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恋は、心の琴線

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恋は、心の琴線に触れたものが
奏でるミュージック、である。


それを制約するのは、社会の仕組みとして
家族を単位としているから、である。

日本では、一夫一婦制で
税金を徴収するから(笑)と言う理由で

ワン・ペア以外は違法となっているだけ、だし
フランスでは同性婚も認められているし
一夫多妻の国もある。


社会制度の仕組みに、婚姻が利用されている
だけの事だから


楽しく過ごすだけの関係に、規制は無用である。



そうは言っても、親が心配するのは
争い、つまり金銭や遺恨になるから、と言う理由である。


つまり、面倒を避けたいと言う処世術である。


ただ、失敗を怖れて何もせず、無難な人生を送るのは
死ぬ為に生きているようなもの、である。

生きること。


何の為に生きるのか?


生物学的な理由ではなく、人として
生きている、かけがえの無い時間、
限られた時間の中で、多くの喜びに触れ
その気持ちで、社会をより、良いものにするのも

生きる、と言う行為である。


その事を忘れ、損得だとか、勝負だとか
そういうものに拘泥する人生は、人間らしい人生
とは言えず
生物的な人生であると言える。




今、扱っている事件についても
漠然とそんな印象を持つ、輝彦たちであった。


処世術に明け暮れ、人としての喜びを
蔑ろにした結果、不幸を呼んだのだろう。


捜査を進めるに連れ、空虚に思えてくる。



すこし、休もうかと言って

深町は、教習車(笑)の自分のクラウンを
輝彦の待つ、コース脇に停めた。

もとより、他に人もいない。


「貸し切りコースってゼータクぅ」と、由香。

「うん、便利かも、ありがとうございます、深町さん」と
友里恵は、ちゃんと大人の挨拶も出来る子(笑)


それは由香もそうだし、他のみんなもそうだと
思う。


ただ、なんとなく、照れがあって
露悪的に振る舞っているだけ、だ。


少年期は、みんなそうである。


友里恵や由香が、ふつうの顔に戻れるのは
深町や輝彦を親しくしているから
なのだろう。


「遅かったねー」と、友里恵が笑う。
「迎えに来てって言ったのにぃ」とも。


「深町が来てくれたじゃん」と、輝彦もわざと
雑にしゃべる(笑)、すると由香が

「深町さんはぁ、アタシを迎えに来たの」(笑)


当人は、笑って黙っていた。



「うん、捜査の続きしてたんだ」と、輝彦が言うと

どーなったの?と
ふたりして聞くので


経過を話した。


「やっぱり役所ぐるみで、西の森コンビニの
土地を、おじいさんから取り上げたみたいだね。
まあ、行政にしてみれば
元々ただであげた土地だろうけど」


と、輝彦が言う。すると、由香は


「ひどいねそれ。」と、すこし怒り気味。



「それが、オーナーの死の遠因。だけど
直接の原因は、虐められたせいなんじゃないかな」と
輝彦が言う。



「ダンナは何してたの?役所勤めでしょ?」と、友里恵。
口調が怖い(笑)。



「ダンナには会ってないけど、もともと夫婦仲も
良くなかったみたいだから、子供の為に
離婚しなかった、って感じなんじゃない?
だから、妻の悩みにも鈍感」と、輝彦。


「やだな、そんなの」と、由香。

「でも、あるんだよ」と、友里恵。



そういう例は多い。
恋はいつか醒めるものだし、その後
愛し続けられるか、は未知数だ。

お互いの生き方がまず、合ってないと。

お店を始めたい、奥さんと
公務員のダンナ。

公務員、神経が痛む仕事だから
本当は奥さんに家事をしっかりして欲しかった、
なんてところじゃないかな、と
輝彦は思う。


それで、お店を始めたら
赤道の住人グループの虐めの標的になって


奥さんが困窮しても、助けてやらなかったご主人も
冷酷、と表面では思える。


そこに、大学生の男の子が近づいた。
たぶん、それも罠。


心の隙間に入り込まれた、と言う事だろう。



それが、ダンナに知れて
ますます険悪になった夫婦仲。



「なんか、イヤだね」と、由香。

「うん」と、友里恵。


どうして、なんのために?と
ふたりは思う。


そう、普通に暮らしていれば良かったのに。

金銭欲、名誉欲。
そんなもので、人生を狂わせてしまった。



「でも、肝心なところが抜けてるな」深町。



「なんだ、居たのか」(笑)と輝彦。

うるさい、と(笑)深町

「死の理由が何もわかってない」


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「理由って、自殺かどうか?」と、輝彦が聞く。

深町は頷く「なんで、深夜の片野駅に行かなくちゃ
なんなかったのかな」と、言いながら。


「たぶん、彼氏と一緒だったんだろうけど
何かがあって。
それで、彼氏は心を痛めてしまった。
詐病でなければ、よほど衝撃的な事が
あったんだろうね」と、輝彦。


「でも、イジメグループと接点あったんだろ、彼」と
深町。

「うん」と、輝彦。


「それなら、共犯だったかもしれないな」と、深町が言うと


「でも、悪い人っぽくなかったけど」と、由香。


深町は、そうか、と相づちし
「割とそういう勘って、当たるんだよな」と
輝彦の同意を求めた。

輝彦も頷き
「深夜の駅にひとりで行くのも
不思議だけど、ふたりで行く理由もないね。
なぜか、ホームに行って。
そこから転落して、列車には当たらないで
運悪く死んだ、と。
なぜか彼氏は、自分の家に戻っていて
呆然自失だった。
詐病でなければね。」



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