代だし、と


そんな、記憶を思い返して。





めぐは、自分自身で

魔法に、夏休み(笑)。



それも、楽しいVacation。



階段のところで、にゃごに会っても。

にゃごは、ふつうの猫で


めぐは、年老いた彼を想像して悲しくなる事もない。




子猫を慈しむ、にゃごを
楽しそうに眺めるだけ。





「きょうは、図書館行くね。クリスタさん、いありがとう、いままで。」と


クリスタさんの部屋に行って、言おうと思ったけど

果て、今目覚めたけど


夕方だった(笑)と


気がついて。


「そっか、あたし、お昼寝してたんだっけ。」と


誰もいないのに、恥ずかしくて
真っ赤になっちゃったり(笑)。



じたばたして、表に出ようとして
サンダルを履きそこねて
転びそうになったり。




夏休みが戻って来たみたいな、そんな気持ちに
めぐは、なっていたりした。





夕方、クリスタさんが帰って来てから

めぐは「いままで、ごめんなさい。
明日っから、図書館行きます」と



めぐは、クリスタさんに言う。
同じ歳のはず(笑地上では。)なのになんとなく、敬語になっちゃうのは
おもしろいと言えば面白い。

なーんとなく、落ち着いてて
軽くないなー、そんなとこは
やっぱ、天使さんだね、って


めぐは思う。


クリスタさんは、いえいえ、とかぶりを振って
「図書館、楽しいです。
明日からも、一緒に行けたら
楽しいですね。」と。




それはそれで、楽しいかな。

めぐは、そんなふうにも思う。



一緒に行けると、何かと心強いし。



ひとりの帰り道より、ふたりのほうが
楽しいし。


雇って貰えるか?と言う問題は別にして(笑)。



クリスタさんは
、何も言わないけど


あの、司書主任さんの甥御さんの
映画作家さんが、
ずっと誘いに来てたんじゃないかな?
なんて、思って。

それなら、しっかりと断らないと(笑)。
なんて、めぐは、向こうの世界で起きた
有名人生活(笑)を思い出して。


もう、あんな事は沢山だと

有名人になる前から、そう思っていたり(笑)。




でも、それなりに楽しいVacationを
これから過ごせるような

そんな気持ちもして。






そう、未来の記憶は忘れたけど


魔法の記憶は、別に忘れてもいなかったり。





「そうそう、きょうね、リサ、あ、あたしのクラスメートなんだけど。

その子とね、弟のミシェルと

一緒にプールに行ったの。



楽しかったな。
クリスタさんって、プール行った事ある?」と

めぐは、楽しそうに聞くと、クリスタさんは、
ちょっと俯いて、恥ずかしそうに

「いいえ、泳げないの」と。
意外な事を言った。





「天使さんって、なんでもできるのかと思った」と

めぐは、ちょっと意外な言葉に

クリスタさんが気を悪くしないように、言葉を選んだ。





でも、元天使なので、そんな事で気を悪くはしない。


元々、気を悪くすると言うのは
人間的な人格の言葉で


自己顕示があるから
起こる事、である。この場合。



天使で、自己愛がないから自己顕示もないのである。






その構造を、めぐが意識している訳ではもちろん、ない(笑)

ただ、ふんわりしてていいなぁ、と

思うだけ。





人間であっても、競う気持ちにならなければ
同じ境地に達する事はできるので


事実、クリスタさんは
天使を退職(笑)して今は、人間世界に
降りている。

人間ではないにせよ。






天使さんを退職、と言っても
退職届を書く訳でもないし(笑)。

神様に雇われてもいないので
失業保険が貰えないし(笑)。


それ以前に、雇用保険にも入ってない。

そもそも、雇われていない(笑)。


でも、神様はわがままである。ふつう。


「天使を勝手に辞めるなど、許さん」と

天使さんより、ずっと人間っぽいのは
大抵、そういうもので
リーダーになる者、と言うのは
客観性が必要で
自らを律する力がある事が条件、である。


全能の神、とはいえ

それ故、自己抑制が必要、である。

例えば、天使を辞めると、クリスタさんが言っても

「許さん!」と認めない神様は

労働基準法違反である(笑)。


退職の14日前に意思を表明すれば、辞めてよいのだが

それは人間の世界の話(笑)もとより、雇われてもいない。



クリスタさんは個人事業主になるので、労働基準法の対象外だ、として
神様は、責任逃れをしてはいけないと(笑)


自らを律する者が、神様になれる。


だから、神様なのだけど(笑)


実際には結構、神様はわがままで
人間界の法律も及ばないから、したい放題である(笑)


でも、天使さんもそれで一向に構わないのは


天使さんは、神様の配下でもなんでもないところで。

それは現実である。



宗教の本に書かれている事と、大きく違うのはそのあたりで
実は、神様は天使さんに命令できる訳でもない。

神様が一番で、あとは部下、なんて構造は
宗教を、社会の統治に利用しようとした人間の創作である。(笑)。


ジーザスも、仏陀も別に威張ってないもの(笑)。


自由意志で行動するから、天国なのだし極楽浄土なのだ。


拘束される幸福なんて、あり得ない。





そんな訳で、クリスタさんは天使さんを自由意志で退職(笑)して

失業保険ももらわず(笑)


地上に降りた。

それは、悪魔くんから生まれ変わったにゃご、今猫の姿をしている
彼の魂を救うため。


それは立派に天使のお仕事なのだけれど、めぐに宿ったまま
悪魔くんだった頃の彼に出会ってしまったので......。


天使と悪魔は、住む世界が違う。


それで、悪魔くんは魔界を捨てて、猫に生まれ変わった。
まず、動物に生まれ変わるのは順序で
そこから修行を積んで、魂を磨いてゆき
人間になって、いつか、天国へゆく。



それは、宗教の経典にもあるけれど
そこは真実である。

社会、天界も魔界も人間界も社会である。

それぞれのフィールドに適応して、助け合うこと。

それを続ける事が社会の為である。


助け合えない者は、反対に天界から人間界、動物界、魔界と
陥落する。



生物社会学、と言う日本の京都大学で興ったジャンルは
仏教国でありながら、そうしたニュアンスには西洋的な宗教の
ムードも感じられる。

家族、と言う最小単位の「社会」を持つ事が人間。


それぞれの社会のために生きる。
利己的なのはNGだ(笑)と言う、分かり易い定義だけれども。



理科系の発想、でも文科系の宗教の経典の
定義にもなっていたりして。



ユニークな学問である。







地上に降りた天使、クリスタは
いま、元悪魔くんの猫、にゃごの魂を癒す為に
彼にとっての女神になっている。


それは、愛。


彼がもし、人間界に居るうちに
癒しが得られたなら......


彼は、悪魔にならずに済んだが

それは、もう過ぎたこと。

これから先、「時間」はいくらでもあるので
生まれ変わりを繰り返して、魂を磨いてゆけばよいのだ。



人間界に、もっと天使がいるといいのだけれど....。




めぐは、そんな意味で
ミシェルの天使だったのだろう。


かりそめの、でもいいし

嘘でもいい。


心の中に、天使がいれば
男の子は、優しくなれる。


女の子だって、心に天使がいれば。

優しい気持ちになれる。




にゃご、みたいに
天使さんを見つけられたら
いつだって、優しい気持ちになれる。


その、誰かを守る為に生きられる。



天使のいる世界を守ろうと思う。



そう、利己が起こるのは
天使さんを見つけられなかった
から。




もっと、天使さんがいっぱいになればいいのに。





どんな、辛い事があっても
天使さんが心にいれば、大丈夫。






めぐは、魔法使いと言う
魔世界に近い人なのに

天使さんが一緒だったせいで
どことなく、行動が天使さんっぽい。



そのせいだろうか。



天使さん、クリスタは
めぐの魔法使いとしての
未来を案じ、自らめぐから離れた。

人間世界では、天使は生きてゆく事ができないから


天使としては辞して、クリスタと名乗り
にゃごの生まれ変わりを見守る。


クリスタさん自身は、何も得はないし
むしろ、損な事。
なのだけど、元々損得と言うのは
人間の概念で

社会生活が、貨幣の流通によって得られる近代社会で


その貨幣を多く得る事が得、と
定義する概念。



だから、天使に損得はないのである。



人間でも、損得に駆られなければ
似た境地には達する事ができるのだけれども。




めぐも、友達のために損得なく働いて。

それは、天使さんっぽい行動だ。




現人神、なんて言うけれど

それは、こういう時に言う言葉である。





ーーーーーーーーーー




ミシェルは、夜になって
リサの言葉を思い出して(笑)

興奮はしないけど(笑)でも

めぐお姉ちゃんのレモンの水着姿は
魅力的だったので(笑)。




「僕は不純なの?」なんて
思ったりする。


14歳の少年である。




心の愛、と言うものが
文学的に、それまで教えられて来たので



どうして女の子を愛すのか?と言う
根源を教わっていないから悩む(笑)。



別にに悩む事はない、と理系の概念で
愛を語るひとが

文学的な愛を綴るひとにいない、と言うだけの事で


元々愛は、生命を守る為の機能だから

ミシェルが、めぐを
愛らしいと思うのは当然である。



不幸にして兄のいないミシェルは、異性である
姉、リサには教える事のできない
男の子としての愛、その真っ只中にいる。


愛する人を抱きしめたい。自然な事だけれども


それを教える事ができるのは

お兄ちゃん、なのだけど。


男の子にとって、初めて恋する女の子は
天使、神聖にして侵すべからぬ存在なのに

ミシェルに限らず、夢想でその天使を抱きしめたいと
思ってしまうのは

生き物としての、連綿とあるプログラムのせい、で
本人の意識ではない(と、あの、ジーグムント・フロイドも
言っていたりする)。

だから、恋する男の子が不純なわけじゃない。


でも、それを説明できる大人は
少ないし、恥ずかしいから言わない(笑)


それで、悩める青少年にとって、役に立つのはお兄さんなんだけど。


ミシェルに居たのはお姉さんだから、そんな事を告白できよう筈もない。


「エッチ!」って言われるだけ(笑)。だもの、



お姉さんは女なので、男の子の心の構造など
理解できようもないから。


かわいい弟が、恥ずかしい夢想をするのは
ちょっと許しがたい(笑)のだろうし。




それで、かわいい、かわいいで
ミシェルの男としての自負は、自然に抑制されてしまって。


いつか、爆発するんだろう(笑)。


ふつう、そんな事があって

デジタリィに、少年は青年になるけど。







その限界が、ミシェルにとっては
3年あと、17歳のあの日に
起こるんだろうけれど。


それは、憧れのめぐお姉ちゃんが
タイムスリップして、18歳の姿で
17歳のミシェルの前に出現したから。


たぶん、14歳の頃に
想ってた偶像。




それに出会えたから。


ふつう、そんな事は起こらないから
たぶん、ミシェルの抑制は
ずっと、変わらない

可愛い少年のまま、青年になっていくのだろうけれど。






その、めぐのタイムスリップは

親友リサの窮地を救うため
3年あとの未来へ行ったから、起きた。




でも、その事を忘れてしまって

これから起こる、リサの窮地を
めぐが、今、救ってしまうと....

タイムスリップは起こらない。







それは、ミシェルの未来も変えてしまうけど
もともと、未来は未定なので


それを知っている時間旅行者めぐだけの物語だった。



でも、めぐもそれを忘れてしまったので


未来は、それぞれに必然性があって
変わってしまう。




それも、仕方ない。







リサにとっての不幸は、その夏休みの終わり頃に起きた。





定年間際のおじいちゃんが、午後に
国鉄から戻ってくる。


もう、おじいちゃんの若い頃情熱的を
傾けた
蒸気機関車は走っていなかったから

スマートな電気機関車に、おじいちゃんは
乗務していたけれど



どことなく、物足りなさを
感じていて。



もう、定年を迎えるおじいちゃんは
後継ぎを、国鉄から求められていて。




思案。






......ミシェルは、機関車乗りには
向いてない。



内務向きだろうと、おじいちゃんは思っていた。



それに、まだハイスクールにも入っていない。




「女の子だが、リサは機関車乗りになれそうだ。」と、おじいちゃんは思う。


電気機関車なら、上等だ。



汚れる事もないし。





そう思った。でも
大学を出てから、上級職員になって
機関車乗りになっても、別に悪くない。


それなら4年後だな、と
おじいちゃんは思った。



郵便局のように、大学卒業でも
現場から働いて、仕事の有り難みを
体感させるのが

国鉄のやり方だった。





それなので、鉄道に向かない人間は
そこで、いなくなる。



公共のために働くのが、国鉄職員である。






「リサの気持ちを聞いてみるか」と
おじいちゃんは思った。






国鉄の仕事、もちろん始発を運転する
事もあるから

朝早かったりする。


この日は、そういう日で
朝5時に出勤、と言う事は
3時頃起きて、職場に向かう。


なので、午後3時頃には帰宅できる。


終列車の時や、夜行の仕事は

夕方出掛けたりするので


年中、時差ぼけのような気分で

時折、神経が疲れる事もあった。




この日も、そんな感じ。



リサは元気で、スポーツをして
清々しい気持ちになって。

縁側から戻ってきた。

ラケットを持っていたから、テニスにでも
行ったのだろう。




「ただいまーあ」と、リサは

おじいちゃんにごあいさつして
縁側から上がった。




おじいちゃんは、疲れているので
短絡的に、リサに尋ねる。


進路の事。




家には、ミシェルがいるだけ。




でも、2階の部屋で
本でも読んでいるのか、静かだ。





[なに?おじいちゃん」と、リサは
楽しそうな、スポーツの昂揚醒めやらず。







おじいちゃんは、ぶっきらっぼうに「国鉄に来ないか」。




つい先日、おじいちゃん自らが
[大学を出てから」と言ったばかりなのに、と
リサは不審に思ったけど、仕事の後で
疲れてるのかな、と。


おじいちゃんを労い、でも

「大学出てから、って言ったじゃない」と



つい、スポーツのあとなので


言い方が雑になった。




その、言い方が

疲れてたおじいちゃんの神経に障ったらしく


おじいちゃんは苛立った。



この時、おじいちゃん自身は
健康を損ねていたので
ひょっとして、
リサの大学卒業まで、自分が
生きていられないかもしれない、そんな
予感を持っていて。



いまのうちに、技術を教えたい。



そんな焦りがあった。




おじいちゃんの息子は、3人いたが
長男は夭折、次男、つまり
リサのお父さんは、自動車のエンジニアになった。

3男は、国鉄には入ったが
機関車には向かず、車掌になったので
機関車乗りとしての後継ぎが、欲しくて。





タイミング悪く、リサは
「こないだ、おじいちゃんが言ったんだよね。大学出てから、って。
急にそんな事言われても。
わたしは、おじいちゃんの機関車じゃない。
急に行先変えないでよ、それじゃ
汽車だって脱線しちゃうよ」と 

ユーモアを交えて言ったつもりが


鉄道職員にとって、冗談でも
脱線、は言ってはならない言葉だ。



脱線トリオ、転覆トリオと言う
お笑いさんが、国鉄には
絶対に呼ばれなかったのは有名な話である
(笑)。




それで、おじいちゃんは怒る。



疲れていたのだ。




リサも、18歳の女の子である。

「レールの上を行くなんて嫌よ。」と
心ならず、そんな言葉を言ったのは

勢いだ。



若いんだもの、そんな事はある。






特別、そのリサの言葉は
おじいちゃんを傷つけたとも思えなかったけど

リサは、優しい子なので

その、言い過ぎた感じを反省した。


けれども.....。


おじいちゃんは、例によって
勤務が過酷なので


疲れで、帰宅すると険しい表情になっていて

リサは、怒っていて不機嫌なんだろうと

その表情を誤解して、反省のことば、ごめんなさいと
言い出す事ができずにいて。



そのまま、夏休みが過ぎていった------。




秋を迎える頃、おじいちゃんは定年で
国鉄を退職した。


無事故で、機関車乗りとして
仕事を終えた事を誇りにして。

最後の仕事は、寝台特急列車の早朝運転だった。

海峡の駅、国境のそこで
おじいちゃんは、機関車から降りる。

青い塗装の機関車は、光り輝いていて。


行く手には、国境の海底トンネルが開口を見せていた。


そこで、機関車は付け替えられて、車庫へと格納される。


本線を走ってきた特急機関士のおじいちゃんは、白い制服に制帽。
ホームで、同僚や後輩たちの拍手に迎えられ、最後の仕事を終えた。

早朝とはいえ、たくさんの職員たちに労われ、花束などを
受け取り

乗務はそこで終えた。


鉄道員としての人生も、そこで終わったような気が
おじいちゃんはしていた。

機関車に乗る事が、生き甲斐。


不思議な事だけれども、男にはそんな人生もある。


社会、と言うものを公共に仕える事で支える。

それは、やっぱり愛する者たちを間接に守る事なのだ。


大きな機械を動かす事、責任を持って危険から人々を守る事。
それも、男の在り方のひとつ。

そう、おじいちゃんは思っていた。



それが、終わってしまう。



気力が、萎えてしまったのだろう。







それから暫くして、おじいちゃんは
健康を損ねた。


国鉄職員に多い事だが、それまでの仕事への責任感から
気力が健康を辛うじて維持していて。

それが無くなると、病気になったりする。

細菌感染などは、抵抗力、体の中で
細菌に立ち向かう力が感染を抑えているが
気力が、その抵抗力の源だったりする。

免疫学で言うと
細菌感染などへの抑止力を持つ抗体は

気力、つまりストレスへの対抗意識で働きが強まる。
IgE抗体と言って、例えば異種蛋白などに対抗力を持つ抗体は
そのせいで、自然物、花粉などにも過剰反応してしまう(から、アレルギーが起こる)。


その反対で、気力を失うと.....。



おじいちゃんの病気は進行し、そして.....。終焉を迎える事になった。





呆気なく、リサのおじいちゃんは
天国へ行ってしまったので

リサは、病床で

ごめんなさい、ごめんなさいと
泣きながら、あの日の事を
謝った。



「わたし、遅いけど
国鉄に行きます」

おじいちゃんは、薄れる意識の中で

それはいいんだ、と
手を振った。

言葉を発する事は、もう出来なかったので
その意思は、リサに伝わらず.....


振った手は、リサには


さようなら、と
機関車の上から、白い手袋で
振った手のように、思えた。




甚だ不条理だけれども、思い込みは
そういうものだ。










リサは、大学へは行かず
国鉄に就職すると決めた。


しかし。




学校での反応は、良くない。




「もう、国鉄への推薦枠は、他の人に
振ってしまったわ。

あなたが志望すると、誰かが困るのよ」と
就職担当の教師は、告げた。


リサは勉強もできたので
推薦なしでも、受験はできる。
合格もできたろう。


けれども、この地区での採用枠は
決まっていて。


各学校に、割り振られて
誰も落第しないように、と
推薦採用が行われていた。



それは、国有鉄道ならではの思いやりで


リサがもし、採用されたら
誰かが泣く事になる。




そして、名機関車乗りだったおじいちゃんの
孫、と言う事だから


誰か、クラスメートを泣かせる事になるだろう。





「大学へ行ってからじゃ遅いの?」と

教師はリサの意思を理解しなかった。




それは、リサの思い込みで
罪滅ぼしをしたいから

そうしないと、救われないような
そんな思い込み。




でも.......


誰か、クラスメートを泣かせる訳にもいかない。




リサのおじさん、北の方の町で
車掌をしている、(おじいちゃんの3男だ)は


「こっちに来れば、国鉄に入れるぞ」と



朗報を。




リサも、ずいぶん考えた。




親元を離れるのは辛い。
まだ18歳である。



どうしようか、と
迷っているうちに、こんどは
リサの父が、病床に臥した。



どういう偶然か、おじいちゃんと同じ病気だった。




リサは、のんびり大学に行く気持ちにもならなかった。


ミシェルは、これから高校。

お金も掛かる。



母ひとり置いて、北の町に行く
気持ちにもなれなかった。






何もかも諦めかけたその時......



ふと、新聞を見たリサは

「市交通局職員募集」の

一般公募を見た。


路面電車の運転士。




「これなら......」リサの心に
光明が射す。



同じレールの仕事なら。


おじいちゃんも、許してくれるかもしれない。



実際、国鉄職員になっても
女子の機関車乗りは、前例が無く


成れるとは知れなかった。



試験も、難しい。




路面電車の運転は、これまでも女子の
採用例があった。




そんな理由で、リサは......


路面電車の運転を志した。





そう、思い込みが原因だったのだけれども。
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